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【書籍化】処刑人≪パニッシャー≫と行く異世界冒険譚  作者: きりしま
新 第二章 失った世界

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2巻発売記念SS その2 星空と天気予報

いつもご覧いただきありがとうございます。


 ラングは意外と夜空が好きだ。焚火に照らされた黒いシールドはオレンジと白と黒で照り返しはあるが、それでも見えるのだろうか。ここに至るまでの道中、闇の中をするすると歩いていたので見えているのだとわかりはしても、ツカサは不思議だった。


『どうした』


 あまりにもじぃっと見過ぎていたらしく、ラングのシールドが夜空を見るのを止めてツカサに向いた。


『えっと、その黒いシールドで星が見えるのかなって思ったんだ』


 ラングはゆっくりとシールドを揺らし、頷いているのか、首を傾げているのかよくわからない角度で反応を示した。そしてそのまま沈黙。答えが面倒なのか、秘密なのか、ツカサにはわからない。

 サイダルを出て数日、快適なテントの提供があり、隊商とかち合わない静かな夜だ。再びラングが夜空を見上げたのでツカサも倣う。最初は焚火の明かりが残っていて何も見えなかったが、徐々に星が見えてくる。真っ暗闇の中、月があって、星があって、そこだけを切り取れば日本で見る景色と変わらないだろう。マンション住まい、利便性のいい街、夜も煌々と照る街灯の中で育ったツカサにはそれでも驚くほど綺麗な星空だ。


「オリオン座ってどういう形だっけ」


 確か、砂時計のような形ににゅっと腕の生えた形だ。似たような星の並びがないかを探す。小さい頃、宇宙に憧れて、星に一時期ハマっていたことがあった。パイロットになるんだ、宇宙に行くんだ、ブラックホールの謎を解くんだ、などと、SF映画やアニメの世界に影響されて、大きな夢を抱いた。やがてそれはツカサにとってかつての夢に変わり、人生を懸けるほどのものではなくなった。誰かが折れずに、熱意を抱き続けてその道を行くだろう。


『おりおんざ?』


 尋ねる声に視線を戻せば、ラングがこちらを見ていた。ツカサは星座、と空を指差した。


『俺の故郷ではね、星の繋がりに神話があるんだよ。一つ一つの星に名前がついてたり、宇宙……空の秘密を解くために、いろんな研究がされてるんだ』

『ほう、天文学や占星術のようなものか』

『え、あるの?』


 驚いて身を乗り出すツカサに、あぁ、とラングは答えた。


『星は方角を見極めるための一助を担う。一つ動かない星を目印にすれば、移動は容易だ』

『北極星みたいなやつだ、あるんだ! ラングの故郷ってそういうのないと思ってた』


 シールドの中で眉を顰められた気配がした。もしかしたら、ラングは星空が好きなわけではなく、毎夜それを見上げ、目印にできるものを探しているのかもしれない。それはいい、置いておこう。ツカサはいそいそとラングの横へ移動し、じゃあさ、と夜空を指差した。


『この世界の空、ラングの故郷とは同じ? 違う?』

『お前の故郷とはどうなんだ』

『うーん、違うと思う。そもそもさ、こんな星がぶわぁっと密集してるようなの、見たことないんだよ。プラネタリウムくらい』


 プラネタリウム、と言葉を繰り返され、天体観測を室内でできるんだ、いろんな解説が、と意気揚々と説明をするが、上手く伝わらない。こういう時、実際に見せられたらいいのにと空間収納で眠ったままのスマホのことを思い出す。

 唸り始めたツカサを立たせ、促し、ラングは少しだけ焚火から離れたところに移動した。じっと夜空を見ているラングとその視線の先を何度も往復し、ツカサは続きの言葉を待った。


『私の故郷とも違う』


 先ほどの問いかけへの答え。ツカサは、おぉ、と興味深げに声を零した。質問を重ねようとするツカサはラングに肩を掴まれ、引っ張られ、正面に立たせられる。くるりと回転、背中をラングに向ける形だ。ここまで薄っすら照らしていた焚火の明かりがラングの体に遮られて、ラングの影の中に入っている。


『明かりを瞳から取り払えば、星はもっとよく見える』

『暗闇に目が慣れるってこと?』

『そうだ。お前は少し焚火に近い。焚火の明かりですら少ないと言いたげな時がある』


 そうかもしれない。足元に影ができるほど多く、明るい街灯と、家の中は天井でLEDが眩しく部屋を照らし、勉強をする時に暗ければデスクライトを点けていた。ツカサは明かりの中で育ったのだ。ここでは壁にある小さなランプ、いつ消えるともわからない蝋燭に火を点けて、結局目が疲れて眠るような感じだった。酒場で働きだしてからはテーブルの場所を覚えるまで、薄闇の中で薄っすらと見える顔を、服装の特徴を覚えるまでそれなりに苦労した。


『月を見ないように、一つ暗い方を眺めていろ。向こうの方だ』


 ラングの指ぬきグローブが顔の横を通り、何もない方を指した。じっとそちらを見ていれば、じわ、じわ、と瞬きの度に何かが見えるようになった気がした。ゆっくりと目元を覆われ、顔を上げさせられる。意外と温かく、少しだけ硬い手のひら。それが再びゆっくりと離れた。


『目を開いてみろ』

『うわぁ! すごい!』


 ツカサの視界に広がったのは青と白の輝く世界だった。チカチカと明滅するような星が、大小さまざまな大きさで光り輝き、さっと流れていく流れ星まで見えるようだった。先ほど見上げていた空とは違う姿に感動し、思わずラングを振り返ろうとしたら肩を掴まれた。


『振り返るな。焚火の明かりと、月明かりでまた見えなくなる』

『そっか、そうだな、すごい!』


 ツカサは振り返るのをやめて夜空を見上げた。チャリ、とラングの装飾品の音が微かにして、同じように夜空を見上げたのがわかった。


『綺麗だなぁ』

『あぁ、そうだな。明日はまた晴れる』


 絶対に外れないラングの天気予報に少し笑う。


『それどうやって判断してるんだ?』

『経験だ』

『その経験を知りたいんだけど』

『お前にはまだ早い』


 どういう意味だろう。首を傾げればラングが言った。


『人生経験1にはまだ早い』


 だからそれは違うって、とツカサは星空を見上げながら文句を言った。

 首が痛くなるまで夜空を見上げたツカサに、ラングは最後まで付き合ってくれた。




いつも旅路にお付き合いいただきありがとうございます。

突発更新です。


実は、本日、ファンレターをいただきました。

担当さんが転送してくださって、帰宅して手に取って、封筒を開いて、そこにあったものに踊りたいくらい嬉しかった。

近所迷惑なのでやめましたが、お猫様を抱っこして頬ずりして四つ足で突っ張られるくらいにはテンション上がってモフりました。

これを書いている今、お猫様は近くに来てくれません。やりすぎました。

送るの怖かっただろうな、ドキドキしただろうな。

ファンレターはこちらまで、なんてテロップもお知らせもないのだから、投函するのにすごく勇気が必要だっただろうな。

でも確かにきりしまのもとに届きました。

本当に嬉しかったです。ありがとうございます。

嬉しかったのでウキウキワクワクして、わぁー! という気持ちが収まらず、発売記念SSを追加で書きました。

ファンレター! なんだか作家っぽい!

わーーーー! 嬉しいぞ!

ファンアートも感想もファンレターも、あたたかな気持ちが、全部嬉しい!

旅人諸君のあたたかな勇気が、熱意が、作品を好きと言ってくださる想いが、そうしたひとつひとつが、きりしまの心に幸せな感動を与えてくれます。

本当にありがとうございます!


旅人諸君へ、心より感謝を込めて。

きりしま


追伸。

とはいえ本編は当然の如く手心など加えませんので、まだまだ頑張ってください。

書籍の方もよろしくお願いいたします!

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