1-28:絡み合うそれぞれの目論み
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駆け寄れば、アッシュは案内をするように走り出した。つかず離れず、ある程度人けのないところまで来て、アッシュは暗がりで足を止め周囲を窺い、唇を開いた。
「調べてきた。とんでもないことがわかった。あの時計台の隙間、不味い、封印みたいなものだった」
「どういうこと? 説明は……できる?」
「そうだな、順を追ってだな」
アッシュは二度深呼吸をしてからどこからか取り出した手記を差し出した。恐らく、言葉がまとまらなかったので調べたことをそのまま見せたいのだろう。ツカサはここから、と言われたページを読んだ。
時計塔の隙間、建造物の遊びかと思っていたが、そこには確かに空洞がある音がしていて、埋められてはいなかった。いくつか押すと動く石の嵌めこみがあったのでそれを繰り返し、ダイヤル式の鍵を解くようにしてアッシュはそれを開けたらしい。地下に降りる階段が現れ、背後を気にしながらもランタンを手に降りていき、広く、螺旋を描くようなそれが終わったところに広い空間があったという。薄っすらとした明かりは床にある五つの光から漏れていたものだ。五色、イーグリスを取り囲むダンジョンの色。そっと近づき、まずは半円型の空間を調べた。
「天井にこれが彫ってあって、台座に文字が刻まれてた。俺はヴァンとかラダンと違って言語に明るくないから、翻訳してほしい」
ツカサはアッシュの指で捲られた次のページに描かれた魔法陣と文字を見て驚いた。
「台座の方は日本語だ。イーグリスを取り囲む五つのダンジョンの中心点、ここにダンジョンの入り口があることを、秘し、封じる」
「あぁ、やっぱりあれ、ダンジョンの転移魔法陣なのか」
アッシュは壁にもたれかかり、そのままずるずるとしゃがみ込んだ。
「ヴァンもラダンも、俺もおかしいと思ってたんだよな。他の学園に比べてここって、かなり食事情がよかったり、魔獣研究が盛んだったりするんだよ。シグレ殿の手元に届く会計報告やら仕入れ内訳だったりしても、書類上は問題ない。ただ、中に入り込んでみると潤い過ぎてる」
「最初から疑ってたの? まさか俺を送り込んだのもそのため?」
「いや、それは違う。そこは当初の依頼通り、冒険者の生存率だ。まぁ、足掛かりになればいいかなとは思ってたけど」
怒った? と上目に見られ、呆れたように息を吐いた。にひひ、とアッシュは苦笑し、よっこら立ち上がった。
「俺は王都の学園に通ってたからな、ここの異質さ、空気に首を傾げてただけだった。ラダンが何度か教員として来て、ヴァンが来て、つい最近、シグレから【快晴の蒼】として依頼を請けた」
「これ続き聞いたら巻き込まれるやつ? というか本当忙しいね?」
「手遅れってやつ。有名人は辛いぜ」
アッシュは影が薄いじゃん、と言えば、それなりに刺さったらしくまた座り込んでしまった。報告もぶつぶつとぼやくようなものになってしまい、ツカサも座り込んで耳を近づけた。
イーグリス学園はシグレの父が若い頃から計画し、建てた学園だ。歴史としてはまだ百年も経っていない。
しかも、二百年前に【渡り人】が現れ始め、街を興し造りあげる最中、大体百年経過した辺りで街はほぼ形になっていたはずだ。だというのに住まう場所を敢えて奪い、学園を建てた。もちろん、街を新造しないという盟約はあるが、学園は街ではないので外に造っても問題はなかったはずだ。
それでも敢えてそこに造ったのは、そうするだけの理由があったからだろう。ダンジョンの転移魔法陣だ。
「前にいろいろ話したから、一応理由はわかっちゃいるけど、そもそもこんな狭い範囲にダンジョンが五つもある方がおかしい。その中心点にあんな魔法陣がおあつらえ向きにあるのも、人間の理解を越えてる。ざっと見た感じ、一つ二つ封印が解けてるように思えるんだ、あれ。それがわかってて食料調達とかに実際使われてたんじゃないか?」
潤沢な食料、食事、そういえば、迷宮崩壊中も学園は実技演習を除くくらいで、通常通り運営していたという。学園の基盤が確固たるものであると市民に知らしめた一つの結果だが、肉や野菜など、内部で賄えていたからなのだろう。そう考えたことを零せばアッシュからも同意が返ってきた。封印が解けていると感じたのは赤と緑、そちらに金が掛からなかったのならば、価格の跳ね上がっていた米や小麦だって仕入れられる。
「俺魔力がないから強い魔力を感じると肌がヒリヒリすることあるんだけど、三つくらいしか感じなかった。それもこう、ゆら、ゆら、ってしてる感じ」
「え、それって、不味くない?」
「不味い。赤と緑がいつ解けたかはわからないけど、他の三つも不味そうだった」
ちら、と視線を感じてそちらを向いた。
「赤と緑はわからないけど、他の三つの揺らぎはイーグリステリアの黒い雨が、たぶん、切っ掛けだ。いずれ五つとも封印が解ける。そうした封印の揺らぎとかも懸念した上で、保守のために入り込めるように敢えて、あの隙間が残されてたんだな」
「封印のし直しとかしないといけないよね。俺魔法陣とか詳しくないんだけど」
「おいおい、俺とツカサにはもっと心強い味方がいるだろ?」
アッシュがただの短剣を取り出し、自慢げに笑った。あっ、とツカサは白銀の杖を空間収納から取り出した。
ふさぐもの、ガーフィ・ネル。ふうじるもの、マール・ネル。
姉弟武器は不思議な音を立てて再会を喜んでいた。ツカサは少しだけ眉尻を下げた。
「二人に協力してもらって、その転移魔法陣を塞いだり封じたりしたら、ダンジョンはどうなるんだろう」
「ダンジョンには影響ない。転移魔法陣ってのは秘されているだけで、実は結構ある。その内のいくつかを国の要請で塞いだこともある」
アッシュの発言に驚き、え、と小さく声を上げた。曰く、道端にあるものではないらしいが、こうした地下の空洞などに突然光る床が現れ、人知れず存在することがあるという。魔法陣に見覚えがないかと問われ、ピンときた、ビースト・ハウスだ。アッシュの手記の魔法陣を見直し、似ていると思った。
そうだ、ビースト・ハウスでも光る魔法陣からぽんぽんと魔獣が出てきていた。それがもし、転移元の空間にポップしたものが、転移魔法陣を踏んで溢れて出てきているのだとしたらどうだろうか。もしその想像があっているのならば、その地下の五つの転移魔法陣からいつ魔獣が溢れてもおかしくはない。
アッシュがあれだけ慌てていた理由に思い至り、マール・ネルをぎゅっと握り締めた。
「塞ぐとして、学園の食事情はどうなるんだろ。結構、大盤振る舞いしてるからさ」
「金をちゃんと使うだけだ。シグレ殿が予算について何も言わなかったってことは、本来、十分に購入費用があって、仕入れたって問題ないんだよ。ってことはだ、ダンジョンで賄って購入に使わなかった金はどこだっていう話で」
「横領ってこと!?」
ふと、懐かしいサイダルの事件が浮かんだ。アッシュは声が大きい、とツカサの口を押えた。周囲を改めて窺い、アッシュは手を離して言った。
「それだけじゃない、ツカサの結婚式で俺らシグレ殿と話しただろ、その時に学園の話をしたら、食事の豊富さに首を傾げててさ。その後ちょっと怖い顔してたんだ。ほら、ここ、シグレ殿の御父上が創設しただろ? ……知ってたんだと思うんだよ、転移魔法陣」
「あー、また何か喋れないあれそれがあるのかな。何も言わなかったってことは、根本解決するならやってもらっちゃおう、っていうシグレさん特有のちゃっかり?」
だと思う、とアッシュは苦笑し、それから真面目な顔になった。
「とはいえ、確かにやった方がいい。地下水道の件は俺にも予想外だったけど、こうとなれば好機だ。やるならこの騒ぎに乗じたい。転移魔法陣が使えないとなったら騒ぐ奴もいるかもしれないけど、そこから魔獣が溢れるよりはましだ。後のことを考えたら使えなくする方がいい。今まだ何もないことが幸運なんだ。だから、行けるか?」
「行ける」
よし、とアッシュは立ち上がり、こっちだ、と先導した。ツカサの灰色のマントは逆に目立つから外せと言われ、空間収納に仕舞った。バタバタと走り回る気配をやり過ごし隠れながら時計台を目指し、するりとその中まで順調に入り込んだ。
時計台の中は広かった。上の方で歯車の回る大きな音がして、吹き抜けになった上は薄暗くて見えにくい。いくつかの部屋もあるようで、そこに手入れ用品や何か入れてあったり、ここの管理人が一時的に寝泊まりするのだろうと思えた。大きな石を積まれ、鉄骨や材木で支えられたこの場所に、ツカサは不思議と大きな魔力を感じた。
「全体が大きな魔法障壁みたいな、正しい表現がわからないよ」
「いや、わかる。何かに入った、って感じするよな」
「うん、響く音でわかりにくいけどね」
ガタン、ゴトン、時計の針を進めるための機構が音を響かせ、肌を揺らす。その違和感がこれを隠しているのだ。アッシュは上り階段の下の陰に入り込み、壁に耳をつけ、探り当てた解除法で道を開いた。噛み合っていた凹凸がゴリゴリと擦れる音を立てて開き砂埃が舞い、階段が現れた。アッシュがランタンを取り出してこちらの意思を確認もせずにそこを降りていく。
確かに階段は広い、両腕を広げても余裕があり、アルの槍を横にして歩けるくらいだ。
「転移魔法陣について、前に、シェイが言ってたことがある」
階段を降りながらアッシュの声が器用に発せられ、ツカサは首を傾げた。声の響きやすい空間だというのに反響しないのはなぜだろうと考えながら、話の続きを待った。
「転移魔法陣はダンジョンが抱えきれない魔獣を、溢れた場所から移動させるためにダンジョンが生み出す別の出口、緊急排出口なんだって、話してくれたことがあるんだ。酒に弱いあいつがベロベロになってる時で、本当かどうかは知らないけどさ」
あいつ時々わからないこと言うから、とアッシュは呟いたが、世界を見守る者が言うのだからきっとそうなのだろう。
なるほど、そうであれば、なんとなく思いつくことがある。ヴァロキアの王都マジェタでも、イーグリスの【赤壁のダンジョン】でも、人が多く、だからこそダンジョンを巡るエネルギーは大きい。ツカサの入ったダンジョン数もそう多くはないが、ビースト・ハウスがあったのは冒険者の多いダンジョンだ。
特にここイーグリス周辺では【渡り人】が現れるようになり、食料を求めてダンジョンに詰めかけ、そうして成長したダンジョンコアに早々に辿り着いた。溜まったエネルギーを冒険者が消費しきれなくなったタイミングがどこかであったのだ。
それが、シグレの父が学園設立を計画していたタイミングならどうだろう。エフェールムのことだ、今すぐどうにかできなくとも、秘し、封じ、後世に託す。できる者が現れるまで監視する、など、やりそうなものだ。だからこそシグレも、【快晴の蒼】ならば、と託したか。
一先ず、この知見は大事にしようとツカサは記憶に刻んだ。
ふとアッシュが足を止めた。唇に指を当て、静かに、と示した後、ランタンを消す。下の方から話し声がした。アッシュがここを探し当てた時、声の主たちはまさしくダンジョンに赴いていたのだろう。そして、今戻ってきた。鉢合わせた、選択肢は一つ、取り押さえる。
「来週の献立なんすけど、俺が考えていいすか」
聞いたことのある声だった。ツカサは少し前にいるアッシュの肩を掴む。
「いいぞ、けど栄養価は考えるんだぞ。学生の体調を支えているのは食事だ」
「ここで仕入れできるのいいっすよねぇ! 昔使った剣の輝き、ここで浮いた分、少し高いんすけど定期的にモルル仕入れられるんで」
「だな、それに、食べ盛りに腹いっぱい食わせられる」
ぐっと肩を握った手に力を入れた。横領ではないのか、ただの善意なのか、厳しい料理長公認のことなのか。それに、この場所の危険性についてはどう考えているのか。聞きたいことが山ほどある。暗闇の中、肩を掴むツカサの手にアッシュの指が三本載った。とん、とん、とん、と叩いた後、もう一度叩きながら指を増やす。三つ数えて捕縛するぞ、ということか。間違えていてもどうにかすればいい。
螺旋階段の先、壁の反射でじわりと明かりが見えてきた。すーぅ、と静かに短剣を抜くアッシュに対し、ツカサは鞘のままで感ずるものを手にした。一撃必殺で殺す手法しか習っていないので、こういう場面で殺さずに済む自信がなかった。
とんとん、一、二、三。柱を回ってきた男二人に襲い掛かった。
「うわぁ!?」
「なんだ!? 魔獣か!?」
「失礼な!」
ツカサは文句を言いながら、驚きのあまり階段を踏み外し後ろに転げていきそうな男の胸倉を掴んで引き寄せ、そのまま反転、助けるつもりが階段に叩きつけてしまった。相手は勢いよく顔面から階段に倒れ、ぐしゃっと音がして慌ててヒールを使った。潰れて鼻血を噴いていたせいで、んご、と変な声を上げながら、押さえ込んだ男は必死にこちらを振り返ろうとしていた。アッシュの方は一撃斬りつけて脅かした後、手際よく関節を外して抵抗を封じたらしい。思わず手放されていたランタンがカシャン、ガシャン、と音を立てながら転がり落ちていく。
「明かりくれ」
「トーチ」
パッと明るくなってお互いが誰かを理解し、ツカサは嫌な予感の的中に肩を落とした。厨房のナンバーツー、ナンバースリーだ。ツカサの押さえ込んだ方はナンバースリー。アッシュの膝の下でナンバーツーは慌てて叫んだ。
「料理長は知らない! これは俺の独断だ! あの人は知らない! そいつも、そいつも違う!」
「いや! 俺は、これは、これは俺の勝手な恩返しで! 先輩は!」
「黙れ、どんな理由であれ転移魔法陣を放置、私的利用した罪は上長にも責任がある。ここから魔獣が溢れたらと思わなかったのか? ただでさえ外部から魔獣を連れ込んで事件が起きたばかりだろ」
アッシュが厳しく言い、ハッ、とした顔で二人は項垂れた。きっと、今までが大丈夫だからこれからも大丈夫、ここはそうならない、と慢心があったのだろう。アッシュがどこからかロープを取り出して手早く縛り上げ、ひっくり返されたナンバースリーはツカサを見て目を見開いていた。
「あんた、アルブランドー先生! なぁ、頼むよ! 本当に料理長は知らないんだ! 俺はただ恩返しがしたくて」
「わかるよ、それから、褒められたかったんだろ、認められたくてさ」
「いや、あぁ、そう、それもある。わかってくれるなら、頼むよ! 迷惑かけたくないんだよ! もうやらないから! やめるから!」
「だったらやらなきゃよかった」
今まで、いろいろと自分がやらかしてきて、取り返しのつかないことになったり、それを誰かが助けてくれたりしたからこそ、心から出た言葉だった。それに、魔獣の恐怖なら誰よりも理解している。
「やると決めたなら、死ね。相手はダンジョンだよ、そのくらいの覚悟を持て。やったことは、消えない。誰かが、自分が、つけを払わなくちゃならない。それが責任なんだよ」
最近、自分に対しても刺さる鋭利な言葉をよく口にしている気がした。
歩んできた軌跡に刻まれた轍は、たとえ遠くなったとしても消えることはない。振り返ればいつだってそこにある後悔が、時々、思い出したように自分を責める。けれど、そうした結果を必死に受け入れなくてはならない。
ナンバーツーもスリーも項垂れて、階段に重く沈み込んだ。それを置いてアッシュと二人、トーチの明かりの中、階段を飛ばし飛ばし降りていった。アッシュは何も言わなかった。
最下層についた。ここまで転がってすっかり壊れたランタンの向こうにアーチ形の入り口があり、カラフルな光が溢れていた。そっと入れば半円型の空間に直径二メートルほどの転移魔法陣が五つ円を描くようにそこにあり、中央に台座、天井に封印の魔法陣、部屋の端にツカサが読んだ日本語で刻まれた碑文がある。なぜ日本語だったのだろう。いつかシグレに尋ねてみよう。
アッシュに呼ばれ中央の台座を見るとツカサの眼には歪んで映った。ここから魔力が放たれ、天井の封印目的の魔法陣にぶつかり、部屋中を反射して、反射して、反射して、何重にもなって封印が施されているのだ。ただ、中央の石が二つほど色を失っていた。アッシュはツカサの反応を見ながら尋ねた。
「枯渇か?」
うぅん、と唸り、ツカサはオーリレアでシェイがやってくれたように分析するため、眼の深さを浅くしたり、深くしたりした。
「いや、どっちかっていうと……、回路、魔力を供給する……経路が切れてる、みたいな。もしかしたら、学園自体が大きな魔法陣で、改築があったりして、機能を失ったのかも。ゲームとかでも街自体が大きな封印の要だったりして、あのゲームなんだったっけな。すごいよくあるRPGって感じで好きだったんだけど。あんまり流行ってなくてびっくりしたなぁ」
「今後も何かあったら封印が緩むってことはわかった」
さくりと切り上げられてしまい、そうだね、とツカサは肩を竦めた。アッシュはガーフィ・ネルを鞘から引き抜くと、じゃあ、やるか、と声を掛けて赤く光る転移魔法陣に近づいた。
「ツカサも何かあれば、マール・ネルで頼むぞ」
「わかった」
結論、心配は不要だった。アッシュが転移魔法陣の端にさくりとガーフィ・ネルを刺すと、刺された場所に向かって吸い込まれるようにして転移魔法陣が歪み、しゅぽっ、と音を立てて消えた。それと同じ手順を緑でも繰り返し、黄色に刺そうとしてこの場所が発する封印魔法に邪魔をされた。その回路をツカサとマール・ネルで封じ、その間にアッシュとガーフィ・ネルが塞いだ。汗もかかずに終わった。残ったのは短剣の刺さった跡と、封じるものの無くなった封印機構だけだ。いずれこれもまた忘れ去られ、風化し、色を失った二つの石と同様にその存在が無くなるのだろう。
とにかく、これでここから魔獣が溢れる事態は防いだ。階段を戻りついで未だ項垂れている二人を回収し、外に出た。
時間にしてものの数十分、今日は暗闇に降りることが多いなと腕を伸ばした。さて、休んでいるわけにはいかない。
「次はガスパールの件だ、冒険者ギルドに行かなくっちゃ。アッシュ、そっちの二人はどうするの?」
「学園長殿に報告ついで、俺がこのまま連れて行く。そのままヴァンと合流することになるだろうから、俺はここまでだ」
だからこれ、とアッシュから革袋を渡された。中を覗けば紙と【転移石】が四つ入っていた。【鑑定眼】で覗けば、イーグリスを取り囲む、紫を除いた四つのダンジョンのものだった。この近辺のダンジョンに行くなら使え、ということか。確かに一階層から行くよりも手っ取り早く、短時間で済む。少々悔しいが非常に有効な手段だ。
「紫壁は十人登録されてるから、他のだけな。あとで返せよ」
アッシュが揶揄うように言い、ツカサは頷いて笑い返し、次の目的地に向かって走り出した。
面白い、続きが読みたい、頑張れ、と思っていただけたら★★★★★やリアクションをいただけると励みになります。
転移魔法陣、頭の片隅に。




