4-3:【自由の旅行者】
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シャワーと着替え、朝食を済ませて応接室に向かえば、ソファで横になるヴァンと各々自由に過ごす一行と再会した。シェイはちらりとこちらを見て再び目を伏せ、アッシュは地図を見ていて、ラダンは本を閉じ、クルドはクッキーを頬張ったところだった。
応接室に入ってきたモニカ以外のメンバーにアッシュが苦笑を浮かべ、しーっと唇に指を当てた。
「悪い、起きるまで寝かせておいてやって。あれで忙しい軍師殿だから、今回時間を作るために十日はまともに寝てないんだ」
「そんなに。どのくらい時間作れたんですか?」
「十五日くらいはあったはずだ。なるべく休ませてやりたいはやりたいんだが、そっちの聞きたい内容と重さにもよるからな」
クルドががりがりと頭を掻いて言い、とりあえず茶ぁ淹れるわ、とティーセットに向かった。
「一先ず再会を喜ぼう、変わらぬ四肢の数に戦女神ミヴィストへ感謝を」
ラダンが胸に手を当てて微笑み、変わらぬ四肢の数という言い回しに苦笑いを返してしまった。戦女神を奉ずるだけあって再会を喜ぶ挨拶もなかなかに物騒だ。それぞれが握手をしたり軽い言葉を交わしている間にクルドがお茶を淹れ終わり全員へ行き渡った。上手に淹れてくれたらしい、とても良い香りがしている。
「早速始めよっか。とはいえ、何を聞きたくてヴァンを呼んだのかもわからないんだけどさ」
議長はアッシュが務めるらしくとても軽いノリで始められた。ラングはまず紅茶を一口飲んで美味いと伝え、クルドがそれに笑顔で返した。ティーソーサーにカップを置いて防音の宝珠を起動し本題を切り出す。
「私が【渡り人】であることは紫壁のダンジョンで伝えたと思うが、帰る方法を探している。そのために【自由の旅行者】という旅記を書いた人物を探していた」
「言ってたなぁ」
「内容から察するにお前たち五人とも世界渡りをし、戻っているだろう。どうやったのかが知りたい」
「あー、これ、ヴァン起こす?」
「いい、俺が話す」
ソファに深く寄りかかって目を閉じていたシェイが金の目を覗かせた。基本的によく喋るのはヴァンとアッシュとラダン、クルドはツカサと同じように感想を口にし、シェイは寡黙といった印象を持っている。ツカサがハミルテで会話した際も必要最低限、ポイントを押さえた話し方をする人だと感じた。
シェイはゆっくりと体を起こして膝に肘を置いた。
「俺たちが世界を飛ばされたのは神の手によるものだ。元の世界に戻ったのも、神の手によるものだった」
「どの神だ」
「その前に世界の話をさせろ。紙」
「はいはい」
知っておくべき前提がいくつかあるようでシェイはアッシュに紙とペンを出させた。
「だいたいの説明だが、大枠がわかればいい。信じなくてもいいが、世界というのはいくつもが独立して出来ているらしい。全ての理の神と呼ばれる大本の神が一人、それが子を創りだしている、というのが基本だ。俺たちは大本の神を全ての理の神と呼称している」
しゃっしゃっと丸が五個ほど描かれ、それをさらに丸で囲いペン先をとんと置く。五個の丸が子、それを囲う丸がクリアヴァクスということだ。
「そしてこの世界の名は子の一人である理の神。ツカサの故郷は理の神」
「リガーヴァルと、イーグリステリア。神様の名前がそのまま世界の名前なんだ、知らなかった」
「知る由もないだろ。ラングの故郷の名前は知らないが、同じようにその世界の理の神の名がついているだろうさ」
それで、と質問を重ねられる前にシェイがペンを走らせる。
「世界は気まぐれに動いて、時々重なる。そうした時に人は渡ってくるわけだ」
アーサーが穴に落ちたのはそのタイミングだったのだろうか。シェイの手元では丸がくっついたり重なったり、段々と何が何だかわからなくなってきていた。ぼんやりと絵が下手だなと思った。
「本来そうした世界の接触でしか人は渡れない。それを無視できるのが理の神連中だ」
「ではお前たちが世界を渡ったのはリガーヴァルの力なのか」
「そこが少しややこしいんだよな」
アッシュが唸って腕を組んだ。ツカサは要領を得ずアルと顔を見合わせる。わからないのが自分だけでないことに安堵した。
「なんか、どうも別の世界に飛ばすことは出来ても自分の世界に呼ぶことは出来ない、ってのが規則らしくてさ。ざっくり聞いただけで俺たちもそうなんだなぁ程度に思ってるんだけど、何でもかんでも呼び寄せられたら理が乱れるからとかどうとか。そんなこんなで、俺たちをリガーヴァルからぶっ飛ばしたのはイルって理の神だったんだ。リガーヴァルを乗っ取るのに邪魔だからって理由でさ」
「乗っ取る?」
「詳しいことは知らないんだよ、神様がそうやって言ってたってだけで。なんか、もう一つの世界を手に入れて、好きにしようとしたって。管轄が増える、みたいな感じらしい」
「邪魔っていうのはどういう」
「ヴァンが理の申し子だったからだ」
シェイの言葉に更に訳がわからなくなっていく。新事実をあまり詰め込まないで欲しいのだが、どうすればいいのか。混乱するツカサの横でラングはペンを取り出して別の紙に今まで出た単語を書きだした。まとめてくれるらしい。
「続けろ」
「理の申し子は、精霊に誰よりも慕われる人間のことだ。まぁちょっとした加護だと思えばいい。恐ろしいのは時により神殺しを課される人間だって部分だ」
「神殺し、だからイルって神様はヴァンさんが邪魔だった?」
「そうだ。だから別の世界に追いやった。その場で殺せばいいものを、わざわざ関係ない世界に飛ばして、故郷が滅びるのを楽しめとか言ってたな」
「私が渡った理由とは随分違うようだ」
「あんたはどうやって渡ったんだっけ? 聞いたっけ?」
「遺跡の最下層で碑石か何かに触れたのだと思うが、気づいたらここへ」
「正規の手順って奴だな」
シェイはもう一枚紙を出させるとそちらにも同じように丸をいくつか描き、それを線で繋いだ。
「神同士、精霊や人がお互いの世界を行き来出来るように道が創られていることがあるらしい。聞いた限りじゃあんたの言う遺跡はそのための手段だな。俺たちは飛ばされた先で、その世界の理の神に直談判して繋げさせて帰ってきた」
「では、同じようにその道とやらを見つければ、或いは神に道を創らせれば私は戻れるのか」
「多分な」
「こちらに来た際、周囲に遺跡のようなものは何もなかったが」
「同じ場所とは限らねぇし、この世界のどこにあるかも知らねぇ。誰でもホイホイ行き来出来ちまうのも問題だろ」
言わんとすることはわかる。ただ、それが出来るならばラングが戻った後もこちらに来られるだろうし、ツカサももしかしたら行けるかもしれない期待が胸に広がる。
そういえばラングはサイダル滞在中、森の中へ何度か赴いたと言っていた。つまり、ジャイアントベアーを探すのではなく、本来の目的は自分が降り立った場所を調べることだったのだろう。
ふと横から視線を感じてそちらを見遣る。
「ツカサが見たのは赤い光だったな」
「あ、うん」
「【自由の旅行者】で著者であるヴァンが見たのも赤い光、お前たちもそれを見たんだな?」
「あぁ、そうだ。それで飛ばされた」
「では、ツカサは神の力で飛ばされたことになる」
「確かにそうだね。電車から見たのは赤い光だし、気づいたら森の中で、目の前に魔獣がいて」
「世界を渡らせた理由としては、イーグリステリアの消滅が起因だろうが」
そこまで言ってラングは素早く【快晴の蒼】とエレナを見た。
「ラング、どうしたの」
「知っているのか」
何を、と聞こうとしてハッとした。ラングは【イーグリステリアの消滅】という言葉を使った。沈黙の誓いで知る者でなければ話せないことはモニカを前にしたことでわかっている。
それが言えたということはここにいる全員が知っているということだ。
エレナとラダンが頷いて見せた。
「シグレさんから聞いたの。今日の会談に出るなら必要だろうからって」
「こちらも今回のことで一応知っておく方が良いだろうと、王太子殿下より伺った」
「王太子も枠の外側ということか」
「神託が王家に下るからな、当然のことだ」
シェイの言うことも然もありなん。しかしシグレも王太子も用意周到だ。そういった先見の明があるからこそ人の上に立つ者なのかもしれない。
エレナが優しくツカサを見遣って労ってくれる。エレナにも思うところはあるだろうが、大変だったね、辛かったね、と声をかけられないことは有難かった。同情されたいわけではないのだ。
とにかく、これで問題なく会話が続けられる。
「私が戻るためには道を探す必要があるのはわかった。ツカサがここに来たのがイーグリステリアなる神の手によるものだということも。だが、どうにも気になる」
「なにが?」
「理の申し子とはなんだ? 神殺しが課されているとはなんだ?」
ラングの問いに即答する者はいない。【快晴の蒼】の面子はお互いに顔を見合わせ、シェイだけが視線を伏せていた。
「理の申し子っていうのは、呪いみたいなものだよ」
のっそりと体を起こしヴァンが呟く。起き上がったものの目が開いておらず、しょぼしょぼしている。
「ごめん、結構最初の方から聞こえてはいたんだけど、どうにも起きられなかった」
「よく起きれたな」
「頑張ったよ」
目を擦り何度か瞬いてどうにか目を開けたヴァンは差し出された紅茶をまずはゆっくり飲み切った。それから腕を伸ばして体を解す。
「理の申し子っていうのはね、この世界の神、リガーヴァルが気まぐれに自分も子供を持ちたい、と思った瞬間に生を受けた赤子についた祝福なんだよ。運悪く、それが僕だったというわけさ」
「どんな祝福なの?」
「シェイも言ってたけど、精霊に愛されるとか、そういう感じ。もう一つの要らない役割は聞いた通りさ」
思わず視線がラングに向かってしまった。世界神の気まぐれが気になった。
ツカサからの視線は感じているだろうがラングはそちらを見ないまま問いを続けた。
「神殺しが課される、とは、どういう意味だ」
「その言葉の通り。面倒なことに神様っていうのも決まりごとの中で生きているらしくて、神は神を殺せないのさ。身を守るために相手を殺せる駒を得る、それもまた理の申し子の役目というわけさ。一応、癪だけど、擁護すると、殺させるために祝福をしたんじゃなく、たまたま僕のときに倒すべき神が現れてしまった、というだけ」
「ではあの旅記に書かれた倒した敵というのは、先ほど出てきたイルという名の神か」
「察しが良いね」
まるで物語の主人公だ。ツカサは目の前のまだ若い青年であるヴァンの背負ったものが理解できない。それを少しでも軽くするために旅記を書いたのだろうか。
今ツカサが歩んでいるように、彼らには彼らの人生という物語があったのだと知った。
ラングはふむ、と息を吐いて腕を組んだ。
「疑問は残る。神が神を殺せないのならば、どうやって世界を乗っ取るつもりだったのか。私は相手を殺す以外に方法を知らんが、お前の旅記にはこの世界の神を殺せる神殺しの記載はなかったように思う」
「イルは人間を駒にせず、自分の手ですべてをやっていたから」
「どういう意味? だって、神は神を殺せないってさっき」
「とどめは刺せなくても弱らせることは出来る。イルはこの世界を巻き込んで駄々をこねていただけなんだよ。だから、最終的に自分を止めるための手段である僕を殺しはしなかった。迷惑な話だよ」
首を傾げてしまった。ツカサの様子に苦笑を浮かべ、ヴァンは少しだけ寂しそうな顔をした。
「死んでも構わないから、最期に一瞬だけでも自分を見てほしい。そんな思いに縛られた悲しい人だった」
「誰に見てほしかったの」
「全ての理の神、所謂父親さ」
なんとなく、動機がわかったような気がした。
ヴァンはおかわりの紅茶を飲みながら話してくれた。
全ての理の神は子を創りだしてはそのまま放置し、子供たちは暗闇の中手探りで自分が何者であるかを見つけるのだそうだ。そうして出来上がってきたものがそのまま世界になる。
自分が一つの世界を持つ神となれば周囲が見られるようになり、そうして近いところに兄弟がいることを知る。
そして父がいることを知る。
「イルは寂しかったんだ。だから盛大な兄弟喧嘩をして、関心を引きたかった」
「その世界の住民としては災難だな」
「いや、本当にそれ。僕たちはただ、自分の生きる場所が無くなってしまうと聞かされて、ここに生きる大事な人や僕ら自身を守るために戦った。でも、今話して聞かせたような真実はイルに剣を突き立てる直前にようやく知ることができたんだ。正直、イル自身がこの世界の神に手を出して弱体化してなかったら、この手が届いたかどうか、今でもわからないよ」
死ぬとわかっていてそれでも誰かの関心を引きたかった。そんな強い思いをツカサは抱いたことがない。どんな覚悟でその方法を選んだのか、イルという神を理解するのは難しい。
ツカサがわかるのは一点のみ、親を求める子の思いだけだ。母を思い、じくりと痛んだ胸を押さえた。
ヴァンの仲間たちも言いようのない気持ちを持て余した表情でリーダーを見つめていた。
「俺たちも初めて聞いたんだが」
「ごめん、なかなか、話し難くてね」
暫しの沈黙。
ふぅ、と息を吐いたのはラングだ。今ここにいる面子の中で最年長、あらぬ話を聞かされたとしても動じることなく受け止めてみせた。
「それで、神殺しを成し遂げて、今お前はどうだ」
ツカサにはそれが英雄に問う言葉に思えたが、ヴァンの受け取り方は違った。
「何も。ただ、よくわからない荷物を降ろして人に戻っただけだよ。公に残そうとも思わないし」
「そうか」
ラングはそれ以上何も言わなかった。ヴァンとしても慰めて欲しいわけではない、見ていた掌を一度強く握り締め、やがてゆるりと開いた。
決して歴史には残らないその戦いが彼らの中に何を遺したのだろうか。
「僕に聞きたかった話は世界渡りのことで終わりかな?」
「最上位精霊と話せる者はいないと言っていたな」
「あぁ、それもあったね。僕が理の申し子だからこそウィゴールたちと会話が出来る。そして君もね、ラング。加護があるんだろう?」
「世界神の気まぐれという。この世界に渡った際、与えられた祝福だと言われたが」
ラングは腕を組みなおして唸った。
「お前の話を聞き、神殺しを求められはしないかと少々懸念している」
「直接の祝福はねぇ、そう思うよねぇ」
わかるよ、とヴァンが苦笑をして見せた。それに、と空になったティーカップを置いて視線を伏せた。
「神様っていうのは勝手だからね」
それがどの神を指したのかはわからない。けれど、ヴァンが良く思っていないことだけはわかった。ふぅ、と次はヴァンが息を吐いて笑う。
「まぁ、そういう理由でそもそも加護でも持っていなければ最上位精霊を見ることも、話すこともない。余程理の強い場所であれば別だけど、与えられる加護は有用であってもそう強くはない。いないからこそ基本的に理使い同士が争うことはないんだよ。一般的に言われる理使いは、ほんの少し精霊と親和性の高い人で、風に祈ればちょっとだけ雨雲を呼べたり、濁流に飲まれても無事だったりする。どこに水場があるかわかったり、畑がよく実ったり、火加減が上手だったり、洗濯物がよく乾いたりね。魔術師だって数は多くないし、声を届けられるアギリットみたいなのは特殊事例だ。そう考えるとアルは僕ら以上に稀有な存在なんだよ」
「え、俺?」
「だって君、魔力を持ちながらウィゴールの友達だろう? 魔術師でもないというし」
うん、まぁ、とアルはもじもじと居住まいを正した。
「僕も友達だけど、加護を持っていない人をウィゴールが友達と言ったのは初めて聞いたよ」
「そうなんだ」
へへ、と笑い、アルは照れ隠しからツカサと肩を組んだ。なんだよ、と笑って腕を払おうとしても、アルは大きな人形を抱きしめるようにツカサを揺らしてじゃれた。
それを放っておいてラングは膝に肘を置き、子供に尋ねるように言った。
「何故旅記を書いた」
「子供のころから旅記作家になりたかったんだ。友との一年の旅は、本来そのためにもらった時間だったんだ」
とてもシンプルな夢にラングはそうか、と一言だけ返した。
「まぁ少しだけ誰かの道標になればいいな、というのもあったよ。実際それで君たちがここまで来ているしね」
「違いない」
そうだ、ツカサはこの世界に来て早々【自由の旅行者】に出会えたからこそスカイを目指せた。目標なく心挫けずに済んだのだ。
ある程度話が落ち着いたと判断したのか、クルドがそっと手を挙げた。発言を求めるのにここでも手を挙げるのかと思い、ツカサはアルの腕を退けながらそちらを見た。
「全然関係ない話をしてもいいか」
「なに、突然だねクルド」
「ラングと話してると、すげぇこう、親父と話してる気持ちになるのなんでだろうな?」
ぽかんと全員が口を開いてクルドを見つめ、一拍置いてアルが声を上げて笑った。
ゆっくりとシールドがそちらを向いてアルはツカサを盾にして顔を逸らし、それでもまだ笑い続けた。エレナが耐えきれずくすりと笑い、アーシェティアは今まで沈黙を守っていたが首を傾げた。
「何故アル殿は笑うのだ? エレナも楽しそうに笑う」
「いえ、だってねぇ、アル?」
「なぁ? エレナ」
ツカサは苦笑を浮かべて両手を上げ、まぁまぁ、とラングを宥めすかした。その努力をアルが棒に振るった。
「ラング、親父だもん。五十路だぞ」
「え!?」
【快晴の蒼】からぎょっとした声が上がり、ざっと五人から視線が集まる。シェイまでもが驚きの顔をしていることに逆に驚いてしまった。この人でも驚くことがあるのだ。
「五十路であの動き!? どうなってんのこの人!?」
「ぱっと見肌艶五十路じゃないけど!? どんだけ良い肌の手入れを!?」
「いやぁ五十路と言われればその立ち居振る舞いには納得だけど、どういうことだ…」
「待て、五十路でツカサが弟ってことは何歳差だよ!?」
「化け物か」
ぎゃあぎゃあと目の前でああでもないこうでもないを始めた【快晴の蒼】に、本来の彼らはこうなのだろうなと緊張が緩む。ラングは小さな溜息を吐きソファに深く寄りかかり、シールドの中では呆れたものを見る目をしているだろう。
ラングは別に自身の年齢を隠してはいない。ことあるごとにツカサに年齢を思い出させるようなことは言うが、こうして好奇の目に晒されることは好まないのだ。隣の空気が冷えてきていることにツカサは体が固まる気がした。
「アル、アル」
「わはは、何、ツカサ」
「そろそろ無理」
「えっ」
ハッ、とアルは息を吸ってツカサの向こうを見て青くなった。
「同じような目に遭うことは覚悟の上だろうな、槍使い」
ごめんなさい、と間髪入れずにアルはツカサを盾にして謝罪した。
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