目覚め
アレクを見ると笑顔で返される。
しかし、ティアとアレクを遮る様に
「ダメだ!」と前に出るイフリートとポセイドン。
「ユグにお前を近付けさせるなと言われてる!」
イフリートが言う。それは内緒だろうと項垂れるポセイドン。
そんなイフリートに『どうか。』と高級お菓子の詰め合わせ箱を賄賂として渡す。
その姿はまさしく越後屋と悪代官の様。頬が緩み切ったイフリートにはお菓子以外もう見えていない。
今度はポセイドンに向き直った。アレクは頭を下げる。
「話をするだけでいい。お願いします!!」
下げたまま頭を上げない。
例え精霊の王が相手でも、王族が頭を下げるのは好ましくないハズだ。だから護衛を付けず、一人で来たのか。
「や、止めて下さい。そんな事してもダメです。」
「本当にっ少しでいいんです!」
下げたまま上げない頭。
誠実で良心的なポセイドンには効果覿面こうかてきめんだった。
「す、少しだけですよ……」
基本的にポセイドンはいい人なのだ。
アレクに促されガゼボの椅子に座る。
少し離れた場所のベンチには睨みを利かすポセイドン。そしてお菓子に夢中なイフリートが隣に座っている。
最初に口を開いたのはアレクだった。
「ティア、すまなかった。」
頭を下げるアレク。慌てたティアがお願いして、やっと頭を上げてくれる。
「辛い思いをさせてしまった。ティアの魔法が発動するまで、全てを忘れていたなんて……」
「エウレカの魔法は強力な物だったのだし、しょうがなかったと思いますよ。」
項垂れるアレクにティアが声を掛ける。
「それでも!……精霊王は忘れなかったでは、ないか。」
「そ、それは……」
慰める言葉も見当たらない。
「精霊と人間を一緒にするな。精霊王はさらに特別な存在。あんな人間の魔法など効くハズないだろう。」
何を当たり前の事を、とポセイドン。
「そうです!精霊達は色々と規格外なんです。だから、アレク様は気にしないで下さい。」
ポセイドンはフォローしたつもりなど毛頭なかったと思うが結果、救われる形になった。
規格外の言葉を良い方向へ理解したのだろう。ポセイドンが納得顔で頷いている。
それをティアは見て見ぬ振りをした。
「……そうか……そうだな。」
腑に落ちない感はあるものの、アレクも納得してくれた様だ。
「そうだ!フレデリックとロバート、オズボーン公爵子息もティアに謝りたいって言っていたぞ。オズボーン公爵子息も知り合いだったのだな。知った時には驚いた。」
顔が広かったのだなとアレクが苦笑いする。
「ティアの事は知ってるつもりでいた……」
人嫌いのルカと交流があった事に驚いたのだろう。
王族の次に高い地位の公爵家でありながら孤高。お近づきに成りたい者は山ほど居ても、ルカ自身が他の者を寄せ付けない。そんなルカと仲良かったら、そりゃ驚くよね。
攻略対象同士だし、言う必要ないかな?って思ってたけど……
悪い事をした訳ではないが、何となく言っていなかった事に罪悪感を覚える。
「探していた本を拾って貰ったのがきっかけで、仲良くして頂きました。」
ルカとの出会いと経緯を簡単に説明する。そして
「皆に会えるのが今から楽しみです。」
そうアレクに伝えると一瞬ニコリと笑った後、真顔になった。
「ねぇティア。君を愛してる事を思い出した今。確認したい事があるんだ。」
「……確認したい事?」
アレクの言葉に思い当たる事が一つだけあった。
「ユグ王とは、本当に結婚するの?」
やっぱり。
「あの場の冗談とかでは……ない?」
その言葉にポセイドンが『ユグ様を嘘つき呼ばわりか!』と激昂しそうになったので『確認がしたいだけなんだと思う』と落ち着かせる。
真面目過ぎて融通の利かないポセイドンに、話が進まないので少し口を挟まない様にお願いした。少し……しょんぼりしてる様に見える。ので、後で少し優しくしようとティアは思った。
「僕がティアを忘れてしまったから?それに、いつ出会っていたの?」
「……ユグとはアレク様や皆に会って……その……記憶を失くされてる事を知って落ち込んでる所を慰めて貰いました……」
出会いとしてはとても言い辛い。
今回の記憶喪失が切っ掛けになったのだから。
「嫁に……とは言って貰っています……でも……まだ、そうと答えた訳では……ないです。」
その言葉に嬉しそうな顔をしたアレク。
それと対象に顔をしかめたのはポセイドンとお菓子に夢中になっていたハズのイフリートまで食べるのを止めて凝視している。
ザっ!!
急にアレクが片膝を突いた。ティアに手を伸ばしながら
「改めて乞う。僕、アレク.フェローの全てを掛けて守ると誓う。ティア.ヴェイン嬢。僕の伴侶となって欲しい。もう何があっても忘れない。心から愛している!ティア!!」
だから、どうか!と真っ直ぐにティアを見つめる。
待っていたハズの言葉。
失って悲しかった気持ち。
記憶が、心が戻って嬉しい
ハズなのに……
苦しい。
「……少し……考えさせて下さい……」
それを言うだけで精一杯だった。
「うん。考えてくれると嬉しい。」
お茶を楽しんで……とアレクはその場を後にする。
ポセイドンとイフリートが怒っていた。
『何故すぐに断らない!』
『ユグ程いいオスはいないのに!』
『あんなにティアの為に動いて心を砕くオスはいない!』
少し一緒にいただけで、それはティアにも痛い程解ってる。
だから余計に嬉しいハズのアレクの言葉に
『うん。』と、言えなかった。
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