0:日記
異世界転生、異世界転移。
たくさん読んだラノベに、よくある話だ。
誰だって憧れる。
誰だって夢を見る。
何かの拍子にそんな選択肢が与えられれば、それをつかみ取り、活用し、大成功を収める。
可能ならスキルなんて上等なものをもらって、美男美女に囲まれてハーレムを築き上げたり。
王侯貴族に負けず劣らず優雅な生活を送る。
あぁ、夢みたいだ。そんなこと。
そう、正しく夢だった。
結論から言えば、すごく苦労した。
俺はたいしたスキルに恵まれなかったし、持っていると言えば異世界転生のhow toくらい。
泥水も啜った。血反吐も文字通り吐いた。体中が砕かれるような苦痛にも見舞われた。
それでも俺は生き残った。
運が良かった。人との出会いがよかった。
あの人と出会い、そして旅ができた。
俺の一生の宝物、一生の幸運。
日記を書けと言ってくれたあの人が、居てくれたから今俺はここにいる。
道に迷った誰かの希望になるように。
絶望の淵に立たされた誰かが、顔を上げられるように。
いつか俺が死んだあと、ここに居たのだと残りますように。
遠い場所に行ってしまったあの人が、何かの折に見つけられるように。
この日記を俺の一生の師匠であり、戦友であり、親友であるラングに捧ぐ。
――― ツカサ・ミツミネ