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【書籍化】処刑人≪パニッシャー≫と行く異世界冒険譚  作者: きりしま
終章 異邦の旅人

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4-56:わたしをけさないで

いつもご覧いただきありがとうございます。


 アルは大丈夫だろうか、遠く離れたところで魔法障壁の砕ける感覚がして不安が過ぎる。それをラングに伝えることはしなかったが、ぎゅうっと握った手に汗をかいた。いけない、自分のことに集中しろと叱りつけ、手を開いてマントで不安を拭った。


 ラングと共に先に進み、トーチで道を照らし続けた。ぐねぐねと曲がりくねって右折、左折、何度も道を折れて方向感覚が狂いそうになる。ラングは大丈夫だと言ったがツカサはどうしても不安を覚え、それを毎秒振り払うようにして足を進めた。マール・ネルがツカサの背を撫でてくれた気がした。この武器は優しい。

 武器か。ふと思いを馳せた。

 剣を握って三年と少し。ここまで体が動くようになったのも、師匠の教えと神の償いという慈悲があったからだ。

 ついこの間、短剣の重さに慣れず、百も二百も素振りなんてできるかと手を抜き、逆に増やされたことを思い出した。腕の延長線上に置いて、自分の体の一部のように扱うのだと言われ、その感覚をどう掴めばいいかわからず、それでも、それを見せてくれた師匠に憧れてまめが潰れる痛みにも耐えてきた。いや、治癒魔法があったからこそ続けられたのかもしれない。

 魔法もそうだ。いまや問題のある宗教として各地でその権威を落としているマナリテル教でツカサは確かにその力を得た。何を使って魔法の穴を開けられたのかはわかっているが、そのことにだけは感謝をしたい。戦うための力でもあり、守るための力でもあり、救うための力でもある。大きな力に慢心もあった、なんでもできるという万能感や優越感に浸ることもあった。力というものが扱う者次第で善にも悪にも変わるのだと教えてもらわなければ、どう生きていただろうか。剣は扱う者次第だという言葉はツカサにとって大事な道標の一つだ。

 ここに至るまでにたくさんの教えがあった。これがだめでもこっちがある、というのは、いざという時に自分が迷わずに済むし、判断の時に多角的に考えられる。おかげでツカサには道標がたくさんあった。その中から自分で選び取る(すべ)も学ばせてもらった。

 惜しげもなく自身の失敗や経験を見聞きさせてくれる人たちがいることを、いつだって感謝している。その人を形成するに至った血の通った経験は、言葉だけでも響くものがあるのだ。

 ツカサは白くなった右目を、元から黒い左目を開いた。


「ラング、近いよ。魔力圧を感じる。魔法障壁をもう少し補強したいから、少し距離を詰めてほしい」

「わかった」


 先を行っていたラングが少しだけ速度を落とした。ここまで来ればツカサにもどこにいるのかわかる。

 シュンと戦った時、魔法障壁に対してぶつかる面積が多すぎて足を進められなかった経験から、走るラングの前にホーンラビットの角のような魔法障壁をもう一つ展開した。様々な冒険が、経験がこうしてツカサの力に変わっていた。

 理の属性であるラングが辛くないように、今唯一の、そして絶対の盾であるのだとツカサは決意していた。ラングがふと静かな声で言った。


「ツカサ、お前にできることを思い切りやれ」


 このダンジョンの中で、オーリレアでの一戦との違いがわからないのはラングもそうだ。それらに対応してみせてこそ冒険者(ギルドラー)だ。

 ツカサは明るい声で返した。


「俺も、マール・ネルと忙しいだろうから、盾しか手伝えないよ」

「十分だ」


 ラングが小さく息を吸ってなにかを整えたのがわかった。


「お前の成長には驚くばかりだ」


 それはどのあたりが、と聞くのは野暮だ。いつだって欲しい言葉を言ってくれないラングが、こうしてかけてくれた言葉はツカサの中で大切なものに変わる。

 その信頼に応えようと思った。


「だとしたら、いつも見せてもらってる背中がいいんだよ」


 ふっと零れた息の音が小さな笑みを、すぅと吸う音が敵を知らせた。

 そこにいる。

 目の前の体が一気に前方へ飛んでいく。この全身を包む魔力、魔法障壁がなければ体中がへし折られるだろう。一歩遅れてそこへ足を踏み入れれば、既にラングは剣を振り抜いていた。素早くトーチを展開した。

 双剣が美しい軌跡を描いてイーグリステリアの魔法障壁をゼリーを切るように滑っていく。体を引くしかないイーグリステリアを、体を回転させた追撃で追いかけた。左腕を前に出そうとしてそこには何もなく、決まる、と思った。しかしさすがは敵のフィールド、肉の守護者がそうだったように、壁から伸びた手がラングを捕らえようとしてツカサは風魔法でそれを打ち払い、魔法障壁で足場をつくればラングはそれを察知して蹴って戻った。惜しい、左肩が少し斬れただけだった。

 この応酬が一瞬の出来事だった。


「忌々しい…!」


 イーグリステリアは肩を押さえ粘土細工をくっつけるようにして傷を塞ぎ、憎悪の顔でラングを睨んでいた。睨み合いを続ける両者を確認し、ツカサはさっと周囲を見渡した。

 広いエリアだ。周囲で蠢く肉壁はそのままだが、ここは特に脈動、いや鼓動の音が大きい。イーグリステリア側の中心部というのは確実だろう。だが、ここにいるのはイーグリステリアだけだ。美しさはそのまま、セルクスに斬り落とされた左腕もそのまま、だが以前よりもはるかに疲弊しているのがわかる。ダンジョンから奪う栄養が、自分を保つためではないというのがはっきりとわかった。ヴァンの予想は大当たりのようだ。では、その栄養の先はどこにいるのか。

 ツカサが探る時間を稼ぐようにラングが双剣を振り、手に馴染ませ、悠々とイーグリステリアに対峙した。


「なかなか熱烈な歓迎だった。それでも、私の足を引き留めるほどではなかったがな」

「忌々しい、なぜ生きているのよ! ただのヒトのくせにもう一度私の前に立つなんて! よくも私の片割れを殺したわね! あれもお前でしょう!」

「ほう、さすがに片鱗の消滅には気づくか」


 はん、と鼻で笑うのは怒らせるためだ。ツカサはじっと【鑑定眼】を開き、音を辿り、探り続けた。


「なんで邪魔をするのよ、少し私の一部になって、それからもう一度創りだしてあげるっていうのに、なぜ抵抗するの」

「逆に、なぜ受け入れられると思うのかがわからない」


 天井、壁、床。鼓動の位置を耳を使って確認し、床のさらに奥を覗いた。


「どういう意味よ」

「お前がこの世界を奪おうとしているのはなぜだ」

「うふ、あはは、なぁに時間稼ぎ?」

「いいや、違う」


 いた、ちょうどイーグリステリアの足の下、もっと奥。ツカサはつん、とラングのマントを引っ張って知らせた。ラングは頷きも返さなかったが通じているだろう。

 ラングはゆるりと双剣の片方を差し向けた。


「パニッシャーとしてこの手で仕留める相手へ、最期の言葉を尋ねているだけだ」

「殺せるとでも」

「事実、私の剣はお前に届く」


 つい、と剣の切っ先で指された左肩にイーグリステリアの表情が歪む。


「いいわ、ここで食べてあげる。次こそ、全部」

「質問に答えろ。お前を殺すからには、その言葉も覚えておいてやるつもりだ」


 ゆら、とラングが揺れた。すーはーすーはー、呼吸は会話の最中にも入っていた。すぅっと体が動いて、一瞬の瞬きの間にイーグリステリアに接敵していた。魔法障壁が意味を成さないことはイーグリステリアもわかったのだろう。魔力でこの空間を埋めていても、器用に魔法障壁を張ってこの男を守る存在(ツカサ)がいる。【変換】を持つ者だ。その体を捕らえてやろうと壁から腕が何本も飛んできた。

 ツカサはすぅ、ふぅ、と呼吸をして冷静でいることを心掛けた。水のショートソードに魔力を込め、壁から生える腕を水刃で斬り落とし、ラングに近寄らせない。こちらへ向かってくる腕も同じように斬ってやった。ツカサを体内に引きずり込もうという魂胆が、イーグリステリアの焦りから透けてみえた。ならばそれを的確に排除、抵抗することでさらに焦らせることができるはずだ。

 足元から腕が生え、足場を失いそうになったのでマール・ネルの力を借りてそれを封じた。


「忌々しい、忌々しい、忌々しい、忌々しい!」


 ラングの剣から自らを守るように壁から床から腕を生やしてそれを盾にし、イーグリステリアはどんどん下がっていく。一定の距離を追いかけるとラングはすぐさまツカサの傍に戻る。ツカサの魔法障壁の密度と、相手が誘い込んでいることに気づいているからだ。

 ううぅ、と美しい女が地団太を踏んで、それからゆっくりと目が据わった。

 ぺたり、ぺたりと歩いてこちらへ向かってくるイーグリステリアの様子は先ほどまでとはまた違う。冷ややかな空気が溢れ出ていた。少女っぽさの残る様子から、覚悟を決めた女の顔になる。

 手強くなったぞと思った。あれはエレナやモニカで見たことのある顔だ。女は覚悟が決まると厄介、いや、強いのだ。


「忌々しい…、私の手のひらで慈悲を受け、私の指先一つ、涙一つで死んでしまう虫けらが、我が前に立とうなどと」


 再びラングが床を蹴った。


「許されることではない!」


 床から電信柱程度の太さの柱が飛び出してきてラングの軌道を邪魔する。それにも反射で回避、ラングは双剣を振り抜いた。確かに斬ったはずの首は風船を弾いたようにふわりと飛んでから床に落ち、ずるりと同じ女が別の位置に現れた。手応えがなかった、抜け殻か。全体を大まかに確認をすれば髪が床と繋がっていた。ラングはそれを刈らねばならないと判断した。ここはこの女の懐なのだ、一つずつ潰してこそ勝機を手繰り寄せられる。丁寧に相手を仕留めろ、という育て親の声が聞こえた。

 双剣をしゅうっと鞘に納めた。得物を変えるのか、とツカサは思い、マール・ネルを構えた。封じるならば隙を突いてほしい、この(かいな)の届く距離へ、と声が囁いた。

 イーグリステリアは再び美しい笑みを口元に描いた。


「世界を奪う? いいえ、違う、私は取り戻すだけ」


 ついと振られた指先に従い、柱がいくつもラングとツカサを襲った。ぐねぐねと曲がりながらやや追尾をしてくるそれから、ツカサはラングと一定の距離を保って動き、回避し、マール・ネルを差し向けた。開幕、イーグリステリアが立っていた中心地まで行きたかった。ちらりとその場所を視線で示したが、見えているだろうか、通じるだろうか、いや、大丈夫だと信じる。


「失いたくないんだもの、私の世界を、私のものを。私の世界の命が渡ったなら、その先で用意してあげなくては。たくさん、そういう願いを、想いを、私は食べたの、もらったの」


 ショートソードを振って柱を切り裂く。水刃は通る。数が多いだけだ。それが嫌だった。イーグリステリアを見失ってしまう。場所の距離感も狂えば辿り着きたい場所がずれてしまう。


「だから、私はリガーヴァルの敵となってでも、ここに楽園を取り戻すのよ! 私の世界の願いを、想いを叶えるのよ!」


 楽園か、とツカサは戦いの最中、頭のどこかで冷静だった。

 司は不幸ではなかった、恵まれている方だった。安心と安全、多少の不満はあれど満ち足りた生活、穏やかな日常。今も自分が大事にしているものの大半は故郷で享受していたものだ。

 だが、図々しくも考える。自分の身の回りを見渡してみても、世界規模で見てみてもそれは楽園だっただろうか。テレビの中で見ていた紛争地域。毎日どこかで誰かが死んでいて、自然災害は数えきれず、犯罪は横行し、誰にとっての楽園なのか。

 どこでだって人は生き、そしていつか必ず死ぬ。それは故郷の世界(イーグリステリア)であっても、この世界(リガーヴァル)であっても何一つ変わらない真実の一つだ。

 誰かにとっての楽園ならば、それは誰かにとっての地獄でもある。

 俺は恵まれている、とツカサは思う。転移した先で保護もされた。紆余曲折あったが腕の良い冒険者とともに整った環境で旅ができた。強くなれた。何度も考えたことだが、それがなければ酒場を継ぐか、マナリテル教の一部の者たち同様、よすがに縋っていただろう。

 運がよかったのは当然のことながら、それでも目の前に現れた道を一つ一つ選んでここまで来たのは自分の努力だ、覚悟だ。生きることの責任を背負いながら、ここまで来たんだ。


「失ってたまるか」


 強くイーグリステリアを睨み据えた。


「誰かに与えられる楽園なんかより、俺は自分の足で辿り着いたこの場所が、鍛えて身につけた技術が、出会った人たちが、ただの日常が大事だ! 奪われてたまるか! 失ってたまるか! 俺が俺であることの覚悟を、なかったことにされて、たまるかぁ!」


 ここまで来るのだって大変だったのだ。その苦労をなかったことにされてたまるか。

 ツカサは魔力の動きを感じ取り、柱が出てくる位置に向かって水刃を放ち、魔法障壁で壁をつくり、ラングが走れる道を創った。理の属性だからこそ色濃い魔力空間に置かれた、別の魔力の足場や道を感じ取れるのだろう。ラングはツカサの創った道を信じ、真っ直ぐに駆けていった。


「私の楽園は誰にも奪わせない!」

「その言葉、そのまま返してやろう」


 淡々としたラングの声が鼓動の中響いた。足場を蹴って体を捻り柱を避け、きらりと糸が走った。キュイ、キキッ、とあちこちに引っ掛かり、一瞬ピンと張ったのが感じられた。

 ラングが一度床に足をつけ、またツカサの魔法障壁の足場を蹴って飛んだ。右に、左に、イーグリステリアの視線を翻弄し糸を張り巡らせていく。


『フィオガルデ国属レパーニャの街、パニッシャー・ラングが汝へ告ぐ』


 イーグリステリアにとって有利な状況下だというのに、ラングは静かな余裕をみせて言った。


時の死神(トゥーンサーガ)の依頼を元に、友のため、弟のため、死神としてお前の敵となる』


 文字通り宙を舞うその動きが、昔両親と見に行ったサーカスを思い出させた。ちかり、力の腕輪が輝いた。


『己の生き方の責任を、その命を以て贖うがいい』


 ラングが両腕を手綱を引くように寄せれば、ギュィ、と何かが引き絞られる音がした。バッと柱が細かい網目状に斬れてその波がイーグリステリアに向かっていく。


「何を言っているかわからないわ、神の人形め!」


 イーグリステリアは不敵に笑い、先ほど同様、抜け殻となって別の場所へ逃げようとした。それを一瞬だけ()()()。マール・ネルがツカサの意思をそこに反映してくれた。そして同時、ツカサは辿り着いた。視線がラングに向いたからこそ、予想通りツカサは自由に動けた。血走った目がツカサを捉え、叫んだ。


「もういい! 生まれなさい! 私のために戦いなさい! 母を助け、そして神になりなさい!」


 ゴグンッ、と鈍い音がして何かの身震いを感じた。

 ツカサは慌てずにマール・ネルの指示通り垂直に持ち上げた杖を、コォン、と音を響かせて床に突いた。ビタリと音が止み、意図に気づいたイーグリステリアの目が見開かれ、やめろ、と続くだろう声が悲鳴になった。

 くん、とその体が鋼線によって阻まれ、肉に食い込んだ。思わず下がったイーグリステリアの背後に深緑のマントが現れ、ぐっと髪が握り締められた。ギロチンを受ける罪人の髪が切られるように、まず斬り払われた。そして腕をしならせて戻された腕が確実にその首を刎ねた。


『パニッシャーはお前を逃がさない』


 それはいつもラングの腰、背中側にある短剣だった。ジョーカーの短剣、ラングが師匠から譲り受けたものの一つ。

 一撃必殺の効果がついているその短剣は、ラングの腕の延長線、体の一部となって真横に振り抜かれ、細い首を斬る確かな感触と手応えを掌に伝えた。ぐらりと揺れて倒れる肉体すら、ラングは体を一回転させて鋼線を引き、切り刻んだ。カシン、と先端の小さな取っ掛かりが装備に収納された音がした。徹底的に殺す姿勢にラングの在り方を見た。手に持っていた首がどさりと落とされる。それでも意識があるのはそれがヒトではないからか、それとも。

 目を真っ赤に染めてイーグリステリアはラングを睨んだ。


「許さない、許さない。私は私の世界の願いを、私の世界を取り戻したかっただけなのに」

「その世界を、俺は要らない」


 ツカサの声に女の目が必死に横を見た。マール・ネルとそれを封じたまま、ツカサは女の頭を真っすぐに見ていた。


「お前に与えられなくても、俺は自分で生きる場所を選べる。ここで生きる、ツカサ・アルブランドーとして」

「お前は恵まれているだけなのよ、他の同郷の民がどうであったか、知っているでしょう」

「だとしても、それはそれで、その人の選択の結果だ。行動には責任を持つべきだ」

「お前のように生きられる者は少ないのよ…!」


 ついにぐずりとイーグリステリアの首が融け始めた。


「あぁ…! 消えていく、消えてしまう、けれど私は消えない。私の想いを、願いを引き継いでくれる子がいる限り、私は存在する」

「お前の行動の結果を子に背負わせるな」


 ラングの声に微かな怒気が混ざっていた。逆手に構えたジョーカーの短剣が上に持ち上げられた。


「哀れな女だ。人を食らいすぎて勝手に人の想いを背負った。終わらせてやる」

「終わらないわ、あの子が必ず」

「そちらも終わらせる」


 ドッと一切の躊躇なく短剣はイーグリステリアの額に突き立てられた。


『パニッシャーはお前を逃がさないと言ったはずだ。お前の想いの欠片も、願いも、全てを逃がさない』


 どろりと融けて消えたイーグリステリアの最期は美しいとは言えなかった。ツカサはまず一つ難敵を排し、ラングが立ち上がるのを待った。短剣は腰の後ろに戻され、ラングは手のひらを眺めて呟いた。


「…神を殺した感触がない」

「どういうこと?」

「人を殺したかと問われればそれも違うように思う。精巧な泥人形を相手にしたような…、違和感がある」


 ツカサはマール・ネルをぎゅっと握り締めた。ラングの勘や直感を信じるならば、既にイーグリステリアは抜け殻だった可能性が高い。しまった、もしそうだとしたならば、確かめる方法はあった。


「俺も攻撃すればよかった」


 加護がなくとも攻撃が通れば、それはイーグリステリアが神ではなくなっている確かな証拠になったはずだ。魔法障壁があったとしても、今のツカサであれば一撃通すことはできたかもしれない。検証が甘かった。そして二人の視線が足元に向かう。

 神である全てを渡したならば、こちらが本命なのだろう。


「もうひと仕事だ」

「そうだね」


 ぶるり、マール・ネルが震えた。




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