県で有名な泥棒
私はとある県で有名な盗人だ。
一見どこにでもいそうなサラリーマン風の男を装っている。
人畜無害な人間を演じ、相手を油断させ、その上で相手の大切な物を奪う。
常套手段であり、私の奥義だ。
ふっふっふ…、次はかの有名な財前財閥を狙うとしよう。
難攻不落の財前美術館。
そこを落とせば、私の名声はうなぎのぼりだ。
まずは敵情視察だ。
美術館内を把握し、最適ルートで最短の仕事をする。
そのためにも、内部を理解する必要がある。
サラリーマンのような私が美術館にいることは、なんら不思議なことではない。
見ていろ、財前美術館!
私の手によって落ちる時がきたのだ!
「こちら絵画エリア。本部応答願う」
『こちら本部。どうぞ』
「挙動不審な男性が一名。判断を仰ぐ」
『現地にて声をかけてみてくれ』
「了解。失礼…え!?逃げたぞ!追え!」
「ご協力に感謝致します」
「…なんのことだ宮前?」
「先日取り押さえた男が、指名手配中だったようです」
「…俺は何も聞いてないぞ?」
「日中の出来事でしたので」
ある日、所轄の警察署長が訪ねてきた。
応接室に通すと、署長の口から感謝の言葉。
ん?何かやったか?
協力しているのはいつものことだ。
我が城に侵入してくる鼠を、隣接している交番に届けているのは警備部だ。
がんじがらめにして台車で運んでいく姿に、交番の警察官も当初は驚いていたが、今では慣れたものだ。
礼は不要だ、と伝えていたのだが…。
「宮前。署長殿がお帰りだ」
「本日はお時間いただき、ありがとうございました」
「気にするな。署長と私の仲ではないか」
財前の力を持ってすれば、公僕にも顔が聞く。
隣接している交番を建てたのも俺だ。
こうなると見込んでだ。
しかし…、老朽化していた近場の交番を建て直すということで建て直したが…。
少々デカすぎたか?
署長殿は署を移そうかと言っている程だ。
あれくらいならいつでも建てるのだがな…。
「坊ちゃん」
「なんだ?」
「3人より要望が届いております」
「ちっ…」
宮前から告げられた3人とは、我が警備部が誇る最大戦力の3人だ。
警備というより、俺の周囲を守るSPに近いがな。
3人とも実力者だが、如何せん癖が強い。
「読み上げろ」
「まずはジャンより「美術館が建てられてから、みなトレーニングに勤しんでいる。追加のプロテインを頼む」と」
「…追加が。一番良いのを届けてやれ」
「はっ。では次に山梔子殿より「銀座のクラブの立替よろしく」だそうです」
「くっ…!いいだろう」
「次に赤峰より「暇」だそうです」
「………」
「赤峰はどういたしましょう」
「放置だ」
「畏まりました」
ジャン、山梔子、赤峰は3人とも優れた人物だ。
だがこうも癖が強いとな…。
そうだ…!
俺に妙案があるぞ!
くっくっく…!
「宮前。3人に仕事をやろうと思う」
「3人を動かすのですか?」
「そうだ。警備を変更させるぞ」
「承知致しました」
くっくっく…ふははは…あーはっはっはっはっは!
俺は天才だ!!!
次から登場人物が徐々に増えていきます。
コメディーの時間よー。




