望む物
闇が目の前まで迫っている。
もうダメだと思った。
ギュッと目を瞑る。
『カラーん』
鐘の音が聞こえる。
王都の礼拝堂の大きな鐘の音。
いつも決まった時間に鳴らされる馴染みある鐘の音。
聖なる力を広く響いて伝える音だ。
闇の力が弱まったのを感じた。
『ティアっ!聞こえる?』
『ティア無事か!?』
どこからか声がする。
この声は
「フレデリックとロバート!?」
『聞こえたんだ!!』
『僕もいるよっ!』
「ルカもいるんだね!それよりどうして!?」
『精霊王達の力を借りてこちらでも対抗出来る力を貯めてたんだ。』
『やっと力が溜まったからそちらに送るよ。』
『これしか力になれなくて、ごめん。ティア使って!』
申し訳なさそうな3人の声。
気持ちが凄く嬉しい。
それに淀んだ空気が澄んだ気がした。
「十分だよ!ありがとう!!」
何だか力も湧いてくる。
「どうしたらこの力使えるかな?さっき力が使えなかったの。せっかく貰ったのに上手く使えるか心配で……」
『きっとそれはエウレカの禁忌魔法のせいだよ。我が家に伝わる禁忌魔法が魔法の無効化。最近、禁書が盗まれてる事が分かったんだ!腕に呪文が出てたら発動してる。』
ルカの言葉でエウレカの腕を見ると、確かに腕に文字が浮かんでいた。
「出てる!」
『ーーーーーーー―』
ルカが何か呪文を唱えるとエウレカの腕の文字がスっと消える。
「消えたっ!」
しかし、すぐに浮かびあがる。
「あっまた出た!」
『ーーーーーーーーーーーー』
呪文を唱えてる間は文字が消える。
『今だティア!ルカが唱えてる内に!』
『こちら側から繋がれる時間は限られてるっ!急いでっ!!』
ルカが頑張ってくれてる。
フレデリックとロバートに背中を押される様に貰った力に願いを込める。
「お願い!!皆を助けて!!!!」
ピカッ
辺りを包む暖かい光。
ドサっ
エウレカがその場に倒れる。
オリジンも苦しそうに肩で息をして、その場に膝を着いていた。
ティアも強大な力を使ったからかフラッとする。
と、ユグが傍にいて支えてくれた。
そのままユグに促させる様に支えられながらオリジンとエウレカと距離を取る。
オリジンは忌々しそうにそれを睨む。
「何故だ!セシリアっ!!」
「私はティアです。あなたのセシリアさんじゃありません。」
「違うっ!!!」
どうしたって聞き入れない。
いや、聞き入れられない様だった。
「……前の精霊王よ。愛する者を求める気持ちは分かる。でも苦しめるのは違う。」
ユグがティアを腕に抱きながらオリジンに言う。
「俺様もティアを離せない。出来るなら精霊になって欲しいし、ずっと一緒にいたい。」
優しく見つめる。
熱烈に望んでくれる。でもユグはいつでも無理強いはしない。
「それが叶わないなら、俺様もティアと一緒に死ぬ。」
それが本心なのは誰にも伝わっていた。
「……王が、死ぬなどと……」
オリジンが言いかけたが
「お前は王を辞めたろう?」
のプルートーの言葉に口を閉ざす。
「愛する者と生きる事も死ぬ事もできず、覚悟がないから狂うのだ。俺様はティアと共にあると決めてる。生きるも死ぬも一緒だ。」
爽やかな笑顔で重い発言をぶちかます。
(あ〜……久しぶりにユグらしさを見たな)
でもそれを嬉しいと思う私も重症だ。
「オリジンさん。私はやっぱり、あなたのセシリアさんじゃないと思います。だって私はユグを1人にしない。生きるも死ぬも一緒がいい。」
ニコリとユグに微笑むと思い切り抱きしめられた。
「……俺が……間違っていた……?」
呆然とするオリジン。
「間違っていたならやり直せばいい。」
「何か生きる意味を一緒に探しましょう。」
「……俺が……間違って……」
プルートーとレムが声を掛けるがオリジンには届いていない。
「……っ俺がっセシリアに……言えばよかった……っ?」
「オリジン!」
「俺がっ……間違ってったっ」
「オリジンっ!!」
「……っ俺が、まちがえてっ!」
呼ぶ声が聞こえないのか同じ事を繰り返す。
そして身体から闇と目から黒い涙を流している。
異様な光景だった。
誰も近付く事が出来ないでいる。
ギョロリ
オリジンの虚ろな目がティアを見た。
異様さにアテナが皆に協力して作って結界を貼りオリジンを捕える。
が、オリジンはそれから逃れようと闇を大量に放出。
圧倒的な勢いの闇に結果が押され今にも破られてしまいそうだった。
評価よろしくお願いします
( *´˘`*)ノ




