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王宮の庭園にて

ティアは精霊界に戻るつもりだった。

が、アレクに引き留められる。


救世主の『聖なる力の姫』として丁重に扱われ王宮の客間に滞在する事になってしまった。始めは辞退したが、王族として面目が立たないと言われては振り払う事も出来ない。


ティアだけのつもりでいた王族側。


そんな状態でティアを置いて帰れないと、ユグを筆頭に精霊王達まで言い出した。


仮にも精霊王達。邪険に出来る訳もなく王宮に留まる事を歓迎した。


話し合いは2日後に決まったと連絡を貰う。

それまでは禁止区域以外は自由にしてくれて構わないとの事。



王宮には有名な庭園がある。


二年に一度だけ一般に御披露目される庭園。人気がありすぎて抽選を行う程だ。その抽選にも早くに並ばなければ番号札すら貰う事が出来ない。


ティアは一度アレクに連れて来て貰った事がある。


その時に感動して、もう一度見たいと思っていた。

せっかくなので庭園へ出てみることにする。


ユグは精霊界での仕事がある為レムと共に一旦戻る事に。離れたがらないユグをレムが引き摺る様に帰って行った。


なので付き添っているのはイフリートとポセイドン。


プルートーとアテナは後始末や調べる事があるからと朝早くに出かけ、問題児のジンは珍しい人間界を『見てくる~!』と言ったまま消息不明である。


こんな事もあろうかと、レムが位置確認とイタズラをし過ぎない様に制約魔法を掛けてあると言っていた。


さすがレムである。




色取り取りな花々が咲き誇り木々も綺麗に切り揃えられている。

さすが王宮。庭師の魔法なのか、一年中を通して花が咲き乱れているのだ。


花のアーチを潜るとぐるり花に囲まれたガゼボがある。


前にアレクとお茶をした場所。


ここの雰囲気が気に入り、再び訪れたいと思っていた場所だ。



「美しい場所ですね。お茶にでもしますか?」


察しの良いポセイドンがティアの気持ちを汲み取って行動してくれる。


『お茶』と聞いてお茶請けの『お菓子』を連想させたのだろう。イフリートも凄い勢いで同意する。


呆れ顔になりながらポセイドンはウンディーネを召還し、お茶支度を命じた。ウンディーネだけでは大変だろうから、とイフリートにお願いして補佐精霊のサラマンダーを呼び出して貰う。


ティアがただ会いたかっただけであるが……


サラマンダーはさすがイフリートの補佐精霊。


燃える髪が印象的な雰囲気はガキ大将な感じで、わんぱくで元気いっぱいである。



お手伝いとして呼んで貰ったが、もしかして余計な事をしてしまっただろうか。


そんな事を思い始めていたが、ウンディーネの方が一枚上手だった。母親が子供を誉めるが如く。サラマンダーは上機嫌でせっせとお手伝いしている。


後でこっそり『オスの扱い方をアテナ様に教えて貰いました。』と言っていた。


さすがアテナ先生。


聞いて実践出来るウンディーネもきっと筋が良い。

将来はオスを尻に敷く素敵なレディになる事だろう。



イフリートもいるのでお菓子多めに準備。


ウンディーネとサラマンダーは精霊界で他に用事がある様子。なので、別にお菓子を持たせる。嬉しそうにお菓子を握りしめて精霊界へと仲良く帰って行った。


見送ると即、席に着きお菓子に手を伸ばすイフリート。


「まずはお茶から!」


ティアがそれを止めると怒られた大型犬さながら、クゥーンと項垂れた耳と尻尾が見える様だった。



お茶を出し『どうぞ召し上がれ。』と進めると今度は嬉しさが爆発した破格の笑顔で食べ始める。


それを横目で呆れながら見ているポセイドン。


ティアは卒業パーティー前から苦労人のポセイドンを労りたいと思っていたので、良い機会だと思った。


「ポセイドン色々ありがとう。何か困ってる事とか力になれる事はない?」

「当たり前の事しかしてませんから。」


そうだった!遠慮しいで謙虚なポセイドン。

(聞いたらそう答えるよね!)と自身の浅慮さに気付く。


「私がしてあげたいの!何でもいいから!」

少し強く強制するみたいになってしまった。


すると暫く考えて

「今はないです。その内また考えて置きますね。」

ありがとうございます、と笑顔で返されてしまった。


何て思慮深く欲のない精霊の王だろうか。


そもそも精霊とはそう云う物?

レムとポセイドンを除く、他の精霊王達が規格外なのかもしれない。


今度はレムも労らなければ……レムとポセイドンは精霊王達の良心だもの。

両親(・・)だったらお父さんはレムでお母さんはポセイドンかな?





そんな事を一人で考えていると

人影が現れる。



人の気配にイフリートとポセイドンが反応。


顔を出したのはアレクだった。


一応、知っている顔。だけどパーティーでしか面識のないイフリートもポセイドンも王族と言えど警戒している。


護衛も付けず一人きりだ。



「害をなす気はない。そんなに警戒しないでくれ精霊王達。」


硬い顔二人にアレクが言う。

たまたま通りかかったのか?それとも用事でも?



「何か用なのか?」

警戒したままポセイドンが問いかける。




「少しティア(・・・)と二人で話がしたいんだ。」

アレクの言葉にティアが驚く。



名前を呼んだのだ。


記憶を失ってから呼ばれた事がない名前を。


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