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【書籍化】処刑人≪パニッシャー≫と行く異世界冒険譚  作者: きりしま
終章 異邦の旅人

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4-26:合流は手掛かりと共に

いつもご覧いただきありがとうございます。


「それで連れてきたというわけだね、ううん、なんとも」


 ようやく合流できたことを喜ぶ間もなくヴァンは頭を抱えて呟いた。

 白いマントの中、もぞもぞしては眠そうな声を出す少女らしい物体にツカサは興味津々だった。少女が保護された理由を考えれば不謹慎であることは重々承知の上で、ラングが頑なな態度をとる理由が知りたかった。


 隠れ家のリビングは大人があちこちに座っても余裕がある。改めて軍議向けの広さを確保しているのだと思った。

 椅子が足りないのでツカサは布を敷いて床に座れる場所や冬支度で買った折り畳み式のものを出そうと考えた。結局シルドラが倉庫から椅子を持ってきてくれたので不要にはなったが、子供もいるので布はそのままにした。

 全体を見渡せるところにヴァンが座り、昨日から今日までの報告を済ませたアルとラダンとクルドは顔を見合わせ、ヘクターはラングに手を伸ばす子供を必死になだめていた。ロナとマーシは状況についていけず苦笑を浮かべるばかりだ。

 エーディアとシルドラは一気に増えた人数と状況に食事を作る余裕はないと判断し、夕飯の買い出しに出てくれた。未だ脱出を決めかねる人が多く街の様相はあまり変わっていないため、食事の屋台などは通常営業をしている。


 正式な報告は後程、まずは概略だけ聞き、今に至る。

 ヴァンの視線はラングに手を伸ばしヘクターの腕からじたばた逃げようとする白い塊と化した少女に向いた。


「マフィリカでどういう状況だったのか、話せる人を失ったのは痛い。けれど、一人でも生存者がいたというのは女神ミヴィストの思召しか、…それとも試練か」


 ヴァンの呟きにラング組から即座に回答はない。ツカサは腕を組んで沈黙を守っているラングに首を傾げた。


「ラングはもう大丈夫なの?」

「問題ない、耳も治った」

「それならよかった、けど、あの爆発は精霊の悲鳴ってかたちでラングのところまで届いたんだね」

「そのようだ」


 今後、精霊の悲鳴にはどう対応するつもりなのか。ヴァンは考え込んでいるらしく声をかけ難かったのでツカサはアルを見た。統治者(オルドワロズ)家に伝わる何かはないのだろうか。


「アルは精霊の悲鳴について知ってる?」

「いや、知らない。俺たちもラングに何があったか正しいことはわからないし、一応言っておくけどあの子も保護してきたラダンの説明がすべてだ」

「そうなんだ」


 ツカサは肩を竦めるアルに頷き、じっと腕を組んだままのラングに視線をやった。そのタイミングで子供が大声で泣き始め、ヴァンは苦笑を浮かべヘクターにゆるりと促した。


「ラングに渡してあげて、よく懐いているね?」

「私が一番臭くなかっただけだろう」


 白いマントを引きずって駆け寄って来る子供を仕方なさそうに両手で持ち上げぶらりとさせる。膝に乗せないでそのまま持っているのは子供に負担がかかりそうで、ツカサが手を伸ばした。意図を察してラングが渡せば少しぐずったが、膝に乗せると文句を言いたげな声のままで大人しくなった。

 首を傾げているヴァンにラングは椅子に座り腕を組み足を組んで、やはり子供を拒否する姿勢で嘆息した。


「女児は鼻が利く、むさ苦しい男どもの臭いなど苦痛でしかないだろう」

「あぁ、ラングは浄化の宝珠があるから常に身綺麗だし無臭だもんね。そっか、そういえばそっち側にはお風呂を用意できる魔導士が…、確かにちょっと」


 思わずスンと鼻を鳴らしてしまったのは申し訳なかったが、エーディアのいないこの場で言われれば気になって仕方ない。それぞれが自分の腕を服を確かめる。


「やめろよ嗅ぐなよ、気になるだろ…」

「服もそのままだしな…」

「あっしも臭いですかね…」

「ちょっとは気を使え、おじさん気になるご年齢なんだぞ、お年頃なんだぞ」


 気もそぞろ、真面目な会話をする雰囲気でもなくなりラングが言った。


「ツカサ、中庭に風呂を用意して一気に入らせろ。そうすればそのガキはラダンに懐く。保護したのはラダンだからな」

「わかった、とりあえずお風呂は用意してくるけど、ヴァンはそれでいい?」

「この状況じゃ先にそうしたほうがよさそうだね。ラングは僕とここでそのまま引き続き報告を頼むよ。ロナ、マーシ、君たちにも軍議前にもう少し詳細を説明したいからここにいてね」

「はい」


 もはやぐだぐだの空気だ。

 ヴァンに言われ、ラングは軽く肩を竦めてみせた。ロナがツカサに軽く手を振り、それをうけて頷きを返した。

 ラングとヴァン、シェイとアッシュ、【真夜中の梟】をそのまま残しツカサは子供を伴い中庭に出た。

 井戸横に土風呂を造り湯を用意すればアル、ラダン、クルド、ヘクターの四名は早速汗を流し始めた。土魔法で手桶も作ってやればコの字型で外から見えないとはいえ豪快に湯を使う。何度か足し湯をすればそれもまたどんどん減っていく。子供は目の前に現れた風呂に楽しそうにしているが、いい加減白いマントを脱がせてやってもいいだろうか。


「魔法ってのは便利っすねぇ! あっしは感動しちまいやしたよ」

「ツカサ、石鹸ある?」

「あるよ、はい」

「ありがと!」

「俺にも貸してくれ」

「あっしにも是非」


 石鹸が全員に渡りハーブのいい香りが湯気に乗るようになってきた。汗臭いというか男臭いというか、エレナやモニカ、アーシェティアに気を使っていた身としてはやはり気になるにおいだった。いずれ自分もそうなるのかと思うと気をつけたい。年齢というのはどう足掻いても逃れられないものだ。

 ツカサは子供が誤って湯に落ちないよう水の球を魔法で出して遊んでやりながら尋ねた。


「東側はどうだった?」

「まぁラングも報告してるだろうし、こっちはこっちで話すか」


 全身を洗ってさっぱりしたアルが湯に浸かりリラックスの息を吐き、話し始めた。

 まずはヘクターが背景をさらりと描き、大雑把なアルの色塗りに対しラダンの補足は緻密な線画と陰影を足して、クルドのおまけは印象を残す結果となった。組み合わせによって出来上がるものの違いに驚きながら、ツカサは相槌を返した。


 ツカサより先に出立した一行はヴァンの指示通り東側を調査することになったそうだ。

 ヘクターの報告は商人からの情報が元になっていたらしい。各地を移動する商人は足が速く耳も早い。異変にいち早く気づくのも商売繁盛と身を守るために大事なアンテナだ。ヘクターは各地を歩き回らなくともそうした商人から情報を仕入れるコツを知っているのだという。

 そしてその能力こそが本人は知らなくとも王太子レジストに雇われる理由でもある。

 ヘクターは長湯をしない質らしく三人と違ってさっさと風呂を上がり体を拭き綺麗な服に着替えながら話した。


 ウォーニンの港から逃げるようにスカイへ来た商人は言った。港の大きさにそぐわない立派な船が入港していたと。

 ちょうど商人は取引を終えたところで残りはしなかったが、その後大きな取引の噂もなく不思議に思っていた。ウォーニンの別の街で他の商人に噂を尋ねたところ、港に大量の死体が残されて滅んでいたという。海賊の仕業ならば自分も殺されていただろうことから、いったいなにがあったのか気味が悪い事件だとぼやいた。


 ウォーニンとスカイの国境を行き来して商売をしてきた商人は言った。どこかのお忍びの王女がスカイに入ったようだと。

 王族がお忍びで他国に入るなど聞いたこともなく、スカイの王太子の婚約者かとも思ったが、だとしたらウォーニンから来るのはおかしい。婚約者が船をつけるならばスカイでいいだろうと興味本位で真相を確かめにいったらしい。そこで何かの宗教らしい風体の者たちに阻まれ、王女ではなく教祖なのではないかと思い至った。敬虔なミヴィスト教徒の多いスカイで問題に巻き込まれたくなくて商売の場所を変えたという。


 スカイの南側で商売をしていた商人は言った。いつも品物を売りに行っていた村に人がいなくなっていたと。

 盗賊や山賊に襲われたにしては被害が少なく思い周辺を見て回り、最近掘って埋めたらしい土をみつけた。怖くて掘れなかったが街の門兵やギルドに報告はしたので調査がされるだろうという。


 スカイ各地に支店を構え商売をしている商人は言った。人探しをしている連中がいるらしいと。

 【渡り人】が多いところはどこだと尋ねる者と、変な風貌の男を探す人々がいるという。イーグリスはつい最近反乱が鎮圧されたところだが、また何か問題が起こるのではないかと行くのを悩んでいるという。


 ヘクターの情報は大雑把だが大事なところを押さえていた。

 ツカサはヴァンから聞いた話と照らし合わせて間違いないだろうと思えた。いや、あの情報もヘクターからだとすれば相違ないのは当然か。


「ついでに言いやすとね、変な風貌の男、要は旦那のことでしょうが、随分熱烈に求められてるようですぜ」

「はく製にしたいって言ってる感じ?」

「はく…?」

「なんでもない」


 ツカサは子供が横で転んだので抱き上げた。子供の扱いはわからないが、お湯が冷えたら風邪をひくかもしれない。それよりもいつの間にか白いマントがびしょ濡れで重かった。


「泥だらけになっちゃったな、あとでマント洗わないと。わぁ、すごい可愛い子じゃん」


 マントを外してやれば愛らしい少女が現れて驚いてしまった。マントの中までびしょ濡れで着替えをさせなくてはならないと思ったが、子供用の衣服など持ち合わせていない。

 少女はきょろりと周囲を見渡してツカサを見ると泣きそうな顔になり、着替えたラダンを見つけてそちらへ駆け寄る。ひょいと抱き上げてきちんと抱っこをする姿にホッとした。

 ラダンは少女を眺めた後ツカサを振り返った。


「ツカサ、この子を」

「みんなお風呂は終わった?」


 ヴァンが窓から中庭に声をかけ今切り出そうとされていた言葉は止まり、そちらに視線が集まる。


「大事な話が多い、そろそろ戻ってきてほしい」

「わかった」

「この子どうしよう、服濡れてるよね。魔法で乾かす?」

「あぁ、出来ればそうしてほしい。…まだ服も買ってないからな」


 ツカサは火と風魔法を器用に使ってドライヤーのような魔法で乾かした。少女はびっくりしていたがラダンの首にぎゅっと抱き着いてツカサとは視線を合わせなかった。

 中庭の風呂を片付けて再びリビングに戻ればヴァンとラングが何かを話していて、一行が入れば会話が止まる。

 ヴァンはじっと少女を眺め、不躾に頭の先から足の先までを確かめた。


「なるほど、こういう風貌なわけだね。とりあえずみんな空いているところに座って」


 少女を抱っこしたラダンはソファに広く座り、アルはテーブルに添えてあった椅子に、ツカサはその隣、クルドは壁に寄り掛かり、ヘクターは出口のほうに立った。

 上座にヴァンがいることは変わらず、横にシェイとラング、その後ろ側にアッシュが控え、ロナとマーシは居心地悪そうに椅子に座っていた。

 全員が一息ついたのを確認してからヴァンが声を出した。


「まずは無事に合流できてよかった。あちこち見て回ってもらって得た情報もあれば、こちらで早速攻撃を仕掛けられたりといろいろあった。話したいことは多いのだけれど、最初にはっきりさせないといけないことがある」


 ぴたりと視線はラダンの膝で座る少女に向いた。


「さっきラングと話していたんだけど、その子、イーグリステリアに瓜二つらしい。その子が大人になった姿が、イーグリステリアの姿だとわかった」

「え、じゃあ、この子がイーグリステリアでもあるの?」

「あながちそれも間違いじゃないと思う」


 ヴァンはいつものように紙を取り出してがりがりと書き始めた。描かれたのは大きな丸を一本の線で分けた図だ。片方に斜線を引いて差し出される。


「本来、理の神(イーグリステリア)はその名のとおり理に属する神だ。でも、今イーグリステリアは魔法の女神を名乗り、魔力に属しているようだ」

「理と魔力は相反する、んだよね」

「そのとおり。様々な加護を、力を世界の人々に分けたとして、決して人に渡せない力があったはずなんだ」

「理の力だ」


 ラングが言い、ツカサは少し考えた後少女を見た。


「もしかして、その子がイーグリステリアの理の力の部分だって言ってる?」


 ヴァンの首肯、ラングの沈黙。皆が皆隣同士顔を見合わせ言葉の続きを待った。


「この推測が正しいかはわからない。けれど、僕はその子に近いものを感じる。だからこそ最初ラングも気にかけたんじゃないかな」

「あぁ、率先して世話しようとしてたしな」


 アルが手を叩き頷く。確かに、ラングは顔を見るまでは親切だった。


「そこでツカサ、シェイ、君たち二人にこの子を視てほしい。どこまで話せるかわからないし、配慮をするならば家族を亡くしたばかりだからね」

「わかった」


 先にシェイが答えじっと少女を見つめた。ツカサもそちらを見て【鑑定眼】を使う。

 ラダンの膝で大人しくしている少女は隠すこともなくツカサに見せてくれた。


【セシリー・マフィリカ(3)】

 全ての理の神(クリアヴァクス)の慈悲


 見えたことを言葉に出せばヴァンはふぅむと腕を組んだ。


全ての理の神(クリアヴァクス)の慈悲は…娘への最後の慈悲ってでる」

「とはいえただの人の子だ、神ではないな。魔力はないが申し子であるとか、そういうのもなさそうだ。ハッ、課せられることのないようにか? だから神は嫌いなんだ」

「…この子がイーグリステリアの理の片鱗であることは確定、か。たまたま()に生まれただけなのか、何代目か…」

「じゃあこの子、狙われるのかな」

「それはどうかな。この子の在り方がどうかにもよる」


 ヴァンは立ち上がり少女、セシリーに近寄るとそっと手を伸ばした。柔らかい子供の髪を撫でてやればラダンの腹にぎゅっと顔を埋めて隠れてしまった。シェイはゆっくりと目を瞑って尋ねた。


「ツカサ、お前、理にとって魔力が何かは知っているか?」


 問われた意味を理解はしても、知らなかったので首を横に振った。少しの間をおいてシェイは静かな声で話した。


「穢れだ」

「え!?」

「理の力のみで世界が回るなら魔導士なんぞ生まれていない。スカイに魔導士が多いのは理の力が強いからだろ」

「うん、そう聞いた」

「それは理の力が、精霊がいるからこそ穢れも生まれるからだ」


 言っている意味がわかるようでわからない。ツカサは素直に首を傾げ質問を重ねた。


「もう少し説明が欲しいです」

「あー、例えば、風呂に入るだろ、そこで体を洗う。そうすると汚れが落ちるな?」

「はい」

「精霊にとってその風呂と同じ行為は、一例にすぎねぇが、水なら流れれば、大地なら草木を生やし、火なら燃えれば、風なら風が吹けばそれだけで汚れが落ちる。いつからかその穢れを身の内に収め、魔力に変換し、魔法として顕現する者が現れた。それが魔導士の始祖だ」


 横を見ればアルが同じ顔でシェイを見ていた。ぽかんとしているのが自分だけでなくて安心もしたが、その話の意図と目的がわからずにもう一度首を傾げた。

 ラングが顎を撫でてふと呟く。


「なるほど、魔力がいずれ理に還るのはだからなのだな。汚れだ穢れだとはいえ、元は理から零れたものということか」

「そうだ」


 以前、精霊に言われたことがあるらしい。魔力は理に還るがその強さによって残る日数が違う。精霊は魔力の強い場所は見えない、魔力の強い魔導士も印がなければそこだけ形や色が抜けたようになって見えないのだという。

 彼らは当初、この世界に渡って来たラングが見えなかった。魔力の才あるツカサがそばにいたからだ。

 シェイはそれにも肯定を返し、続けた。


「理の連中は【穢れ】を見えないようにつくられている。その穢れを循環させる魔導士を見下し、ヒトとも思っちゃいねぇ」

「もしかして、その考えが人に影響を及ぼしていたことないか?」


 アルがエルキスを思い出して尋ねればシェイは目を開いてそちらへ頷いた。


「あぁ、そうだ。向こうの大陸(スヴェトロニア)なんかじゃ顕著だったようだな。だからこそマナリテル教の温床にもなった。今でこそ俺がヴァンの親友だ仲間だというから精霊の奴らも態度を改めちゃいるが、最初は酷いもんだったぜ?」

「それもあって、僕はアルが稀有な存在だって言ったんだよ。魔力を持っていてもウィゴールが友達と呼ぶなんて、とね」


 ツカサとアルは何度目か、顔を見合わせて目を瞬いた。


「魔力が精霊を潰すとか、瀕死にさせるとか、穢れだからなんだ。よく漫画とかラノベでこう、うん、イメージついた」


 穢れという言葉から聖女という存在まで想像が飛んで、そうして祓われる良くないものを想像し、ツカサは自分の中で納得がいった。隣で置いていくなよ、とアルの情けない声がしたが一旦置いておくことにした。

 ラングが真意を尋ねた。


「それで、お前は何が言いたい。魔導士の悲しい歴史を伝えたいわけではあるまい。回りくどい話は嫌いなんだがな」

「あぁ、悪ぃ、要はイーグリステリアの在り方がわかったってことだ」


 シェイは言葉の続きをヴァンに譲った。


「イーグリステリアはただこの世界で生きるだけなら、いずれ死に、理に還っただろう。それを防ぐために、自らを保つために魔力や人の命を取り込んでいた。そして人の身でありながら神への階段に片足をかけた」


 ぐっとヴァンが拳を前で握り締めた。


「イーグリステリアがそれを成すために、何か間に触媒があるはずだ。それがわかれば階段から降ろさせることができる」

「まさか、それがこの子だとは言わないよね?」

「言わないよ、むしろこの子は保護すべきだろう。向こうのイーグリステリアは全ての理の神(クリアヴァクス)に捨てられた【穢れ】、こちらはほんのわずかな父性により残された【娘】、価値が違うよね」


 酷い言い様だが神にとってはそうなのだと思うとやりきれない思いもあった。それを口に出したり感想を言うつもりはない。


「ただ、理がこちらにまとめられているからこそ、向こうは魔力だけしかないとも気づけた。これは僥倖だよ。向こうに理もあるのだとしたら本当に厄介だった」

「どう状況が変わったのか、いまいちわかってないんだけど」

「つまりだ」


 ヴァンはゆっくりと振り返ってラングに微笑んだ。


「多くの命と魔力を取り込んで半神に成りあがったために()は手出しが難しい。けれど、イーグリステリアは()()()じゃない。神を殺す駒である、()の申し子の規則が当てはまらない可能性が高い」


 ハッとツカサはラングを見た。


「ラング、君に課せられた神殺しは僕らでも成せるかもしれないということさ」




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