ジン散歩
朝陽の気持ち光の中。
ジンは風魔法で浮かびながら空中散歩を楽しんでいる。
せっかく人間界。
久しぶりに来た事もあり、満喫しようと朝から出ていた。
ユグや精霊の王達は別であるが、精霊や妖精は人間界で生まれるか召還されないと来ることが出来ない。
風の精霊王であり、制限がないハズのジン。
だが、人間界と精霊界を好き勝手に行き来する事ができないのだ。
昔、気に入った人間を勝手に精霊界に連れ去り事件を起こした事がある為。
そればかりではないが、ジンは色々と制約がある。
今はティアのお掛けで自身の身のみ行き来は自由。
もちろんジン自身もティアを気に入っているので、何かあったら喜んで力になるつもりだ。
上機嫌にふよふよ漂っていると何やら声が聞こえて来る。
稽古に励む軍人貴族のロバートの姿があった。
(あ~、ティアと知り合いのオス……だっけ~?)
卒業パーティーに居たので何となく顔を覚えていた。
近づいてみる。
突然のジンの来訪にビックリするロバート。
「風の王様!?何かご用ですか?」
「何してるの~?」
「毎朝の稽古です。」
「毎朝するの~?」
「そうです。日々鍛練ですから!」
何となく暑苦しさがイフリートに似てる気がする。
ロバートの属性に気付いて納得した。
火属性特有の熱血的な暑苦しさ。
「もっと力が湧く様に良い物あげる~。」
コロリとロバートの掌に飴を乗せた。
ロバートは促されるまま口に含んで、すぐに吐き出す。
「か、辛い!!口の中が痛い!!!」
それを見てケラケラとジンが笑っている。
「間違えてハバネロの飴あげちゃった~。ごめんね♪」
お口直しにとドリンクを渡す。
それに口を付けて、再びロバートは吹き出した。
「それもハバネロジュースだよ♪」
苦しむロバートを横目に、思う存分大笑いし
「じゃあ、稽古頑張って~。」
ヒラリとその場を後にした。
反応がイフリートに似てて面白い。
また遊びに行こうとジンは思った。
再びふよふよ漂っていると下から呼ぶ声がする。
見てみるとフレデリックだ。
(あいつも見た事ある~。さっきのと一緒にいたオスだ~。)
「何~?なんで僕を呼んだの~?」
「ロバートにイタズラしましたね?人間界では宜しくない行動です。」
「え~?精霊界でも怒られるよ~?」
「ならば尚更いけない事です。」
してはいけないと言われるしたくなるのがジン。
子供と同じである。
でも子供と違うのはジンには知恵がある事。
「解った~。ごめんね?お詫びにいい所連れてく~。来て~。」
フレデリックを連れてふよふよと浮かぶ。
着いた所で一気に落とした。
ザバーン!!!
「「「きゃー!!!」」」
何とフレデリックが放り込まれたのは女子露天風呂。
「はっ!!?」
周りに気付き真っ赤な顔で一目散にその場を離れる。
それを大笑いしながら見ているジン。
もちろんジンの仕業だと見ていた人は解るけど、フレデリックにしてみたらとんでもない赤っ恥だ。
烈火の如くジンに怒っている。
手の届かないジン。
諦めたのか、何かを思い付いたのか、家に急いで帰るフレデリックを見送った。
「もっと遊びたかったけど、いいや~。」
フレデリックの怒った顔が面白かったので良しとした。
木々を抜け、大きな建物が見える。
ジンの嫌いな図書館だ。
図書館と云うより勉強や本が嫌い。
なのでそれに関わる物は全てが嫌なのだ。
そこから本を抱えて出て来る人物。
(あれ~?見た事ある気がする?)
ルカの事はあまり覚えていかなったが、何となく見た気がした。
ので、近付いてみる。
「風の王ですか?」
ジンを見付けてルカが声をかけた。
「そうだよ~。ティアを知ってる~?」
「知ってます。彼女には悪い事を……しました。」
何やら思い詰めた顔。
普通の人ならここで慰めるのだろう。
しかし、居合わせたのは残念ながらジンである。
「何したの~?」
「彼女を忘れてしまいました……でも、決して忘れたかった訳じゃないのです。それでも、彼女を一人にしてしまって……それが心苦しいのです……」
忘れた事の罪悪感は解るがそんな事を言われてもジンはティアではないので解らない。
「そっか~。じゃあこれあげる~。」
ジンが手に持つのは本だ。
ルカは何の本だろうと興味深気に受け取り開いてみる。
ガオオォォォ!!!
「うわっっ!!」
突然、本から竜の様な魔物が飛び出る。
ビックリしたルカが本を投げてしまった。
慌てて魔物を何とかしようとして気が付く。
本から出ている魔物は本物ではなく音が出るリアルな作り物。
ビックリした自身が恥ずかしい。
その様子をジンがケラケラ笑っている。
「何がしたいんですか!」
怒ったルカに
「ティアのお返し~。」
笑いながらその場を後にする。
ジンの意味不明さに唖然とするルカだった。
ふよふよと王宮へ差し掛かった所。
下で揉める声が聞こえる。
ティアとイフリートとポセイドン。
(それと、あれはティアを忘れた人間の王子のオス。)
アレクがティアと話した後、離れて行く。
イフリートもポセイドンも何やらティアに険しい顔で言っている。
何か言われただろうと察してアレクに声をかけた。
「ねぇ、ティアに何か言ったの~?」
突然、上から声をかけられビックリ顔のアレク。
「ティアと少し話をしただけですよ。」
ニッコリ微笑まれる。
ジンは人間の王族は好きじゃない。
嘘臭い笑顔を向けるからだ。
「ふーん?」
このオスもティアを狙ってるってユグが言ってた。
ニッコリ微笑み返し
「僕も話しある~。来て~?」
素直に呼ばれて来るアレク。
指をパチンと鳴らすと突風で吹き飛ばされる。
が、水の球体で体を覆い何事もなかったかの様な表情だ。
さすが、だが……ジンにとったら面白くない。
むぅとむくれ顔のジンにしてやったり顔のアレク。
地上にアレクが足を付ける。
と、同時にアレクの元の地面が失くなり下に落ちて行った。
上から満面の笑みのジン。
下では悔しそうなアレクが居る。
ケガをする程深くはないが、それでも2メートルはあるだろう。
下にはちゃんとケガ防止のクッションの様な綿まで敷き詰められている。
魔法を使えば余裕で出てこられるが、あまりの悔しさにアレクは動けず居た。
大笑いしながらジンはその場を離れる。
ルンルン気分で遊び回り、秘所に成る実を食べたくなった。
本当は入ったらダメって言われてるけど、今日はどうしても食べたい。
こっそり侵入出来たと思ったのに…
まさか、ユグとティアが居てバレてしまった。
(むぅ~。せっかく皆を僕が懲らしめたのに~。)
レムに怒られながら理不尽さにモヤモヤした気持ちで一杯だった。
部屋で拗ねてるとユグがお菓子をくれる。
「ティアからだ。」
ジンは嬉しくなった。
(ティアは僕が懲らしめたの解ってくれたんだ~。)
ルンルンでティアの部屋を訪れるジンだった。
後書き
『ジン散歩』は
『王宮の庭園にて』『目覚め』『混乱』『小さな光』
の時間軸の物語です。
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