壮大な親子喧嘩 ~龍虎相見える~
「………」
「………」
屋敷の老化にて二人の老人が相見える。
二人の殺気が、場を支配している。
二人の老人は歴戦の強者。
腰に刺した日本刀と手に握られた直槍。
片や剣術を極め、万物を切り裂くとされた達人。
片や槍術を極め、この世に貫けぬものなしと言われた達人。
歴戦の勇士にして、天下に並ぶもの無しと言われた兵法者。
道は一つ。
決して交わることのない道。
己が信じた道が正しいと信じて…。
「ど、どうなってるんだ」
「二人とも動かないぞ…」
「山梔子さんが動けないというのか?」
「あっちだって宝宗院の爺さんだ」
「互いに間合いを測っているのか?」
日本刀を持つ男の名は山梔子万裁。
全てを断ち斬ることから、万裁、
彼と対峙した者は、口から言葉を発することができなくなる。
そう、物理的にだ。
対峙すれば首と胴が今生の別れとなる。
故に、山梔子。
山梔子万裁。
飾り気のない直槍を手にする男の名は宝宗院貫瞬。
瞬く間に貫くことから貫瞬。
神速の槍にて貫かれた相手は、自信が貫かれたと認識するまでに時間を要する。
数秒の後、相手は理解することなく世を去る。
全てを断ち斬る山梔子か。
一瞬で貫く宝宗院か。
勝者は一人。
「動いた!!」
警備部が固唾を飲む。
万裁と貫瞬が距離詰める。
槍の距離。
刀の距離。
二人は獲物を振ることなく、対峙して1mまで来た。
そして…。
「「最初はぐー!じゃんけん!」」
「ちょき!」「ぱー!」
勝者は万裁。
勝者は歩みを止めない。
「あっちむいてほい!」
「くっ…!やってしまったわい…」
「ワシの勝ちじゃて!」
「「「「「………」」」」」
今までの張り詰めた空気は家出した。
武を極めし男の勝負方法は「あっちむいてほい」。
「つ、次じゃ!」
「かかってくるのじゃ!」
貫瞬が懐から何かを出す。
貫瞬が懐から出したのはスマートホン。
爺に似つかぬ最新モデルだ。
「アイドルとシャンソンするのじゃぞ!」
「ワシのリズム感に勝てるわけがなかろう!」
「「「「「………」」」」」
「インスタークラムでどちらが先にイイネを貰うか勝負じゃ!」
「かかってくるのじゃ!いいか、1,2,3で投稿じゃぞ!」
「「「「「………」」」」」
「大乱闘スマッシュシスターズで勝負じゃ!」
「家庭ゲームなら勝てると思ったか!」
「「「「「………」」」」」
「愛取るマスターで10連ずつ引いて、先にSSR引いた方が勝利じゃ!」
「ワシが杏子ちゃんSSR引いてやるんじゃ!あ、ちょっと待つのじゃ。課金せねば足りぬ」
「「「「「………」」」」」
「ここまで5勝5敗の五分五分か」
「そうじゃのぅ。次で決着とするのじゃ」
「題材はいつものアレといこうぞ」
「そうじゃな…」
「「この白桃桃の100年モードで勝負じゃ!!!」」
「「「「「いやいやいやいや。武術で勝負しろよ」」」」」
「撤収だー。片付けろー」
「「「「うぃ~す」」」」
「あ!電源を抜く出ない!」
「今からワシと万裁の最終決戦なのじゃぞ!!?」
「「「「「おつかれさまでしたー」」」」」
この勝負に勝者はいなかった。
アイドルとシャンソンしたことないです。
魔法少女も育成してません。
英霊も召喚してません。
課金は程々に!




