4-1:時計台
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草原の旅路は終わった。
ヤンと別れた後二人は来た道を戻り、途中竜便屋を探してヴァンとアルに連絡を取った。返事の伝達竜を受け取れば、アルからは待っている、と仲間からの嬉しそうな寄せ書きのような返事が、ヴァンからはイーグリスに向かうとあった。会話はまたイーグリスですることになるのだろう。
草原の馬にそのまま乗って帰って来たので行きの半分程度の時間で戻ることが出来た。やはり足で移動するのと馬を使うのでは進む距離が違う。
こうして移動する際、かつては座っているだけで済んだのだ。レールを走る繋ぎ目の振動、横にゆらゆらと揺れる睡魔を誘うリズム。満員電車であることはきつかったが、それは誰もが同じだった。そう考えると時間はかかっても自分のペースで移動できるのは性に合っているのかもしれない。時間に縛られていないことも大きい。
ツカサは流れる景色を視界の端に映しながら考える。
今回の会談は今後の行動を決めるにあたり、かなり重要になってくる。ラングが元の世界に戻るためでもあるし、ツカサがイーグリステリアの真実に触れるためでもある。ヴァンがどんな話をしてくれるのか楽しみでもあり恐怖でもあった。
帰路は特筆することもなく無事イーグリスに戻った。
イーグリスの東にあった軍の駐屯地はきれいに消えていて、様々な事後処理が終わったのだと察せられた。それに感想を言うことも無く穏やかに受け入れて門を目指した。
馬を降り入門手続きを済ませて街に足を踏み入れれば、ほんの三か月で空気は様変わりしていて驚いた。
賑わいはさらに活気が溢れ、冒険者が期待に胸を膨らませて声を上げ、市場では様々な食材や食事、素材がやり取りされていた。黄壁のダンジョンも活動を再開し、五つのダンジョンがこの街を再興するのだと感じた。
イーグリスの民は楽しそうに買い物をしたり、浄化装置のついた窪み型の水辺で鼻歌交じりに洗濯をし、とにかく楽しそうに見えた。イーグリスには洗濯機のような魔道具があるので、あの人は純粋にお天気を感じながら洗濯したいのだろう。
きっとこれが本来のイーグリスなのだ。五年強内乱という形で緊張感を耐え続けた民たちが元の生活に戻ったことを全身で喜んでいた。この明るさには【渡り人】だけではない、この場所の、この国の穏やかな気質も混ざっているように思えた。
晴れ渡った空の青さが何故か目に染みた。
そうしてよそ見をしていたせいで人とぶつかってしまった。相手はよろめいたがどうにか堪え、お互いに慌てた声色で様子を窺った。
「あ、ごめん、大丈夫? 天気が良くてつい、空を見てて」
「いや、こちらこそ。すまない、周りが賑やかでよそ見をしてしまった」
静かな声に思わず顔を少し覗き込んでしまった。目深く帽子を被っているせいで顔がよく見えなかったのだ。帽子から覗く髪は勿忘草の花のような色合いで鮮やかだ。
「若様!」
「不味い、追いつかれてしまう」
人混みを失礼、と言いながら掻き分けて駆け寄って来る男性に、青年はびくりと震えて慌てて周囲を見渡した。馬の向こうに道を見つけ通してくれと口を開こうとすれば、その前にラングがついと馬を動かして路地を見せた。
「ツカサ、久々のイーグリスだ、昼を取ってこい」
「え、うん、じゃあ?」
「馬は預かる」
「話のわかる人でよかった、ありがとう! よし、ツカサだったな、行こう!」
「あ、君と? ラング、ええと、またアルのところで?」
「あぁ」
よくわからないがラングがそう言うからには理由があるのだろう。もしかしたら追って来た人物が実は悪い人なのかもしれない。昼食を口実に護衛しろということか、と理解してツカサは馬の手綱をラングに任せて青年と共に路地へ駆け込んだ。
暫くしてラングのところへ辿り着いた男は額を押さえて天を仰いだ。
「ラング殿! あぁ、また見失ってしまった」
「久しいな、グレン」
「…そうですね、お元気そうでなによりです」
黒髪の、以前会った時よりも軽装な近衛騎士は商家の若様の護衛のようにも見えた。先ほどの呼称からしてもそういう設定なのだろう。脱力した声で定型文を返してくるあたり追跡も諦めたらしい。信頼されたものだと内心で肩を竦めながらゆっくりと歩き出せばグレンも横に並び、ツカサの馬の手綱を引き受けてくれた。
屋台で果実水を買って差し出せば、喉は渇いていたらしく良い飲みっぷりだ。少しだけ足を止めて休憩をすることにした。
「予想以上にお戻りが早かったですね」
「草原で馬を得られたのでな」
「いい馬です、人を運ぶのに適した良い足をしている」
喉をぽんぽんと叩いてやれば馬はぶるんと応えてみせた。果実水を飲み切りコップを屋台に返して再び歩き始める。賑やかな市場を通り過ぎて居住区側へ敢えて足を踏み入れれば先ほどよりも道は混雑していない。横長住居や敷地を切り取って囲われている一軒家、相変わらず様々な様相の家が並んでいる。
「先ほどの青年が噂の弟くんですか?」
「そうだ」
「素直そうな青年でしたね」
「意外と頑固で偏屈だ」
「おや、では兄に似たのでしょう」
どうやら仕事を邪魔したことを根に持っているらしい。見た目の爽やかさからはわからない意外な一面だ。
「いつもああなのか」
「えぇ、まぁ、安全かどうかはきちんと確認していますし、されておられますし、影もついていますし、部下もまだ追っています。けれど、それでも何かがないと断言はできませんから」
「近衛というのは苦労の塊だな」
「貴方がその一助になったのですが?」
「私はツカサに昼を取って来いと言っただけだ」
悪びれず言葉を返すラングに苦笑が浮かぶ。
「ヴァンたちはいつ来る。どうせあいつから聞いたのだろう」
「一堂に会するほうが二度手間にならない、とのことです。ヴァン殿たちは予定ではあと二、三日です。貴方が戻るまで十日はあるだろうと思っていたので、その間骨休めをする予定だったようです。ラング殿、よろしければ我々も昼食といきませんか」
思わぬ誘いに足を止めた。グレンは少しばかり肩を竦め、親指で建物を示して見せた。礼儀正しい騎士にはない所作で誘われれば何故だか付き合ってやっても良い気がした。
「馬を預けられるところにしろ」
「お任せください」
手綱を引いて先導し、グレンは一軒の家に足を向けた。
さて、一方、青年と路地へ走りこんだツカサはしばらく走ったところで足を止め、青年の息が整うのを待った。
壁に背を預けぜぇはぁ息を吸って吐いてする青年は、徐々に可笑しくなってついには笑ってしまった。急に巻き込まれた事態だったがツカサも釣られて笑い出した。
「はは、いやぁ、助かった! 少し自由に見て回りたいだけなのに融通が利かない奴なんだ」
「別に命を狙われていたとかそういう訳ではない? ただの脱走ってことかな、若様」
「そういうこと。あの人は話の分かってくれる人だな。改めて、フィルだ、よろしく」
「よろしく、ツカサだ。さっきの仮面つけた人は俺の兄さん、ラングっていうんだ」
手を差し出され握手を返し、フィルのへぇ、と興味を惹かれた声に笑う。こうして名乗り、顔をまじまじ見られるのにも慣れて来た。
「似ているの?」
「いや、血の繋がりはないよ」
「そうなのか、けれど兄か、いいな。ところで」
うんうん、と頷いて楽しそうにし、フィルは大通りを指差した。
「ツカサは何が食べたい? 昼食一緒に食べてくれるんだろう?」
「今旅から戻ったところだから、お店に入って腰を据えたいな。昼時だから少し待つかもしれないけど、どう?」
「もちろん! 走って足が疲れたし、僕もイーグリスは久々に来たからね! それより旅の話を聞かせて欲しい、どこに行ったの?」
「今回はイファ草原に」
これも一期一会の縁だなと思いながら、ツカサはエレナとモニカに話す練習にさせてもらった。
昼食は久々に日本食が食べたかったので定食の店を選んだ。フィルもそれでいいと言い、まあまあの混み具合で待たされたが旅路を話すにはちょうどいい。話している間に席も空いた。
フィルという青年はとても話しやすい人物だった。相槌が上手く、質問も多く、楽しそうに聞いてくれる姿にツカサは乗せられていろいろと話してしまった。
兄ラングとの旅が久々で浮足立っていたことや、お土産のこと。
草原の文化に驚き、一枚の国境を隔てて魔導士の価値が違い驚いたこと。
流石に詳細は省いたがラングから聞いた様々な話に考えさせられ、今もまだ消化中であること。
「そうか、ツカサは【渡り人】なんだね」
「うん」
味噌汁を飲みながら頷けば対面で米を頬張ったフィルが少しの沈黙の後尋ねてきた。かちゃりと箸を置いて帽子の下で明るい青色の目がツカサを見遣った。
「ねぇ、ツカサ、僕の家は【渡り人】も多く相手にしている。いい人も悪い人もいて、それはスカイという国も他国も、街や村単位でもそうだから是非は問わない。でも【渡り人】に聞いたことはないんだよね。だから教えてほしい、君にとってここは、どうなの?」
「どう、って、かなりアバウトな質問だけど」
ぱくりと米を食べて、左手に茶碗、右手に箸のまま視線が自然と下を向いた。焼き魚を見てはいるが視認しないまま、ツカサはううんと唸った。
「俺はさ、ラングがいろいろ教えてくれたおかげで、結構、こう、恵まれてる。視野を広げたり、柔軟に考えたり、出来るようになったと思う」
「僕が言えた話じゃないけれど、君もまあ思わせぶりに話すねぇ」
「考えながら話してるからだよ、俺まとまるのに時間かかるんだ」
「話の腰を折ったかな、ごめん、続けて」
苦笑を浮かべたフィルにこちらも茶碗を置いて代わりに湯呑を持った。緑色のお茶はスカイに来てようやく飲めたものだ。
「どうと問われたら、俺にはまだわからないかな。でも、懐かしくて、新しくて、同じようで違う場所。だけど俺はここで生きると決めたよ。そのために生まれたてほやほやになったんだ」
「どういうこと? …いくつなんだ?」
「生まれたては冗談冗談、えっと、この間二十歳になったかな? あれ? ここに来てから誕生日ずれちゃってるからな」
「意外、もう少し下かと思ってた」
本当に驚いたらしくフィルは目を見開いているようだった。幼く見える日本人というのは何歳までついて回るのだろうか。身長も伸びた、体つきもしっかりした、それでも目の前の青年が信じられないと腕を組むのだから面白い。
ツカサはちらちらと見えるフィルの目の青が気になった。目深く被った帽子から目元が見えるのが嫌なのだというのはわかるが、光の加減で色の変わる青は不思議な気持ちにさせる。
そんなことを考えながら再び箸を持ち魚の皮を剝がしていれば、フィルは呟くように言った。
「ここで生きると決めた、か。並大抵の覚悟じゃないね」
元の世界がないからね、とは言えず、苦笑を浮かべて濁した。沈黙の誓いをしてから誰とも話していないあの話題がもうすぐ答えを得られるのだと思うと急に下腹部が締め付けられる気持ちだった。緊張に弱い自覚はなかったが、じくりとした筋肉の収縮を感じて深呼吸をする。
「君の覚悟を僕は称賛する」
「ありがとう?」
はは、と笑いあって気を取り直し、定食をやっつけた。
白米をおかわりしておなかはいっぱい、けれど、駄弁るのにはお供が欲しい。屋台で果実水を買ってベンチに腰掛けて飲んだり、歩き回って小腹が空けばこちらも屋台で摘まめるものを買って分け合った。雑貨屋に入れば日常用品からコップまで、手に取って感想を言いあったり買ったりした。
学友と休日にするように、普通に遊んでいる感覚が新鮮だった。かつては普通にやっていたことが今は難しくなったのだと思うと、目の奥が少しだけ痛かった。
「そういえば、ここって学校はあるのかな」
向こうの大陸でもこちらの大陸でも、学校というものに足を踏み入れたことがなく、どこが学校なのかがわからない。
「あるよ、スカイにはある程度大きな都市には高等学校まで、王都には研究学院もある。ここイーグリスにも初等部、中等部、高等部とあるよ」
「全然気づかなかった」
「まぁある程度外れにあるからね。他の町や村から奨学生として来る者たちもいるから、イーグリスは寮制なんだよ」
「そうなんだ、よく知ってるね」
「情報が命だからね」
商いを行っているならそうか、とツカサは笑った。
自分が今現在学校という物から遠いだけに知らなかった。冒険者であるからこそ冒険者の装備には気づけるが、学生には気づかなかった。ここでも制服はあるのだろうか、見かけないのでもしかしたら私服登校派なのかもしれない。
「フィルもどこか行っているの?」
「王立学院を飛び級でね」
「なんかすごい」
「たぶん、君が想像しているような学校ではないんだ」
苦笑を浮かべてフィルが言い、景色のいいところに行きたいと立ち上がった。
時計台に行ったことはあるかと問われ、ないと答えればじゃあ行こうと腕を引かれた。
「僕は王都の学校に行かせてもらったけど、算術に言語学、それに精霊学に魔導学、魔術学、経営学などに学科が分かれているんだ。それに加えて歴史学とかの基本科目」
「どっちかっていうと専門学校みたいな感じなのかな? フィルは何を勉強したの?」
「経営学と歴史学を主に、そのほか全て齧る程度かな。精霊学と魔導学はスカイの要だし、魔術学は魔法を怖がる人を相手にするときに知っていて困らない」
「その勉強内容で飛び級って想像つかないなぁ」
「一定の授業数を受けた後、レポートを提出するんだよ、教員の決めたテーマで一科目五本くらいだったかな」
「大変そう」
「大変だったとも、けれど良い経験になった。自分の理解を言語化して相手にわかりやすく伝えるというのは、知識の幅と深さ、本当の意味での理解力を試された」
帽子で見えない表情が自信に溢れているように見えた。少しだけ学者のような物の言い方も、飛び級を成したフィルが勉学に励んできたからこそだろう。
恥ずかしくなった。なんとなく義務教育を受けて、なんとなく家から近い高校に行って、なんとなく大学に行くはずだった自分の進路がぼやけているように感じた。
勉強がしたいと思った。これもまた漠然とした欲求だったが、本心だった。
「ツカサ、どうかした?」
「いや、勉強したいなと思って」
それなりに混みあう時計台を前にして言えば、フィルはふーんと鼻を鳴らして入場券を買い、一枚をツカサに差し出してきた。
「奢ってあげる、とりあえず上に行こう」
「うん、ありがとう」
時計台を下から見る人はいても上る人は半分程度のようで、中の方が動きやすそうだった。ぐるりと長い螺旋階段が上まで続いていて、途中で引き返してくる人もいた。ある程度の幅があるおかげですれ違いやすい。
平地を歩くことには慣れていたが、膝を上げて上る動作がこうも疲れるとは。途中で降りてくる人が多い理由がよくわかった。この世界では横の移動は多くても縦の移動が少ない。エフェールム邸や冒険者ギルドなど、高い建物があれば上り下りは普通にするが、ここまで長い階段は久々で堪えた。
フィルは少し先で時々ツカサを待っていてくれた。追いつけばにやにやと堪えきれない口元が出迎える。
「ふふ、移動距離に慣れている冒険者らしい弱点だね」
「日ごろ、使ってない、筋肉を使ってる、気がする」
「イーグリスに滞在する時間が長いなら、たまに上るといいよ。景色も見事なものだよ」
「それは、楽しみだな」
悔しいのでこっそりとヒールを使って階段を上り切った。
ふわっと気持ちのいい風を感じ、それが動いて火照った体に気持ちよくて外に出た。
たった二十分程度の移動だというのに世界は表情を変えていた。夕陽に照らされて一面のオレンジ。点灯し始めた街灯の明かりがその中で煌めいていた。夕陽の海が眼下で揺れていて街並みが、遠い平原のうねりが美しい。
「下ばかり見ては勿体ないよ」
ほら、と指差された空を見れば、いつもより近く、濃い紫と赤のせめぎ合いが繰り広げられていた。まるで生きているかのように刻一刻と変化する色が、徐々に青が勝って紺色に染まっていく。ようやく出番かと星々がちかりと光を放ち、静かな歌声を聞かせるような気がした。けれど、草原の方がその歌声が大きかったように思う。
それだけの時間、じっと空を見上げてしまっていた。
「美しいよね、空も、街も、そこで生きる人も」
「うん」
「もっと遠く、旧渡り人の街が見えるかい?」
「うん」
「あの街は定住を希望する冒険者と商人の受け入れから始まることになる」
「【渡り人】じゃなく?」
「いろいろ理由はあったけれど、そうしてみて、だめだったんだろう?」
【渡り人】に衣食住を提供し、彼らは納得が出来ず、真実を知って反旗を翻した。
「だから、壁を取り壊した後、イーグリスのダンジョンを目当てにしている冒険者や商人、それからイーグリス側の飲食店の第二店舗とか、この世界の民と【渡り人】とを徐々に混ぜていく。最終的には【渡り人】に比重は置かれるけれど、最初はぬるま湯からってことだ」
「フィルの家もその先駆け?」
「秘密」
あたりが暗くなってしまってよく見えなかったが、フィルは悪戯な顔で笑っているように見えた。
お互いに街や空を見上げ、暫し沈黙。微かな深呼吸の音が聞こえてそちらを見れば、フィルはゆっくりとツカサを振り返った。
「ツカサ、今日はありがとう。久々にはしゃいだように思う」
「ご飯食べてうろついただけだよ。俺も楽しかったし、こんな場所を知れてよかった」
「是非また来てくれ、僕もイーグリスに来るときは絶対に上るんだ」
「うん、少し滞在すると思うから、必ず来るよ」
「約束だよ」
「うん、約束」
指切りという文化はないのだろう。フィルは手を差し出してきたのでそれを強く握り返した。ふと、握ったフィルの手に少しだけ剣ダコを感じた。質問を投げかける前に手を引いて、フィルは帽子の下で笑顔を浮かべた。
「そろそろ戻らねば」
「怒られない? なんだったらついて行こうか?」
「はは! それは初めて言われたなぁ! 問題ないよ、たぶんだけど下に迎えが来てる」
「行動読まれちゃったか」
「好きな場所はなかなか変わらないからね。それじゃ、ツカサ」
「うん、あんまり怒られないといいね」
「祈ってて。またね、ツカサ」
「あぁ、またね、フィル」
ツカサは階段へ消えていくフィルの姿を見えなくなるまで見送って、街を見てから空を見上げた。
新しい出会いがまた一つ。学校があるのだとわかり、自分の中に勉強を求める気持ちがあったことに驚きつつ、目を瞑る。
「あれ」
ぱっと目を開いた。
言い回しが今になって気になった。
「渡り人の街の件、どうしてあそこまで断言出来たんだ?」
今まで出会った商人は、らしい、とか、だろう、とか推測して情報を話してきた。フィルの話しぶりはまるで事実に誤りがないような、断定的な言い方だった。
不思議な青年を思い出して何故か可笑しくなって笑ってしまい、ツカサはもう少しだけ夜空を見上げてエフェールム邸に足を向けた。
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