模様
まだ日の高い内に話をしようと、アレクに使いを出した。
お昼過ぎなら時間が取れるとの事。
今の時刻はまだお昼にもならず……時間の経過が遅く感じる。
一人そわそわしてしまう。
どう切り出そうか。
どんな風に言ったら傷付けずに解って貰えるだろうか。
部屋の中をウロウロ。
行ったり来たり。
「来ちゃった♪」
どっかの乙女か!と思う台詞と共に現れたのはジン。
「これ~ありがとう~嬉しい♪」
見せたのはユグに預けてあったお菓子。
直接渡そうと思っていたけどユグに押し切られ、ユグからジンに渡して貰うようにお願いした物だ。
妬きもち?
それとも心配?
きっと、イタズラ好きなジンにあまり近付けたくはないのかもしれない。
それもユグの優しさなのだと思う。
「喜んでくれて良かった。また欲しくなったら私の所へ来たらいいよ。木の実ではないけどお菓子をあげる。」
『でも、あの場所へまた行ったら……もうお菓子あげないからね。』と少し脅す様な事を言ってみる。
効いてるのか、効いてないのか……
分かってるのか、分かってないのか……
「もういかな~い。だから~、い~っばい頂戴?」
コテン。と可愛く首を傾げる。
うん。確信犯だな。
「約束だからね?」
その言葉に『うんっ!』子供の様な笑顔で勢い良く頷く。ご褒美に袋に入れたクッキーをあげる。
「ありがとう~お礼~。」
喜んだジンがティアの周りをクルンと回る。
するとサッと場所が変わり、いつの間にか6大精霊王達に初めて会った広間に立っていた。
「「「「「いらっしゃい!!」」」」」
精霊の王達がティアを出迎えてくれる。
促されるまま、ユグの隣の席に腰を下ろす。
「皆が俺様とティアのお祝いをしたいと集まったのだ。」
ユグの言葉に精霊の王達が頷く。
「光の姫。報告を受けました。心より喜び申し上げます。おめでとうございます。」
と良心の父レム。
それに続くプルートー。
「結婚前から痴話喧嘩とは。ティア、手綱はしっかり握れよ?」
「ユグ、ティアおめでとう!!痴話喧嘩って結婚してなくても出来るんだね。」
痴話喧嘩の意味が解ってない発言。
へー知らなかったぁと感心するイフリートに
「精霊の品位が落ちる発言は止せ!皆がバカだと思われたらどうする。」
冷たくいい放つポセイドン。
そしてユグとティアに視線を戻し
「おめでとうございます。ティア様、あの時は失礼な言葉、すみませんでした。これから宜しくお願いします。」
と頭を下げる。
慌てて言葉を発しようとしたティア。
無言で首を振るユグに止められてしまった。そしてサイレントで『しぃ。』とジェスチャー。
その仕草に色気があり、クラリとした。ユグのふとした瞬間の容姿にまだ慣れないと思うティア。
そんな二人を気にせずアテナが続く。
「我が身の様に嬉しいですわ。ほぼ思惑通り進んで満足です。」
!!!!!
今、思惑通りとおっしゃいましたか……?アテナ先生。どこから、どこまでが……策略だっのか……
「おめでとう~ユグ~ティア~僕も嬉しい♪」
最後のジンが言葉をいい終えると……
光と共にティアの右手の甲に模様浮かび上がる。
ビックリ顔のティアに『皆からの祝福』だと、ユグが教えてくれた。
最初の顔合わせの時の皆の言葉。
順に紡ぐ事で、言葉に精霊の力を宿らせ加護を与えてくれる儀式。
聖なる力を持っていると言ってもティアの体は人間のもの。精霊界に長く居ると、良くも悪くも影響を受けるのだと言う。
いつまで居てもいい様に、加護を与えてくれたのだそうだ。
しかし今回は前回と少し違って『祝福』。
加護と何が違うのか。
加護は与える物。
祝福は認めた証。
6大精霊の王達が王妃に認めた印なのだそうだ。
これは原作にないのでティアは驚いた。
ゲーム内では結婚前までで終わっている。なのでファンとしては、その後を見ている様で込み上げる物があった。
ユグの右手の甲にも似た物がある。
ユグのは精霊王の印。スチルなどにも描かれていた為、ユグの模様は見た事があった。
「ペアルックと言う奴か。」
やってみたいと思っていたんだと嬉しそうなユグ。
微笑ましい気持ちになる。
これもペアルックに入るんだ……
そう思ったがユグの笑顔を見て、水を差すのは止めた。
雑談が始まっている。
ここでふと、気になる発言をしていた人を思い出す。
視線をやるとニコリと微笑まれた。
「どこまで思惑だった……の?」
「ユグ様が身を引いて、その淋しさに自身の気持ちをティア様が自覚するまで、ですわ。」
笑顔を崩さず、穏やかにそう言い放つアテナ先生。
全てが掌の上でコロコロ転がされていたとは……
「ですが。何も知らず、ユグ様は本当に身を引いていたんです。そこは誤解なさらないで下さいね。」
その言葉に
「アテナに言われたんだ。ティアの幸せを思い身を引いてオスを見せるべきだと。でも俺様は頃合いを見て人間のオスとティアが喧嘩したら迎えに行こうと思ってた。そしたら俺様の良さが解るからな!」
ドヤ顔である。
ティアには、そんなユグが可愛く見えた。
こんな風に思う日が来るなんて……
転生し、覚醒したばかりの頃からアレクだけを見て来たのに。
世の中とは解らないなぁと改めてティアは思った。
微笑み合う二人に
『『『おめでとう~~~!!!』』』
外から沢山の声が聞こえる。
バルコニーへ出てみると沢山の精霊や妖精達が祝福に集まって来ていた。
空からは花弁と光のシャワーが降り注ぐ。
「綺麗……」
思わず漏れた言葉だった。
そんなティアにユグが言う。
「本番の結婚式はもっと盛大にやるぞ。」
もっともっと感動させてやると意気込んでいる。
そんなユグを、ティアは愛おしさが滲んだとても優しい笑顔で見ていた。
そして皆も笑顔である。
「作戦会議を致しましょう!」
そんな祝福ムードの中、背後から声を掛けたのはアテナ。
アレク対策に会議を提案したのだった。
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