話し合い①
王宮の一室。
入って早々にロバート、フレデリック、ルカに謝られた。が、話は終わってからとアレクとユグに席に着くように急かされる。
広間の中央には豪華な重量感のあるテーブルとそれに見合う背もたれの長い椅子。
そこに人間界、精霊界に別れて座った。
人間界側にアレク、ウィルソン侯爵、ルカ、フレデリック、ロバートの順
。
ウィルソン侯爵は、初めて会うがこの国の宰相だ。
この話し合いの内容は国へと報告される。
本来ならば国の王様や大臣が出てきてもおかしくない内容の話し合い。
なのだが、当事者な事とこれから担う者として、アレク、フレデリック、ルカ、ロバートに課せられた課題の様な物だ。
本人達の立っての希望もあって実現した事らしい。
それでも子供達だけでは不備もあろう、と云う事で人間側の保護者的立場でウィルソンがこの場に参加している。
精霊界側はレム、プルートー、イフリート、ポセイドン、アテナ。
ジンの席もあるが本人不在だ。
本人の意思なのか、精霊界側の意図なのか……
そして中央に何故かユグ。
精霊王で1番偉いからと自らそこに椅子を用意させ着席する。
議長でもするのかと思ったが
「なぜ俺様がそんな事をしなければいけないんだ。そいうのはレムがやればいい。」
やれやれ顔のレムを横目にふんぞり返りって言い放った。
ただ偉そうに見える場所に座りたかったみたいだ。
そんなユグに笑ってしまった。
そして、自分自身はどちらに座ったら良いのか悩んでいると、ユグに声をかけられる。
「ティアは俺様の隣だ。」
すぐ隣に椅子を用意させ隣の席をポンポンと叩く。
誘われるままユグと並んで座る。
すると、アレクが徐おもむろに席を立ち従者に椅子移動を指示。
移動した椅子に、優雅な動きで着席した。
もちろんティアの隣である。
「おいっ!ティアの隣に来るんじゃない!」
「あなたは精霊界の代表だろう?僕は人間界の代表だ。中央に居ても可笑しくないだろう。」
「ティア、俺様と替われ。」
「僕は男の隣より、麗しいレディの隣がいい。ティア、隣に居てくれるよね?」
板挟みのティア。
ユグの気持ちを優先させたいが、王族であるアレクを無下にもできないし、推しだったアレクの笑顔にティアは弱い。
どうしたら場が収まるのか悩む。
助け船を出したのはウィルソン。
「話し合いが進みません。精霊王、すみませんが一時。一時で良いので我慢して貰えませんか?」
それに乗ったのがレム。
「ユグ様。人間の言う通りです。早く話を済ませましょう。」
「そうですわ。そして早く終わらせてティーパーティーを致しましょう。」
手をパンっと叩いて名案とばかりに微笑むアテナ。
(このメンバーでティーパーティーしても……)
とティアが思ったのは内緒の話だ。
「さて」
レムの一言で話し合いが始まった。
まずは精霊側と人間側の状況証拠と証言の確認。
記憶が無くなったのは卒業パーティー当日の朝から。
そして戻ったのが、ティアの聖なる力の光を浴びた事により。
題材に上がったのが
『大規模な記憶忘却をどうやって行ったのか。』
『それは誰が、何の為に。』
『エウレカはどこへ行ったのか。』
誰は闇魔法の痕跡からエウレカで間違いないだろうとプルートーが言う。
あの場でも使ったのを見た事からもそれは間違いない。
そして、理由も。
『あんたが嫌いだからよ』
言われた言葉にティアの胸がチクリと痛む。
エウレカに何をした訳ではない。
何故、そんなに嫌われてしまったのか……本人がいない今、確認のしようもない。
「記憶忘却魔法ですが……」
ウィルソンの言葉でルカが渋い顔になる。
「禁忌とされ、闇属性の上位貴族のオズボーン家、イクレイ家で秘密裏に保管されている物。そうですよね?」
ルカにウィルソンが問う。
「……そうです。エウレカ嬢とは従妹同士で、2つの禁忌魔法を各家で一つづつ保管されてる事は知っていました。でもイクレイ家の魔法が記憶忘却だったのは初耳でした。何の禁忌魔法なのかはお互いの家同士も知らないのです。」
「禁忌魔法を使用した場合、どういう処罰が下るのか、もご存知ですか?」
青い顔のルカが言う。
「幽閉……又は、極刑で……死刑……だと、魔法と共に伝えられています。」
本人がいない事が幸いかもしれない。
「行方がわからなくて、エウレカ嬢には良かったかもな。」
急に口を挟んだロバートが言う。
「不謹慎だぞ!」
慌ててその発言を止めるフレデリック。
深く考えていない、素直な言葉だったろう。
フレデリックの言葉に、意味が解らない顔のロバート。
「大規模な記憶忘却の禁忌魔法を使用した者を、聞きようによっては擁護とも取れる発言だな。」
ポセイドンが発した言葉にロバートが、やっと気付く。
「失言でした!」
青ざめるロバートにアレクが声をかける。
「誰もロバートとエウレカが繋つながってるとは思ってないから大丈夫だ。そして精霊の王達を不快にさせたらなら、申し訳ない。」
人によっては誤解するだろう。
人間界にとって精霊界にそう思われるのは本意ではない。
「俺様達は懐が深いから問題ないぞ。」
二ッとユグが笑って答える。
「感謝する。そして、申し訳ない。」
アレクが軽く頭を下げた。
精霊達への被害もあったのだ。ロバートの言葉は精霊界側の前で配慮を欠いた発言だった。
「えっ?何がダメだったの?」
状況の解っていないイフリート。
そんなイフリートを横目にため息を吐き放置プレイを決め込んだポセイドン。
ねぇねぇ、としつこいイフリート。
結局、ポセイドンは一から教える事になる。
何だかんだ、放って置けないポセイドンは優しい。
その姿は母子のそれだ。
二人を残し、話が進む。
大規模な記憶忘却魔法はどうやって使われたのか。
プルートーの証言だとエウレカ自体には、それ程の魔法を使える魔力はなかったと言う。
人にはそれぞれ魔力を貯めれる容量が決まってるとの事。
それを越える量を入れてしまうと人体に影響を及ぼすのだそうだ。
「あの規模の魔法を補助なしで使えるとしたらティアくらいだろうな。」
それ程、ティアは特別なのだと言うプルートーに精霊の王達が頷く。
ユグに至っては何故か得意顔である。
逆にアレクは悔しそう。
二人はティアを挟み火花を散らす。
触れたら長くなりそうなのでティアがウィルソンに聞く。
「イクレイ公爵令嬢が大規模な魔法を使ったのは確か。でも魔力が足りない。ですよね?そうなると、補ったのは……もしかして……」
「……ヴェイン嬢の、察しの通りだと思います。」
言い難そうなウィルソン。
フレデリック、ルカも渋い顔をしていた。
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