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大富豪と泥棒たちの大戦争  作者: はから
第二章 壮大な親子喧嘩の果てに
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壮大な親子喧嘩 ~父と子と~


 「はぁ…はぁ、はぁ…」


 肩で息をする将星。

 気を緩めれば、今でも倒れてしまうだろう将星。

 対する公人は傷があるものの、力強く立っている。


 「貴様の…覚悟など、みなが…悲しむだけだ…!」


 「ほう」


 「貴様のやり方は一部の人間だけが喜ぶものだ!そんなものくそくらえだ!俺はみなを幸せにする!財前家の者だけではない!」


 「それは傲慢だというものだ」


 「傲慢だとしても…。青い考えだとしても…。俺は俺の信じる道を行く!」


 「青いな」


 「くっ…」


 最後の力を振り絞って最後の攻撃を仕掛けるも、公人の前に届かない。

 部屋の奥まで蹴り飛ばされる将星。

 しかし、将星に顔に笑みが零れる。

 

 「くっくっく!ありがとうクソ親父!計算通りだ!!!」


 「なんだと?」


 「あなた!あのスイッチを押させちゃダメよ!」


 部屋に現れたのは傷だらけの志乃。

 将星の手にはスイッチが握られている。

 志乃の慌て方からすると非常にマズイスイッチのようだ。


 「スイッチだと?」


 「そうよ!将星ちゃんが持ってるスイッチよ!あれを押させちゃダメよ!」


 「いいや、限界だ。押すね!」


 「「!!?」」


 将星がスイッチを押すと、轟音とともに、部屋の壁が吹き飛ばされた。

 

 「あら~、坊ちゃま。ボロボロね。お片付けは私にお・ま・か・せ」


 「お前はっ!!?」


 「お久しぶりね。ご当主様」


 「聖剛!」


 「いやん。聖子って呼・ん・で」


 壁の奥から現れたのは神薙聖剛(かみなぎ せいごう)

 鍛え抜かれた肉体。

 メイド服を着ているが、筋肉を隠せていない。

 財前家のメイド長にして、漢女である。

 ちなみに聖剛の左手には、ボロボロになった善人が引きずられていた。

 恐らく生きているだろう…。多分…。



 「ご当主様。いえ、前当主様…。覚悟はよろしくて?」


 「くっ…!!!」














 「いい歳こいた大人が何をしているのかしら?」


 「スマヌ…」


 絶賛聖剛によるお仕置きを受けている公人。

 公人が幼い頃から逆らえない存在。

 メイド長にして、真魔王の聖剛。

 魔王悠然を倒したとしても、後に控えるは真の魔王聖剛。

 勝てるわけがない。逃げるんだ…。



 「それで、どうするの。将星ちゃん?」


 「そいつはヨミを殺した…」


 「ヨミちゃんを!?」


 「そうだ…。ヨミ…」


 将星の目から涙が落ちる。

 幼い頃から、遊び相手になってくれたヨミ。

 姉であり、母であったヨミ。

 そんなヨミを殺した公人を許すことはできない。


 「だから貴様は―――『ただいまー』」


 「え…」


 部屋に響くはヨミの声。


 「い、生きていたのか!?」


 『ちょっと飛ばされただけだよん』


 「父上…」


 「暦を殺すわけがなかろう…」


 「これにて一件落着ね」


 『でも…。公人ちゃんにはお返ししなきゃね』


 「なにを…っ!!?」


 ヨミが手に持っているのは古ぼけた一冊のノート。

 部屋にいる全員が知らないノート。

 しかし公人だけが焦っていた。


 「や、やめろっ!」


 『えーと。ふっ、今日も俺の邪眼が疼く。俺こそが邪眼に選ばれし者!そう俺こそが勇者なのだ』


 「グハッ!?」


 「あなたっ!!?」


 『漆黒の王である俺に逆らうとは…。闇の炎に抱かれて死ぬがいい』


 「ぐふっ…!?」


 「………」

 

 『次はどれにしようかな』


 「やめて!ダーリンのHPは0よ!!!」


 古ぼけノートは公人の黒歴史のようだった。













 ヨミの朗読会から復活した公人。

 それ以外の人間もメイド長率いるメイド部隊によって適切な処置が行われていた。


 「メイド長。今日もいい体をしている」

 「若よ。ポータブル発電機を買ってくれんかの」

 「将星ー!無事でよかったわ」

 「パパー!」

 「やはりメイド長によって鎮圧されましたか」


 「おわっ!聖剛さん、変わらねぇ」

 「くっ…ワシと万裁の白桃鉄100年が…」

 「あら、来たのね」

 「………」

 「メイド長怖い…」


 新旧四天王と魔王の全員が当主室へと集まってきた。

 

 「パパだと…?」


 「おじさんだれー?」


 「お、おじさん?」


 我らが天使絵瑠が公人の近づく。

 人見知りしない絵瑠にとって、パパである将星と同じ匂いのする男性だ。


 「うん、おじさんだあれ?」


 「将星。この子は…?」


 「俺の養女の絵瑠だ」


 「養女だと…?」


 「おじちゃん?」


 養女と聞いた公人が、絵瑠の肩を掴む。

 公人は、静かに震えている。


 「おじちゃんは絵瑠ちゃんのおじいちゃんでちゅよー」


 「おじいちゃん!」


 「おい」


 絵瑠に頬擦りして、満面の笑みを浮かべる公人。

 絵瑠も喜んでいる。

 厳格な父親はどこに消えたのか。

 厳格な父親から、孫好きの祖父へとジョブチェンした。


 「将星。お前に当主の座はやる。その代わり、絵瑠ちゃんと遊ぶ時間をよこせ」


 「おい」


 「おじいちゃんでちゅよー!」


 「きゃー!」


 「………」


 絵瑠の前に公人も陥落。

 ここに財前家当主の座が将星へと引き継がれた。






 第二章 完!


【悲報】シリアスが家出

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