2-68:交わらなかった道の手記
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湿った空気、壁に手をつけばざらっとした濡れた細かい砂がつくような、そんなじめじめした道だった。本棚の裏側にできた隙間は非常用の脱出口なのか、それとも何かの意図があって作られたのか。やや体を斜めらせながら進み続ければ、ラングは途中でツカサを止め、ランタンを持った腕を向こうに差し向けた。そうっと覗き込めばラングの向こうに淡い光が見える。ゆら、ゆら、と揺らして光の反射を確認し、ヒュー、と口笛を吹いて音の広がりを聞いていた。そういう手法もあるのか。
『反応するものはないな。この先、多少広そうだ』
わかりやすく頷けばラングはその気配でわかるらしい。ゆっくりと進み、開けた場所に出てツカサを顎で呼んだ。
『わぁ……、想像以上に広いね』
出た場所は、この世界にきた時と同じ不思議な空間だった。唐草のような紋様の繋がり、淡い緑の光の波が下へ、下へと向かっている。足場は隙間を通ってきた道と違い、白く淡く輝いていて、つるりと滑りそうな見た目だが、しゃり、と音を立てて靴底が受け止められた。踏ん張ろうと思えばできるだろう。螺旋を描くように下っていく階段、中央は吹き抜けだが覗いても下は見えない。淡く輝いているせいではない、この階段が緩やかに曲がっているせいだ。
『ここ、もしかして聖域? 土地神、神獣も何もいないけど、北の青いところもいなかったしね』
『階段は上下、光の波を追って下に行ってみようと思うがいいか?』
『もちろん』
淡い緑の光の中、ラングのくすんだ緑のマントとツカサの灰色のマントが丸い円を残しながら下っていく。手すりなどもないが壁に手をつけばこちらは先ほどとは違いサラサラで触り心地がよく、幅自体も二メートルほどあるので座って休むのも可能だ。【鑑定眼】を使ってみるが特に何も出てこない。ラングはゆっくりと先を行き、慌てた様子もなかった。
『【鑑定眼】でも特に何も出ない。不思議だね』
『あぁ』
『いったいなんなんだろう。結局、北側のあの洞窟だって意味がわからないまま、なんとなく、聖域の可能性で見てるけどさ。このところなんとなくって多いな、大虎さんが纏ってたのも聖域みたいなものだよね』
『そうだな』
端的な返事に会話をしたいツカサは少し不貞腐れた。その気配に足を止め、ラングが振り返った。
『言っておくが、私に聞いたところで答えはないぞ』
『わかってるよ、ただ、おしゃべりしたいじゃん』
『好きにしろ』
はぁ、とわかりやすい溜息をついてラングが再び下りていく。ここが聖域なのかな、何かヒントないかな、と喋り続けるツカサに、ラングは時折、そうだな、行けばわかる、と返した。
それなりに長く下りてきた。懐中時計を見ればもう一時間は経っている。底が見えない、どこから下りてきたのか不安になってくる頃合いだ。ツカサは上を見上げ、ラングを見遣り、尋ねた。
『ラング、戻る?』
『戻らない。あの隙間、見渡す限りあそこだけだ』
それなら、上り続ければいつか戻れるか。休憩を挟みながら先を目指せば、む、とラングが足を止めた。どうしたのかと先を覗き込めば、おかしい、少し先に光の波がない。だが底ではなさそうだ。ラングがトーチと言い、ツカサは明かりをその先に向けた。道はある。ただ、淡い光がないだけだ。ギリギリまで下りてきて暫し佇む。
『……進む?』
『ツカサの魔法がどの程度安全なのかがわかれば、だな』
『オッケー、試そう』
ツカサはいくつかの手段で安全を確認した。
トーチを床につけ、それが消えないこと。火魔法で壁を少し焼いてみて、焦げないこと。物理を通さない魔法障壁、魔力の消費量は上がるが魔法攻撃を防ぐものを重ね、いくつかを試した。最後に、出し損ねている不要素材を一つ置いてみた。特に変化はない。【鑑定眼】にも何も映らず、こちらも変化がなかった。
『大丈夫そう。魔法障壁はつけたままでいくけど、危険なし。ただ光が途切れてるだけみたい』
トーチで照らせば【黒のダンジョン】とは違い、きちんと影が映る。おかしな影響もなさそうだ。
『こういった不可思議な事象で頼りきりで悪いが、頼むぞ』
『任せてよ』
頼られることは嬉しい。ラングがゆっくりと一歩を踏み出し、ランタンとトーチの明かりで再び進む。
途中、壁が崩れていた。このせいで光が途切れたのだろうか。また一時間程度下りていけば階段が終わり、底に着いた。教室程度の広さ、天井は高く、奥に大きなアーチの扉があり、お互いに分かれて横に立つ。ラングが頷いたので頷き返し、魔法を構えた。ラングは双剣の鞘、その先端、こじりで扉をゴツゴツと叩いた。合図を受けてトーチを消す。何か出てくるか、動くか。動きも気配もない。
次に二人で扉を押した。石造りで分厚い。崩れることも懸念したがそのまま重い音を立てて開いた。二人通れるほどの隙間が開けば、また顔を見合わせてトーチを放り込んでから、その先へ進んだ。
大広間だ。何かを奉じていたような、そんな場所。本来ならここまで緑の波が来ていて、ツカサが最初にセルクスといた場所のように全体が淡く輝いていたのだろう。ここはそれが途切れているので暗く、輝きを失った紋様がトーチの反射で静かに波打っている。トーチを増やし、ぐるりと首を巡らせるように置いた。周囲を見渡せばラングはランタンで台座のような場所を覗き込んで調べている。いつから遺跡などの調査や書物を読んでいたのかは知らないが、ラングはこういう探索が嫌いではない気がする。
天井には何か綺麗な絵が描いてあるように思えたが、先ほどの天井画とは種類が違うように思えた。【鑑定眼】で見てみれば読めない文字が綴られている。あれは。
『ねぇ、ラング、あれさ』
『何かある』
え、と振り返り合流した。ラングの手にはまた手記があった。ただ、上で見たものよりも古く感じた。光を失った洞窟の湿気のせいで劣化していると言われ、部屋にあったものは、一応机の中にあるだけ守られていたのだと知った。【鑑定眼】で視れば【劣化したーーーの手記】と一部にノイズがあり、読み切れなかった。持ち上げたラングの手の中でかさ、と端が零れてしまうほどの劣化だ。どこかに置いて広げた方が良いだろう。ツカサとラングは祭壇前で風魔法を使い、埃を飛ばし、毛皮を敷いて座り、挟んだだけの紙を一枚一枚広げ始めた。
これはある青年の手記だった。筆跡は上で見た思わせぶりな文字と同じで、時系列ごとに並べ直し、ツカサはラングを見た。
『読む?』
『あぁ、そうだな、頼む』
頷き、トーチで明かりを確保して一ページ目を手に取る。ツカサは息を吸って読み始めた。
――これを書くのは、俺が俺でいるためだ。
いろいろあったけど、ここはいい場所で、隣人をちゃんと人として扱う、そんな当然で、簡単なことを、してる。
そうするだけでこちらも人として扱われる。
ダチと呼べる奴らもできて、やり直せてると思う。
俺はマンガ派で、小説をあんま読まなかったから、こうやって文字を書くのは苦手だ。
大学の論文も得意じゃなくて、先輩からもらって、ちょっと手直ししてって感じで提出してた。
――そもそも、なんで俺はここにいんだ?
目を覚ました場所がよかったのか、いい奴らに助けられたと思う。
ほんの少し前、俺は確かに死んだはずだったんだけどな。
いや、そんな話はいいんだ。今、ここにいるんだし。
あれが夢だったのかも。
――この手記を手にしてるってことは、上の、ポソミタキの書斎から謎を解いてここに来たってことだろ。あれ、小麦の方を選んでたら大変なことになってたぜ。ここに下りてくる階段の外側に放り出されて、落ちていくんだってさ。
怒ってるか? 悪い悪い。そうしないといけない理由があった。解いてくれてありがとな。
謎を作るのもガラじゃなくて通じるか不安だったけど、教えてもらったとおりに解けるように作ったつもりだ。ちゃんと順序を守りさえすれば。
『引っ張らなかったじゃん』
『何も言っていない』
『目で言ってるんだよ! 続き読むよ!』
『頼む』
――ポソミタキ、俺のダチだった。行く当てのない俺を「来いよ」と地元に誘ってくれるようないい奴で、善人だった。【女神戦争】が終わって、良くも悪くも宗教ってのがひとつになって、首都で集まることが増えたから、ドルワフロとの交易が始まって。ファンファルースの街はトロッコを得て、急に栄え始めた。
いや、いいことだったさ、俺は鉄があればいろいろできるのを知ってたし、技術者がいるなら便利にするための工夫も知ってた。滑車のついたワイヤー、あるだろ? あれも提案して、面白いってドルワフロの奴が作ってくれて、実装されたんだ。あいつら本当、モノ作りが速い。
ここから、少しだけ文字が迷いを見せていたのでツカサも言い淀んだ。その先に書かれていることを声に出すには少しだけ勇気も必要だった。ラングは息を吸うだけで吐かないツカサの肩を掴んだ。
『どうした』
『ちょっと、書かれてることに驚いて、大丈夫、続けるよ』
――そんな順調だった毎日が壊れた。
ドルワフロと首都との交易路、トロッコの洞窟にバケモノが棲み付いたらしい。俺がトロッコを扱う時は何も出ないのに、他の奴がトロッコを扱うと、空のトロッコが向こうに着くらしい。ファンファルースからは七人が消えて、ドルワフロからも二人消えて、首都からも四人消えた。トロッコの終点には必ず人がいるから徒歩だったら必ず見つけられる。調査もしたけど、誰かが掘った横穴も、そもそも人も見つからなくて、送ったはずの野菜とか、送られたはずの鉄製品とか、届けられるはずだった薬とかが散乱しているだけで、誰も、何も危険なものは見つからなかった。それでも何かがあるのはわかった。
交易路は当然、封鎖された。物のやり取りは昔通り悪路を馬車で行き、滑落の危険性を抱え込む方式に戻った。ワイヤーはメンテナンスがされなくなって、ただ邪魔になっただけだった。
――生活は一気に苦しくなった。山間にある段々に重なった家々、小さな畑。【女神戦争】のあと、十年で人口が増えていたから、食料が足りない。ドルワフロが掘って通した交易路は、あの当時、いつの間にかファンファルースの街の生命線になってたんだ。事情があるっていうのに、【女神様の宗教】は献金を許してはくれなかった。終わって十年、まだ恐怖も濃くて、誰も反発できなかった。やめようと言えたのは俺だけだった。ポソミタキですら、苦笑を浮かべて首を横に振った。俺はどうすればよかったんだ。
――ポソミタキは責められてた。交易のために出荷できるものへ畑を変えてしまっていたために果実が多くて、腹にたまらない。子供が空腹を訴えれば親は食事をそっちに回して、労働力が落ちていく。
知らなかった。飢えがこんなに恐ろしいものだったなんて。ファンファルースの街はお互いを殺してでも生き延びてやろうっていう、殺気に包まれてた。
本当は、俺がもっと稼げるようにしようって言ったんだ。品種改良を重ねて、この気候、土壌でも育つ大麦の畑を、縮小させたのは俺だった。畑を作り直しても、土壌が適した形になるまで時間が掛かる。
ポソミタキは俺を一度も責めなかった。話を聞いて、それを決めて、行動に移したのは自分だ、お前はよくやってる、って、あいつ、やせ細った顔で笑った。あいつが一番食べてなかった。
――せめて俺一人いなくなれば、その分食料が誰かに回ると思った。
俺はそんなに腹が減る方でもなかったし、なぜか他の奴らに比べて体力が落ちるのもなくて、一人で畑を耕し続けても痩せなかった。必死で畑を守ったけど、収穫量は思うように増えなくて焦りがすごかった。何せ俺は農業のプロでもなかったし、何かがあった時にどうすればいいのかも、聞きながらで、間に合わないことも多かった。
やっと実ったと思えば、空腹に耐えかねて大麦を食っちまう奴もいて、困り果ててた。蒔ける種が、なくなるんだ。やめろと言ったところで空腹は聞く耳を持たせなかったみたいだ。
どこかで食べてるんだろうって胸倉を掴まれることもあった。でも、俺が食べていないのはみんな知ってた。すぐに解放されて、虚ろな目でごめん、って言われる悔しさと悲しさ、心臓が握り潰されるような感覚を、俺は初めて経験した。
それに耐えられなかった。俺がいると「何か食べ物がある」という希望を与えてしまうことが。誰かを傷つけたくないのにしてしまう、そうしたことへの後ろめたさをあいつらに感じさせることが。
俺はまた逃げたんだ。
――何かしらのスキルなんだろうなって思ってた。飯を食わなくても平気。体調も崩さない。眠る必要もない。今の状況では便利ではあるけど、空しくもある。俺は邪魔にならないところでひっそりと暮らし始めた。時間と体力だけはあるんだ、頑張って、家でも建ててみようとか、ラノベっぽいこと考えてた。
――ある日、突然、変な夢を見るようになった。
暗闇の中で走る自分がいて、ゲームの主観カメラを動かすように視界が目まぐるしく変わった。そこで、何かを捕まえて噛みつくところで目を覚ますんだ。
別の夢もあった。こっちはとにかく幸せだった。見たこともない女だけど、そいつを本当に大事にしてて、この幸せを守るために頑張ろうって思った矢先、誰かに殺されたんだ。悲鳴を上げながら飛び起きた。めちゃくちゃ泣いた。
なんか悪いことをしてるんだろうなって思う夢も、頑張っているのに報われない夢も、同じように殺される夢も、めちゃくちゃたくさんのパターンを見た。
一番多いのはすごく豪華な部屋の中で柔らかい女の肌を……、なんか、こう、すげぇエロい夢。でも目を覚ますとボロボロの隙間だらけの木材寄せ集めみたいな家で床に寝転んでるだけなんだ。わけがわからなかった。
そんな時、あいつに会った。
あいつ……、あいつの夢を見た。書斎みたいな狭い部屋で、わぁわぁ声を上げて泣き叫んで、顔を真っ赤にしてたあいつ。何に対してそんなに怒ってんのか知らねぇけど、生き残っといてなんだよ、って思った。胸がぐわっと熱くなった。頭にカッと血が上った。俺の体が勝手に動いて、勝手に喋って、勝手になんかをやってた。
扉を出て、俺は、恥ずかしい、小学生の頃に考えてた俺の最強の剣士、みたいなのになりやがって、マジやめろよ黒歴史。
そこから体がぶわっと後ろに倒れるようにして、目を覚ました。俺は自分の手が黒くどろどろしたものになってることに気づいて、指に戻るのを見て、恐怖よりもどうにかしなきゃならねぇって思って、全部書いておこうと思った、これがなんなのか調べようと思った。
……ダチを頼ることしか思いつかなかった。
――久しぶりにファンファルースの街に戻った。あれから数年、好転しててくれよと思いながら、崖の横の道を行った。
酷かった。詳しく書きたくない。でも書かなくちゃならない。街は終わってた。この街から出て行く奴らもいたんだろうけど、残る奴らもいたみたいだ。寂れて、荒れて、子供の声一つしない。家の中に誰かいないかと覗き込んでも気配がない。何かどろどろした黒いものがべちょりと動いて、隣を過ぎていく。思わず見守ったけど、俺にはなんの興味も示さなかった。あれはなんなんだ。
懐かしい友の家、ポソミタキの家。市長であるダチの家は、荒らされていた。それどころか、門に何かぶら下げられていて、俺は叫んだ。
――叫んだ時から少し記憶が飛んでる。手が黒く染まってて、口の中にねとねとしたものがあった。気持ち悪い。さっきまであった黒いものも全部ない。もうどうでもいい。
――ダチの体を地面に置いて、骨に皮が張り付いた状態の、ミイラみたいな死体にどうすればいいのかわからなかった。
ポソミタキ、と名を呼ぶと、変なことが起きた。ポソミタキの死体がどろりとした黒いものになって、まるで肩を叩くようにそれが優しく触手を伸ばしてきた。ポソミタキなのか、と手を握れば、スポンジに水が吸い込まれるようにして、俺の体に入った。どういうことなんだ。
心の中でポソミタキの声がした。すまない、少しここに居させてくれ、あったかい、と。
いくらでも居ろよと言って、俺は泣いた。隣にダチが寄り添ってくれてる気がした。
――ポソミタキの家の中は、金目のものは何もなくて、識字率の低かったここでは書棚はガン無視されてた。
俺は隠し扉と手記を預かった。何かを守り続けないといけない、とポソミタキの一族は代々言われていたらしくて、そこへの行き方だった。簡単にいける書かれ方だった。ポソミタキの大事な部屋。そこにある大事なものを守るために、俺はちょっとだけ工夫を凝らした。
ポソミタキの日誌は俺が遺品に欲しいから、日数は抜粋して誤魔化すのにも書いておいた。悪い。
でも、こういうのは、誰か、本当に必要な奴が来るべきだと思ったんだ。くだらない、面倒な謎であっても、解いてでも行こうとする奴じゃないとだめだ。
――謎を作ったあと、ポソミタキに行こうと言われて、大事な部屋の見学に行った。細い通路を通り抜けた先で光り輝くボーナスステージみたいなところにでた。明るい場所に出て気が抜けた気がする。少し休む。
――今、このあとどうすればいいのかわからなくてしゃがみ込んでる。
ポソミタキの声が俺の中からすることは、正直嬉しい。ポソミタキの話によると、ファンファルースの街は、俺が出て行って、少ない食料がまた人々に行くようになった。
だが、空腹を抱えた人々が理性を失い、ポソミタキの家に押し掛け、齧れるものを探し、奪い、バケモノが出るというトロッコの交易路を利用し、助けを求めに行くと言ったらしい。
ポソミタキは止めなかった。冷静に、気をつけて、と見送った。ポソミタキはその時にはもう、立ち上がるだけの力も無かった。それをどう捉えたのか何人かに体を縛り上げられ、門に吊るされ、そのままにされた。
吹きすさぶ風に揺られ、この風に命を乗せて、遠くへ、と思いながらポソミタキは死んだ。
俺は俺の中に入ったポソミタキの肩を叩くことも、手を取ってごめんな、と謝ることもできなかった。ここにいるけど、ポソミタキはもうどこにもいないんだ。
――暫くして俺は立ち上がって、ポソミタキに教えられた道を進んだ。階段を降りた。綺麗だよな、マジで特別ステージって感じで。最下層まで行けば、これもボスが出そうな扉があって、今の俺には戦える力がないから躊躇した。
ポソミタキに背を押されて中に入って、その中央にあるものに触れたんだ。綺麗な光の玉だった。
その瞬間、俺の体中を縛っていた糸のようなもんがバサバサ落ちてって、急に体が軽くなった。なんだか昔使えていたものが使えるような感覚もあって、覚醒か、解放か、ってちょっと喜んだ。そうやって浮かれて、調子に乗って、失敗したことを思い出して、ポソミタキに宥められて、落ち着いた。
――俺はこの力で何ができるんだろう。
ポソミタキに聞いたら、ここにあったのは【女神の欠片】とか【片鱗】って呼ばれるもので、実態はわからないらしい。でも、ここにあったものは確かに俺を変えた。
体力はあっても結構年だって食ってたのに、若くなった気もしてる。
一枚、追加されていた。これはまだ少し新しい。ツカサは最後の一枚を読み上げた。
――というわけで、ここにあったものは俺が持ってる。
ここにあった何かが必要で、ここまで辿り着いたあんた。悪いけどそっちから会いに来てくれると嬉しい。俺はこれがなんなのか知らねぇし、必要だっていうなら渡す覚悟もある。
勘違いはしないでくれ、俺はあんたの敵じゃない。俺は、【偽りの神】に対して反抗勢力を集めてる。
ややこしくなるから、願いも込めて、ショウリって名乗ってる。
フォートルアレワシェナ正教国、首都、レワーシェ、そこで、表向きは雑貨屋をやって、裏で反抗勢力を集めてる。店の名前は【イーグリス】。聞き覚えがある奴だと話が早い。
店に来たら、合言葉を言え。
「シュン・タカミヤはいるか?」
ってな。
――もし、お前なら。待ってるぜ。ツカサ。
いつも旅路にお付き合いいただきありがとうございます。
いろいろとざわつく話数だなと思いながら、困惑を旅人諸君に抱かせつつ、
【第二回、このシーンが好き】をやりたい気持ちもあり……!
ええい、ままよ!
面白い、続きが読みたい、頑張れ、と思っていただけたら★★★★★やリアクションをいただけると励みになります。




