1-14:教員会議
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ディエゴに治療方法を伝授し、アレックスとマイカの件を頼んだ際、ツカサは自分にできる、渡せる報酬なら好きなものを決めていい、と提案した。提示するだけではなく、自分で決めていい。それはディエゴを驚かせたようだったが、他者に魔力を注ぎ、送り、循環させるのは高等技術になる。むしろそれを生徒に任せることに魔導士科からは不安の声も出たが、ツカサはディエゴならできると太鼓判を押した。ディエゴは報酬については少し考えたい、これも鍛錬になるだろうからアレックスとマイカにはできるだけのことをやってみる、と引き受けてくれた。
「悪いな、助かるよ。夜、報告だけは聞かせて」
「わかりました」
ディエゴは少しだけ複雑そうな顔で頷き、向こうで待っていた親友の元へ戻っていった。
そうして任せはしたものの、ツカサの二週間は本当に慌ただしかった。生徒対応だけではなく、魔導士科の鍛錬場の始末書を書かされ、叱られ、剣術科の教員から協力要請を請け冒険者としての知見を求められたりと現場での忙しさもあった。
教師として生徒に向き合うための時間を作り、アレックスたちだけではなく、全員と個人面談を行うなどの対応には当然時間が必要で、家に帰る時間が全くといっていいほどなかった。ルフレンが運動不足になるのも心配で馬を扱える人に頼み、手紙と共に近場の門兵へ届けてもらった。街の人より門を預かる人の方がツカサのことを知っており、エフェールムの息も掛かっている。任せるならそちらの方が安心だった。さすがに泊まり込みだ、朝から晩まで対応に追われて疲れ果てていた。
家には伝達竜を飛ばし状況を説明。ルフレンが無事帰ったか、自分は帰れないことを詫びれば、心配しないで、ルフレンは元気、アーシェティアが練習がてらお外に連れていってくれている、お手伝いさんも雇った、少し余裕ができた、ツカサは無茶をするから心配、体には気をつけて、と柔らかい文字で、それから少し緊張した文字で、竜さんのお金が怖い、と書かれていた。一日一通にするから、と手紙で説き伏せ、ツカサは毎日伝達竜でやり取りし、家の状況を知ることだけが癒しになっていた。モニカに会いたい。ぎゅっと抱きしめて、あの柔らかさを、甘い香りに顔を埋めたくて堪らなかった。
今日も今日とて会議室。それぞれが奔走し、十三日目、報告会だ。これで方針と対応が決まる。
まずは魔導士科。これは単純に鍛錬場の修復の目途が立ち、もう一週間あれば建物も、魔法障壁装置も元通りになるとの報告だ。元々魔導士が建材の一つである石などを創り、切り出していたこともあって、修復が早かった。街中の修繕の光景を思い出し、それが建物でも早いのかとツカサは感心した。ちなみに修繕費は統治者からの寄付と学園の保険と冒険者クラスの予算と剣術科から出た。剣術科はツカサを呼びつけたことで生徒の魔力暴走を即座に抑えられなかったことへの後ろめたさから申し出てくれたことだ。今後ダンジョン研修を抱える身としては有難い。あとでシグレにも手紙を書かないとなぁと頭を抱えている間に会議は進んでいた。
次に魔獣生態研究学科。ツカサが氷で貫き、その首を刎ねたアルゴ・コボルトの群れについてだ。これは事前に報告を受け、ツカサがついでに【鑑定眼】で視たとおり、一匹だけアルゴ・キングコボルトが混ざっていたと改めて発表がされた。そして原産は【赤壁のダンジョン】だった。
本来ならば一匹ずつ檻から出すはずが群れのボスがいたことで統制が取られ、一瞬の隙をついて鍵自体を壊されての阿鼻叫喚だったそうだ。
鍵か、とツカサは顎を撫でた。あまりそういった斥候じみたことは詳しくないが、ふと、それも調べ直してもいいのかもしれないと思った。そもそも魔獣を収めておく檻の鍵がそんなに脆いだろうか。未だ現場は保全状態、確認はまだできるはずだ。
剣術科は騎士科と場所を分けて使うことになった。冒険者クラスが休暇中、今後改築された魔導士科の鍛錬場を引き続き借りること、ダンジョン研修のための課外学習が増えるとあって、上手く場所を回すことになった。
そして本日の目玉、剣術科の教員が報告書を手に読み上げた。
「では次に、剣術科から報告だ。今回アルゴ・コボルトを納品した商会だが、長年付き合いのある商会ではなかったことがわかった。これは学園の教務課に手続きを依頼して、投げっぱなしになっていた私の怠慢でもある。問題が解決次第、辞す覚悟ではあるが、それまでは皆の仲間で居させてくれ」
ツカサが駆け付けるまで一人で持たせていた教員、ジークは、胸に手を当てて真摯に告げた。その在り方が歴戦の戦士であり、誇り高い騎士のようでツカサは好感を持った。こちらが冒険者であっても見下さず、対等に接してくれる人というのはやはり好きだ。灰色の短髪は地毛、口元にある剣筋の傷痕、彫りの深い顔立ちに加え、若干の老け顔でかなり年上に見えるが、これでジークは三十歳とまだ若い。一同からの肯定も否定も待たずにジークは続けた。
「昨年終息した【渡り人の街事変】の際、近隣で魔獣が溢れてしまったこともあって、魔獣商人と取引を停止、その間、学園には魔獣が届かなかった」
魔獣商人とは、その言葉通り魔獣を売買する商人だ。家畜化している大人しい魔獣などを飲食店や解体屋に丸々一頭卸したり、様々な方法で魔獣を提供する商人だ。冒険者のようにドロップした部位や道中で遭遇した魔獣を討伐して持ってきて、気ままに解体屋、冒険者ギルドに納品するのではなく、顧客のニーズに合わせて対応する特殊性がある。魔獣の捕獲、畜産という技術を持つからこそできている商売でもある。騎士団の訓練や、こうした学園での実技演習に魔獣を提供するなど、難しい商売ながら求める顧客は多い。
ジークの報告に対し、ふん、と騎士科のズィールは肩を竦めた。
「当然だ。守るべき生徒も、街もあるのだ。あの時は学園どころか、街に魔獣を入れることすら許されなかった」
「そのとおりだ、ズィール。だが、それで、ずっと懇意にしていた魔獣商人は他に流れていき、新しい商会を見つける必要があった。それが、今回納品をした商会だったわけだ」
何もそれは魔獣だけではなく、物資のやり取りもそうだろう。モニカは石鹸を置いてもらえるところを探すだけでもかなり苦労をしていた。ツカサが腕を組んで椅子に背を預ければ、ギシ、と音がして一瞬視線を集めた。何か発言をするつもりではなく、楽な姿勢にしただけなので小さく笑みを浮かべて先へ促した。
ラングが常に動きに気をつけていた理由がわかった気がする。尊敬にしても、畏怖にしても、敵意にしても、何かしら一目を置かれている立場というのは一挙手一投足が見られているのだ。ラングが少し動いて、一言発するだけでツカサを含め皆が次を待つ。なかなか居心地が悪かっただろうなと苦笑が浮かぶ。
「それで、冒険者であるアルブランドーにも意見をもらいたい。……アルブランドー? どうした?」
「あ、いや、ごめん。ちょっと別件で考え込んでた。なんだろう」
悪い癖が抜けない。ジークが心配そうにこちらを見ていて、見渡せば他の教員からも視線を注がれていたので腕を解いて机に肘を置いた。これから参加しますの姿勢だ。
「魔獣の納入に関して、今まで学園と魔獣商人とのやり取りだったけど、今後の対策に何がいいかって話をしてましたよ」
魔導士科の教員が要点をまとめてくれて話について行くことができた。ツカサを叱り、アルゴ・コボルトの一件でも呼びに来た魔導士、いい加減名前を記載しようと思う、ゲオルギウスという男だ。カスタードクリームのような色の髪を三つ編みにして背中に流し、身長はひょろっと高くて一見頼りないが、魔導士としてはツカサの知る軍人と遜色がない実力者だ。歪みの生きものの時、魔法障壁のコツを伝授したうちの一人で、他者に魔力を通す、という技術に惚れこみ、それなりに年上なのだがツカサのことを心から先生と呼んでくるのは少し気恥ずかしい。んん、と喉を慣らしてツカサは言った。
「あんまり前提を知らないからずれたことを言ってたら悪いけど、冒険者ギルドは通さないのか? 俺が呼ばれたみたいに、実技演習中、冒険者が数人いるだけで違うと思うけど」
あぁ、という納得なのか思い出したのかよくわからない音がいくつか零れた。剣術科のジークが資料をぐしゃりと潰しながら腕を組んだ。
「それも【渡り人の街事変】の際に一度切れてしまっていて契約し直したんだが、来なかったんだ」
「どういうこと?」
こちらが冒険者だから話しにくいのだろう。気遣うように視線を逸らされ、話して、と声を掛けた。
「冒険者ギルドとは改めて契約を結んで、先日の実技演習には冒険者パーティに立ち会ってもらうはずだった。だが、時間になっても冒険者パーティは来ず、確認に行かせている間にあの事態になった、というわけだ」
なるほど、いろいろ不運が重なった結果らしい。まさか檻の鍵が壊され、群れがこちらを狩りに来るとは思わなかったわけだ。
「冒険者ギルドには俺も確認に行った方がいいかもね。来るはずだった冒険者パーティの名前とか、契約書があれば写しが欲しい」
「助かる。これが写しだ」
先程ぐしゃりと潰されていた紙の数枚を受け取り、ちらりと見て思わず立ち上がった。
「これ本当? 嘘でしょ?」
「何がだ?」
「立ち会いに来るはずだった冒険者だよ。絶対無理だ、来れないに決まってる」
教員たちがざわめき、立ち上がり、紙を手に主張するツカサへどういうことかを尋ねる声が上がる。ツカサは空間収納からバサバサと手紙を取り出し、いくつかを開いて並べ、ジークを見た。
「写しじゃなくて正規のを見せて。冒険者本人の署名があるやつ。まさか冒険者本人の署名がないなんて言わないよね?」
「これだ、冒険者ギルドと、冒険者本人の署名だ」
差し出されたものを奪い取り、机の上に並べる。その横に何通かの手紙を置いて署名を指差した。教員たちはガタガタと立ち上がってそれを覗き込んだ。
「見て、筆跡が違う」
「ひっせき?」
「文字の癖、綴りの書き方とか、とめるところ、はねるところ、みんなそれぞれ癖がある。たとえば俺がジーク、と書いたとして、こうだけど、ジークも書いてみて」
ツカサの勢いに押されて差し出されたノートにジークが自分の名を書いた。並べてみれば確かに形が違う。
「それで、ジークに今出してもらった正規の署名と、俺の受け取ったこの手紙」
スッ、と前に出し、冒険者ギルドのギルドマスター、冒険者ギルド職員の署名の下、冒険者の名前とパーティ名をツカサは指差す。それから手紙に書かれた同じ冒険者パーティ名と名前を指し示した。その形は確かに違っていた。ざわめきが大きくなり様々な予測が口にされる中、ツカサはゆっくりと深呼吸をした。冷静であれ、それが強みになる。ジークは唇を摘まんで現実か確かめながら、独り言ちた。
「これはどういうことだ? 学園の職員はいったい誰と契約を交わしたというんだ」
「職員は? 話を聞きたい」
「呼んできます」
パッと他の学科の教員が飛び出していった。その間も確認と議論は進んでいく。ズィールは腕を組んで詰った。
「冒険者ギルドのギルドマスターとは話をしたのか? それも教務課か?」
「そうだ、教務課に一任していた」
「ジーク、この責任は重いぞ」
「わかっている」
教員の中には事務手続きなどが苦手な者も多く、ジークもまたそのタイプだ。ツカサにはそれもよくわかる。正直、授業の準備や生徒対応、実技演習の用意で時間などいくらあっても足りない。なので、それを任せられるところに任せるしかないのだ。最後のチェックは担当教員として対応するが、信じて署名することが多い。それがこの結果であれば、教員と教務課の信頼関係にヒビが入る。よくない空気だと思った。ツカサはじっと腕を組んで考え込んだ。なんとなく、嫌なものを感じていた。いや、これには悪意しかないだろう。偽の署名を睨みつけた。
「大変です!」
バンッ、と扉を勢いよくあけて先程教務課に走っていった職員が飛び込んできた。その後ろに職員を探し、誰もいないことにズィールが眉を顰めた。
「この手続きをした職員はどうした」
「責任を感じてか、六日前から体調を崩して休んでいて、今朝、心配して見に行った職員が、誰もいなかったと」
息を切らせ、息継ぎをしながらの必死の声、悔やむ者、驚く者、ツカサはぎゅっと唇を結んだ。
「もぬけの殻だったそうです……! 行方がわかりません!」
「探さねば、イーグリスの傭兵団と統治者に支援を要請しましょう!」
「もう無理だろうね」
今の今まで沈黙を貫いていた学園長が静かな声で言った。昔、王城の宮廷魔導士だった学園長はツカサと同じく剣と魔法を扱っていたらしい。だから、君を見ると懐かしくなるんだわぁ、と温かい眼差しを向けていたその人は、今はピリッとした緊張感を放っていた。ゆるりと立ち上がり姿勢を正す。年で曲がっていた腰すらも嘘のように真っ直ぐにし、それだけで教員たちが同じように背筋を伸ばす。ツカサはただゆったりと構えてそれを見ていた。イーグリス学園初の女性学園長であるその人はツカサへ視線を置いた。
「アルブランドーくん、君はこの冒険者パーティを知っているのだね?」
「あぁ。もし本当にこれを署名していたなら、必ず約束を果たす人たちだ」
「先程、絶対に無理だと言っていたのは、なぜだね」
「契約書の日付だ。その日付なら【緑壁のダンジョン】に行っていた。攻略後、すぐに俺のところに来てお祝いをしたから間違いない。手続きもしっかりとするパーティだから、街の入出記録もあるはず。それに今は【黄壁のダンジョン】に挑んでいる。ダンジョンを目的にこの大陸に来ているから、こういう依頼は優先しない」
ツカサは拳を握り締めた。
「【真夜中の梟】は金級冒険者の名に恥じないパーティだ」
偽りのロナの署名、許せるはずもなかった。ツカサが受け取っていた手紙の中、会話を知られるのは嫌だったが敢えて公開したその内容、ロナの名も、マーシの名も、【真夜中の梟】という文字もあるからこそ、一つの証明になる。この世界でそれがどれほどの効力を持つかは知らないが、一方的に【真夜中の梟】に汚名を着せることにはならないはずだ。
学園長はツカサの視線を真っ直ぐに見つめ返し、ゆるゆる、すとん、と席に座り直した。御年七十になるというその人は深い息を吐いた。
「冒険者に不名誉な責任を負わせても学園の恥、行方をくらませた職員がいることも我々の怠慢、何より、生徒を危険な目に遭わせてしまったこと、それがもっとも罪深い」
ガタ、ゴト、と皆が座り直し、ツカサも座った。学園長はじっくりと一同を見渡した後、うん、と一つ頷いた。
「ジーク、ズィール、ゲオルギウス、それからアルブランドーくん。君たちでこれを解決しなさい」
「学園長! 何を仰るのですか!」
ズィールが再び立ち上がり叫んだ。ツカサも驚きのあまり口が開く。ゲオルギウスはそぅっと手を上げて尋ねた。
「学園長、解決、とは? 魔獣商人と再契約ですか? それとも、その、【真夜中の梟】の疑いを晴らす? ア、アルブランドー先生そんな顔しないで、確認ですから! 形式的な問いかけです!」
ツカサはふぅー、と深呼吸して学長を見た。なぜ私が、と憤るズィールに学園長は淡々と告げた。
「騎士科も実技演習があるでしょう。今回、剣術科の実技演習でこれが起こったけれど、もしかしたらズィールの生徒たちが同じ目に遭っていたかもしれないんですよ。もしそうだとしたら、ジークの立場に居たのは君でしたよ?」
「それは仮定です、学園長」
「ですが、可能性としてはあった話です」
確かにそうだ。ツカサは頷く。こういうのは時の運で、実技演習を持つ学科であれば誰でも起こり得ることだった。
「騎士科、剣術科、魔導士科、それに冒険者クラス、それぞれの学科が当事者である可能性があった。だからこそ、その学科の教員たちが協力して事に当たるべきだと、私は考えたの。アルブランドーくんは友人の疑いも晴らせるでしょうしね」
「願ってもないことだね」
あ、やばい、ラングみたいな言い方をした、と自分で気づいてツカサは小さく咳払いをした。
「しかし、解決、とは」
ジークは真面目に困惑し、改めて問いかけた。学園長はそうだねぇ、と間延びした声を出した。
「君たちの考える解決に至るまで、それぞれの学科の授業は休講とする。生徒のためにもなるべく早く解決なさい」
そんな、学園長、解決ってだから何、とそれぞれが声を上げる中、ツカサだけは沈黙を守った。常に答えがあるわけではない。考えることを放棄すれば、それは獣と変わらない。あぁ、教えてもらったことがこうして生きると、自分が多少成長した実感を得られて嬉しくて、つい笑ってしまった。
「アルブランドー……?」
ツカサが一人くすくすと笑っていたせいで気味の悪いものを見たと言いたげに、皆が顔を引き攣らせていた。なぜいつもそんな顔をされなくてはならないのだろう。
「いや、師匠はすごかったんだなって、改めて思って。考えることをやめるな、って大事なことだったんだなって」
「……馬鹿にしているのか?」
「そうじゃない、ただ、俺は師匠にも、兄にも、俺にいろいろなことを教えてくれた人たちに、それに、生徒にも恥じないようにしたいなと思っただけ」
意味が分からん、とズィールは訝しんでいたが、両手を上げて苦笑を返した。ツカサはガタリと立ち上がった。
「生徒を待たせるわけにもいかないし、俺は早速動くとするけど、どうする? こういうの、早く動かないと逃げられるし、友達に迷惑が掛かるのも嫌だし」
「私は参加しますよ、実技演習で同じことが起こったら、怖いですしね」
ゲオルギウスが同じように立ち上がってビシリと挙手をした。ジークも立ち上がり、胸に手を当てて頷く。
「私もだ。そもそも、事の発端は私の怠慢でもある。原因の究明には尽力したい」
で、あんたは、と言いたげにツカサは眉を上げた。舌打ちをしながらズィールは頭を掻き、わかった、と吐き捨てた。
「学園長のお言葉は確かに一理ある、生徒を守ることにも繋がり、街を守ることにもなる。協力しよう」
学園長がぱちぱちと拍手を送り、他の教員からもそれを送られる。激励ではない、これは可決の拍手だ。魔獣が暴れた件、魔獣商人の件、消えた職員、そういった事項について四人に任命する、という意味合いを持つ。
「生徒にはよくよく、説明をしておくように」
それは首を突っ込ませるなということだろう。ツカサは数人厄介そうな生徒の顔を思い浮かべ、頬を掻いた。そこへジークが声を掛けてきた。
「それで、アルブランドー、まずは何を?」
俺がリーダーなの? と尋ねるのはその場の空気が許さない気がした。
「急ぎたいけど、まずは生徒に説明してから冒険者ギルドへ。向こうでは誰が対応したのか確認しないといけない。それから伝達竜を送る」
「伝達竜? どうしてです? 犯人に心当たりが?」
「ないよ、ただ、心強い協力者には心当たりがあるんだ」
今、訓練中だけど、手紙くらいは読んでくれるといいな、とツカサはラングに後を任された男を思い浮かべた。
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