闇の声
姿はユグだ。
ただ違うのは髪の色。
ユグは銀髪だが、オリジンは黒髪だった。
ユグを見るとユグも目を見開いている。
レム、プルートー以外の精霊王達、アレクも驚いている様子から、2人以外は知らなかったのだろう。
何かしら伝承があれば王族であるアレクは知ってるハズ。だが、他の精霊王達同様驚いている所を見ると知らなかったのだろうと思われる。
伝わってはいたが途中で途切れたか、そもそも知られてすらいなかったのか。
「どういう事だ……」
唖然とする中、言葉を発したのはユグだった。
「俺はお前で、お前は俺だ。」
忌々しそうにオリジンが言う。
「双子?」
アレクが呟く。
それを否定したのはレムだった。
「双子と言うより兄弟が近いですね。オリジンが精霊王を辞めたので、ユグが産まれたのです。」
辞めた……?
なぜ?
え?
辞めれるモノなの……?
そもそもどうやって?
皆の顔に出ていたのかもしれない
「オリジンは人間の聖なる者と結ばれ、人になったのだ。」
プルートーが何でもないかの様に言う。
瞬間、アレクが驚き声を上げる。
「人になれるのか!?」
ティア自身も声を出さなかっただけで、精霊が人になれる事に驚いていた。
きっと精霊王達も同様だろう。
「正確には人に近い何かです。人間にはなれないので、精霊でもなく人間でもない何か。」
レムの言葉に息を飲む。
人間でもなく。
精霊でもない。
「それでもそれを望んで、そうなったのではなかったのですか?」
レムがオリジンに問いかける。
息を飲む皆の目がオリジンにが集まった。
「そう、望んだ……セシリアが望んだから。なのにセシリアがいない!思い出だけで生きられると思ったっ……でも!長い間1人は淋しいっ!!」
悲痛の叫びだった。
「長い間って……」
「俺とイフリートが産まれた650年前には精霊王はユグ様でした。」
「えっ?ポセイドンとイフリートって双子なの?」
「……辞めて下さい。産まれた日が同じなだけです。人間の王族でも流しますよ?」
何だかポセイドンとアレクが仲良くなってる。
「人間世界での時間で言えば2800年前だ。」
プルートーの発言に空気が変わる。
そんなに前から1人きり?
淋しさに可笑しくなるのもわかる気がする。
そして気付いてはいけない嫌な予感がした。
「お前達の将来の姿かもしれないな……」
ぽつり
「プルートーっ!ユグ様とティア様はそうならない!!」
プルートーの言葉に珍しくレムが激昂する。
気付きたくなった。
そう
私が人間として生きれば、ユグをどうしても置いて死ぬ事になる。
そう
オリジンはユグの将来の姿かもしれないのだ。
『ありえる未来』
オリジンをチラリと見る。
目が合うとニヤリと笑うオリジン。
背筋がゾクリとした。
「セシリア……見つけた……」
長い孤独で気が可笑しくなっているのかティアに手を伸ばす。
「私はティアです。ティア.ヴェイン。あなたのセシリアさんではありません。」
首を振る。
「違う。セシリアだ。」
「同じ聖なる力を持ってるだけです。それを勘違いしてるだけだと思いますよ?」
優しく諭す様に。
刺激しない様に言う。
「そうじゃない。君はセシリアの生まれ変わりだ。だから俺のセシリアだ。」
ティアは驚いた。
周りも驚愕した様だった。
生まれ変わり。
なくもないがティアにはセシリアの記憶はない。
そもそも愛するユグがいる。
「セシリア」
優しい声で呼ぶ。
心が痛む。
「ごめんなさい。私はセシリアさんじゃない。私にはユグがいる。あなたの気持ちに答えられないの……ごめんなさい……」
涙が溢れる。
求められても答えられない。
「……ごめんなさい……」
「そんなの……」
「関係ないっ!!!!」
ぶあァっ
黒霧が再びオリジンが放出される。
それに対抗する様にペンダントを握ると光の風がティアの周りを包む。
しかし、黒霧を払いきれない。
それどころか生き物の様にティアにまとわり付く。
「……っどうして!?」
「オリジンの力が、闇の力が上がってるんです!」
「このままではオリジン自身も闇にのみ込まれるぞっ!」
レムとプルートーが慌てている。
それだけ強力な闇の力なのだろう。
きっと2人はオリジンを心配する気持ちもあるのだろうと思う。
私も知ってる人なら救いたいと思うもの。
チラリとエウレカを見る。
無言でティアにしがみついている。
そこに意思がある様には見えない。
本心が分からないが、少なからず利用されているのは事実だ。
「エウレカ穣、目を覚まして!」
わずかな希望なかけて声を掛ける。
「……」
「エウレカ穣っ!」
しかし、何の反応もない。
ティアがエウレカやオリジンから離れられれば、反撃のしようもある。
精霊王達を見ると闇が広がらない様に抑えながらティアをどう助けるか考えあぐねている様だった。
タイミングが見付けられないのだ。
「エウレカ穣っ!目を覚ましてっっ!!!」
思う様に力を使えないティアはペンダントを握りエウレカを呼ぶ事しか出来ない。
その間にも闇が濃くなる。
オリジンから出る黒霧が濃く深くなっていく。
「もう少しだよ。セシリア。」
生気はないのにギラギラと光る眼にティアはぞわりと恐怖を感じる。
焦りばかり募った。
(お願いっ!力をっ光の力よっ!)
卒業パーティーの時は願ったら放出された力。
ただ願う。
ただ、ただ願う。
(お願いっ!!)
しかし何も起きない。
(なんで!?どうしたら使えるの!!?)
じわり
じわりじわり
闇がティアに近づく。
(もう……ダメなのっ……!?)
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