世界最高の泥棒集団からの挑戦状
父と子による親子喧嘩が終結し、つかの間の平穏を楽しんでいる財前家一同。
財前美術館もいつも以上の賑わいを見せている。
美術館のセキュリティレベルを元に戻したことにより、館内に侵入できる賊はいなくなった。
館内に侵入することができず、警備部に捕縛される。
捕縛された後に、隣接する交番に台車で運ばれるのは定番となっている。
公人から当主の座を引き継いだ将星の日常に変化はない。
元々、公人が出奔してから、財前財閥を動かしてきたのは将星だ。
これ以上に権限が強固になった以外に変化はない。
公人を含む先代たちは、隠居生活を満喫している。
公人は孫の絵瑠と出掛けたりしている。
善人は息子である悠然の教育を施している。
志乃は他の嫁たちと買物などを楽しんでいるようだ。
ヘンリーは王者陥落あって、ジャンとトレーニングに勤しんでいる。
貫瞬は警備部に槍術を指導する傍ら、魔法少女を育てることに余念がない。
田中太郎は雰囲気も柔らかくなったことから、屋敷の手伝いをしているようだ。
各々が、つかの間の平和を満喫している。
先代が完全に一線を退いたことで、現役組は非常に忙しいようだが…。
しかし、平穏はいつか崩れ去るもの。
財前美術館及び財前家に眠る財宝を狙う者は虎視眈々とそん時を狙っていた。
「挑戦状だと?」
「はい」
昼下がりの当主室。
将星のもとに届けられたのは、一通の手紙。
中身は悠然にて検閲された後であり、当主である将星の判断を仰ぐ必要があると判断された。
「大胆なものだな。どれ、確認しよう」
「はっ」
将星が手紙に目を通す。
そこには…。
拝啓 新当主殿
我々は、世界最高の盗人集団だ。
財前家に眠る宝を我々が頂く。
満月の夜にそちらに失礼するとする。
狙いは財前邸の地下に保管されている家宝だ。
「ほぅ」
将星は、この手紙が本物の予告であると判断する。
「一部の者しか知らないはずの地下の保管庫を知っているか」
「そのようです」
美術館の展示品は9割が贋作だ。
本物は財前邸の地下に保管されている。
その事実を知っている者は、ごく一部の者に限られる。
「次の満月はいつだ?」
「これより5日後となります」
「くっくっく…。飛んで火に入る夏の虫というところか。いいだろう。その挑戦、財前将星が受取ろう!力不足の場合は…そのまま消し炭にしてやろうっ!」
「はぁ…」
将星はストレスが溜まっている。
六華と色々することで一定の発散はできているが、それでもストレスが残る。
そう…。公人が絵瑠を連れ出していることで、絵瑠がいないのだ。
天使の笑顔で回復できない。
将星にとっては、死活問題だった。
そこに謎の集団からの挑戦状。
丁度いいストレス発散だ、と。
「くっくっく…!久しぶりに全力でいかせてもらおうか…!」
「頭が痛い…」




