卒業パーティ①
一瞬でパーティー会場入り口に着く。
他の精霊王達はすでに会場のあちこちに散らばっているハズだ。
突然現れたティア達にビックリしていた門番達だったが身分を確認後、納得して中に入れてくれた。
会場に足を踏み入れる。
さすがプロセンス学園の卒業パーティー。絢爛豪華な会場に装飾品。食べ物、飲み物もインテリアの様にズラリと並んでいる。
ゲーム画面で見た会場だったが、画面越しより直で見る方が迫力があった。
ふと、目に入る物体。
会場の一角に布がされた大きな物が置いてあった。記念品だろうか。それとも石像か何かか。
パーティーにそんな物の明記もシーンも無かったと思う、が現実とゲームは違う。
ティアが知らないだけでゲームの進行上、関係ないので出てきてない物かもしれない。
パーティーが進行されれば御披露目される事だろう。
そんな豪華さとは裏腹に、ティアは敵の本拠地へ乗り込んだ気分だ。
これから、何かが起こるのだから。
ユグにエスコートされ会場を進む。
目の前にフレデリックとロバート。
そしてアレクにエスコートされたエウレカがいる。
エウレカと目が合う。
ティアを見て、そしてユグを見て驚いた顔をする。
ユグを知ってる?
精霊王だとしても会った事のある人しか、ユグの顔は知らないハズだ。
人間界を覗き見するのが好きなユグ。
行かなくても簡単に見る事が出来るのであまり精霊界から出た事がない。決してインドアではないが、必要がないのだ。
なので会った事のある人間は稀。今の王でさえ会った事があるかないか。
そもそも一人であろうティアがエスコートされてる事に驚いたのだとしたら、二人で入って来た時に驚くハズ。ユグの顔を見て驚くのは不自然。
それならば。何故、一介の貴族令嬢が顔を知ってるのか……?
何かしらで知った?
それとも理由がある?
エウレカ側の企みがある事を知ってる分、些細なことも気になってしまう。
考え事をしてると視線に気付く。
アレクと目が合う。そして横にいたフレデリックとロバートもティアを見ている。
意図のある視線に(記憶が戻った?)と一瞬思ったが、そうではないらしい。
そう云う意味での熱を感じないからだ。
記憶を失ってからの出会い方が印象的だったから覚えていたのかもしれない。まぁ、そもそも聖なる姫だし。印象的ではあるよね……
ティアは一人納得する。
ユグとティアにアレク達が近付く。
「やぁ、ヴェイン嬢。そちらはどこのお方かな?初めてお会いすると思うのだけど。」
アレクが聞く。ティアが答えようとするとユグが
「ある国の王をしてる。ティアの伴侶になる予定の者だ。」
ティアの肩を抱き寄せ挑発する様な感じで言う。
記憶の無いアレクに言っても仕方ないのに……
若干ドヤ顔のユグ。
発言にビックリしたが、子供みたいなその姿にティアは内心笑ってしまった。
しかし、『ある国の王』に反応したのだろう。アレクだけじゃなくフレデリックとロバートも驚いた顔をして固まっている。
「……伴侶……?」
言葉に反応したのはエウレカだった。
表情を落とした顔は、何とも云えない不気味さを漂わせている。
数日前の(人間界では数時間前だけど)エウレカの勝ち誇った顔が脳裏に蘇えった。
アレクとダメになったのに、すぐに次を作ったと驚かれたのか。
それとも皇太子殿下の次は王様か、とでも思われたか……
「どこの国の王なのですか?」
アレクの言葉にハッとする。気付けばフレデリックとロバートも明るい笑顔を浮かべて興味津々だ。
「さもない、ここからは遠い国ですよ。」
とアレクに返す。
そして、記憶のないアレクに
「結婚式には招待します。」
と……今度は本気度100%のドヤ顔で言うユグ。
その言葉に微妙な顔の三人。
突然の招待宣言に引いた……?
と思いきや、何となくだけど反応が違う気がする。若干だけど、顔が強張った様に見えた。目が笑ってない様な……
少しづつでも思い出してたりするかも?淡い期待を抱いた。そんな訳ないと思いつつ。
チラリと見ると何故か張り合っている2人。
「ほぉ。……そうなんですか。どんな式なのか気になりますね。」
「とても盛大にやるつもりです。」
「……我が国も財力には自信があるんです。どこまで盛大なのか、是非この目で見たい物ですね。」
「この世の物と思えないくらい盛大ですよ。」
「へぇ……それは凄そうだ。」
王と王太子。なにか対抗意識が湧くものがあるのか。
でもそこは、さすが王族。
周囲の人達が、見てない素振りで一部始終を気にする中、笑顔で雑談するユグとアレク。
腹の中が見えない素晴らしい笑顔です。
そんな2人に気を取られ、エウレカの瞳が怪しく光った事に気付かなかった。
次の瞬間、魔法陣が浮かび上がる。
見た事もない複雑な物だ。何事かと周りが騒ぎ、逃げようとする者もいる。
仕掛けて来た!!
身構えるティアだが、魔法はユグへと放たれる。
とても強い魔法だ。効果は解らないが凄まじいパワーを感じる。いくら精霊王だとしてもまともに喰らったら少なからず影響はあるだろう。
「ユグっ!!」
心配して叫んだティア。
が、ユグは自身の魔法でそれを掻き消した。
「忘却魔法なぞ俺様には効かないぞ。」
やっぱり、ユグを狙って来た……
残念だったなと得意気なユグ。
余裕のある言葉を聞いて安堵したが、やっぱり攻略対象達の記憶喪失はエウレカの仕業だったのだろうと理解する。
しかし、使用者が解っても解き方はまでは解らない。エウレカなら解く事が出来るかも?そう思って目を向ける。
鬼の形相のエウレカがいた。
目が血走り尋常じゃない。
何をしでかすか解らない感じだ。
巻き込んではいけないと周囲を確認する。
他の精霊王達が誘導して、生徒達を外へと出してくれていた。あちらは任せても大丈夫そうだ。
そう思ったティアだが、ふと流れに乗らず立ち止まってる人影に気付く。
ルカだ。
ルカとエウレカは従姉弟同士。
何かしら思う所があって残ったのかもしれない。
心配なのか、止める為なのか。
逃げて欲しいが覚悟した目をした人を説得している時間は無い。
その視線の先にはエウレカ。
本人はもう周りの見えていない。
ユグだけを見据えている。
何事が起きたのか理解も追い付かないまま、アレクとフレデリック、ロバートが止めに入ろうとする。
が、次の魔法が放たれた。
エウレカによって。
場が一気に凍り付く。
いや、凍り付くは正しくない。
冷たくもないし水魔法でもないから。
体が硬直した様に動かない。
指1本動かせないのだ。
その場にいるティアももちろんアレク、ロバート、フレデリック、ルカ。
ユグまでも止まっている。
それを見たエウレカは恍惚状態で言う。
「やっと、ユグ様を手に入れられる。」
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