面会
魔法で出入りを制限された訪問者を拒絶するかの様な頑丈の扉。
ティアはある部屋の前まで来ていた。
エウレカに会う為だ。
ガッシリとした門構えの要塞を思わせる重罪人を収監する監獄。
ヒルフォート牢獄。
本来ならば公爵令嬢であるエウレカは貴族牢に入れらる。エウレカがなぜヒルフォートに収監されているのか。
それは、重罪人だから。
王族を含めた複数人に禁忌魔法を使った罪。
精霊を傷付け苦しめた罪。
そして、世の中を混乱させた罪。
1歩間違えば知らない内に、王都が壊滅していたかもしれない。
それだけエウレカのした事、そして秘める力は脅威なのだ。
他の禁忌魔法を、まだ隠している可能性がある。予測の付かない大きな力を持ってる可能性がある以上、厳重警備である必要がある。
今回の面会もそうだ。
ヒルフォートであるから面会の許可が降りた。
他の監獄であったなら、許可は降りなかったろう。
重い鉄の扉が開かれる。
中は思ったよりも広々していて、鉄格子で覆われた部屋まで距離があり歩いて近付く。
近くに来てようやく、エウレカが中に居る事が確認出来た。
「ヴェイン穣っ!」
鉄格子越しにティアを見付けたエウレカが走り寄る。
「エウレカ.イクレイ!」
勢いに護衛の兵士がティアを守る様にエウレカに注意した。
「……危害を加える気は、ありませんわ。」
卒業パーティでの威勢はどこへいったのか。
随分としおらしい。
鉄格子越しに部屋を見ると、石がむき出しの壁と床にベットと机と椅子1式あるだけ。
綺麗で監獄にある物としたら上等な代物だが、公爵令嬢として過ごして来たエウレカにしたら苦痛以外の何物でもないないだろう。
疲れてる様にも見える。
いくら重罪人としても同じ女性として、同情する気持ちが芽生えるティア。
(……っいけないっ!)
ユグやアレクに策略かもしれないから、弱々しく見えても気を付けろと言われていた。
少しでも優しさや同情すればその気持ちを利用しかねない、と。
疑いたくない気持ちもある。が、2人の言う事ももっともだ。
パシっ
頬を叩きエウレカと対峙する。
「よく……来てくれました……」
「……私に何の用ですか?」
挨拶も無く、核心に触れたティアにビックリしたエウレカ。
失礼と分かっていても、余計な話をすると情に流されるティアへ、周りからのアドバイス通りの行動だった。
「……本当に、ヴェイン穣には悪い事をしたと……思っていますわ……」
そんな意図を知ってか知らずかエウレカは続ける。
「何であんな事をしてしまったのか……始めは羨ましいだけだったんですの……それが、いつの間にか、妬ましく思う気持ちが大きくなって……気付いた時には……もう……」
嘆く様に顔を覆う。
手で顔を覆うエウレカの表情は見えない。
言葉や声からは演技してる風ではなく、本心から言ってる様に聞こえる。
流されそうになる気持ちをぐっと堪え
「謝る為に……呼んだんですか?」
良いも悪いも言わず、ティアはエウレカの意図を探る。
「謝りたかったけれどそれより、忠告をしたくてっ!」
ガバっと上げた顔は真剣そのものだった。
作られた表情や雰囲気ではなく、危機とした物まで感じる。
「忠告……?」
ティアの問にコクリとエウレカは頷く。
「……あの男、オリジンに対してですわ。」
「……オリジン……?何者ですか?」
初めて聞く名前だった。
ゲームにも出て来ていない。
「私も詳しくは分かりませんの。ファンディスクにも名前すら出てきてない人物ですわ。」
ティアはファンディスクが出る前に楓としての生を終えている。
髪の色はフードで見えなかったが、瞳の色が赤かったので何かしらの役割を持った登場人物だろうと思っていた。
「……ファンディスク後にセカンドとか、続きは出てないんですか?」
情が出るから意思の疎通をしてはいけないと散々言われていたのに、思わず聞いてしまった。
他に情報が引き出せるかもと思う気持ちも、もちろんある。
が、好奇心が勝った瞬間だった。
「出てませんわ。人気があったにも拘わらずファンディスクで打ち切りになったのは、運営側の大人の事情でしたの。」
「制作側と会社側が揉めたってヤツですか……?」
「それです!セカンドに力を入れてお金をかけたい制作側と金儲けしたい会社側。結局解決しないまま打ち切り。私はセカンドを待ち望んでましたのに!」
裏事情を嬉々として話すエウレカ。
その姿はゲームに熱中してる普通のファン同士の会話に見える。
普通に会えていれば友達になれていただろう。
ペンダントがキラッと光り、ハッとする。
毒毛を抜かれそうになっていた……
気を引き締め直すティア。
「……話を戻します。オリジンとは何者ですか?」
「分からないのですわ……。ただ……ただ分かるのは……あの男に会ってから私の気持ちはコントロールを失いました……全てあの男の言われるままに行動していた様に思います。」
操られてた?
言葉通りに見えてしまう。
「私が信じられなくてもあの男には近付いてはいけません!それだけは信じて!!」
本心に見える。
切実に、そして真摯に訴える様に見えるエウレカに、疑う気持ちを持ち続ける事は難しかった。
それでも疑わなければいけない。
ただ分かるのは、やっぱり鍵を握るのはフードのあの男。
「行動を共にしていたんですよね?その人は何がしたいのか知ってますか?」
「……目的は分からない……人ではない事くらいしか。」
人ではない。
レムとプルートーの知る人物で確定ならば、人では無い何か。精霊?悪魔?魔族?
考え事をしていたティア。
「……それに……知ってる……こ、と……」
一瞬
目を離した隙にエウレカの雰囲気が変った事に気付かなかった。
「オリジンから盗んだ物がありますの。何かの手掛りになるのではなくて?」
何かを手に鉄格子越しに渡そうと手を伸ばす。
受け取るのはさすがに怖い。
「……何ですか?」
尋ねるが
「実物を見て確認して下さい。」
何とは言わず手を伸ばしたまま待っている。
無言で見つめ合う。
エウレカの表情からは何も読み取れない。
きっと拘束された時に身体検査はされているハズだ。
危ない物なら没収されているはず。
それでも持っていられたとしたら触っても大丈夫なのではないだろうか?
でも、あのエウレカが持っている物だ。
何か特殊な方法で検査の目を免れたかもしれない。
心の中で葛藤するティア。
しかし
ずっと見つめ合っていてもラチがあかない。
エウレカを警戒しながらティアも距離を取って手を伸ばす。
コロっ。
ティアの手に何かが乗る。
「っ!!!?」
次の瞬間エウレカに手を掴まれる。
「な、何してっ!離してっ!!」
ビックリして振り解こうにも凄い力で振り切れない。
エウレカを見るとニヤリと笑う。
「オリジンはあなたを、狙ってる。」
エウレカの目が怪しく光った。
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