父と子の邂逅
すみません!
予約投稿の時間を誤っておりました<(_ _)>
財前美術館は財前財閥の全てを結集して作られた我が城だ。
暇潰しだ。
俺をワクワクさせるような者はいないのか。
どいつもこいつも三流ばかりだ。
最近では挑戦者も少なくなってきたな。
くっくっく。財前美術館の堅牢さが轟き過ぎたか。
これこそ我が城よ。
最強にて最堅。
そろそろ潮時であるな。
「戻す?セキュリティレベルを?」
「そうだ」
「なんでまた」
俺は自室にて六華と隣り合って座っている。
絵瑠は万裁が連れて行った。
悪い影響を与えないといいが…。
「満足だ。これ以上やっても何も得られん」
「満足って…」
「これ以上は全員の負担になる。明後日よりレベルを最高値まで戻す。これは決定事項だ」
決めていたことだ。
俺の決断に異論を唱えることは許さん。
俺が主で俺が王なのだから。
「セキュリティレベルを元に戻せば、侵入できる鼠はいないだろう。これでまた安眠の日々だ」
「アンタがそれでいいならいいけど…」
「すでに警備部に通達済みだ」
警備部の連中は、臨時ボーナスが減ると嘆いていたな。
結局俺の全敗で終わったか。
まぁ、大した金額でもないから気にならん。
「それに、美術館にあるのは9割が贋作だ」
「えっ!?そうなの?」
「なんだ。気づいてなかったのか」
「気づくわけないじゃない」
美術館の展示品は9割が成功に作られた贋作だ。
もちろん、この俺が贋作を掴まれたわけではない。
本物はこの屋敷の地下に眠っている。
本物が分かる鑑定人には地下の本物を見せて納得してもらった。
鼠どもも贋作を盗みにくるとは、バカなやつらよ。
「まぁ、私からは何も言うことはないわ」
「それでこそ六華だ。俺の異母兄妹にして嫁よ」
「ちょっと!まだ日が出てるわよ!」
「構わん」
さて、これから六華とお楽しみの時間といくか。
絵瑠もいないことだ。
久しぶりに…。
「失礼します」
宮前め…。
俺の邪魔をするとは良い度胸だ。
大した要件でもなければ蹴飛ばしてくれる。
「どうした?」
「実は…」
「なん…だと…っ!!?」
なんということだ。
俺の平穏が崩れ去る音が聞こえる。
くっ!至急準備だ!
「今ぁ帰ったぞぉ~我が息子よ~」
「なんですかその喋り方は」
「気にするな。気分だ」
「父上もお変わりないようで」
財前家現当主である父。
財前公人。
財前財閥を俺に任せ、世界を放浪していた息子不幸者だ。
相変わらず父上の仕出かすことは突発的過ぎて理解できん…。
「六華との間に子はできたか?」
「六華がそれを望んでおりません」
帰ってきて早々にこれか…。
六華が聞いたら卒倒するだろうな。
「何を迷っておる?お前が気に入ったから嫁にしたのであろう。血の濃さなど気にするな。児戯に等しきことよ」
「…世間体というものがあります」
「何を言うか。財前家の次期当主ともあろう者が世間を気にするのか?気にするのは世間だ。王に意見できるものはおらぬ」
相変わらずとんでもないことを言う…。
とんでもない父親だ。
だが、紛れもなく俺の父親だ。
「…六華と相談した上で決めとうございます」
「うむ」
何をしに帰ってきたんだ?
俺と六華の仲を進めるだけか?
いやいや、父上がそんなことのために帰宅するわけがない。
「嫁は何人できた?」
「は…?」
「嫁は何人できたと聞いている」
コイツ…っ!
俺は正妻の子供だ。
六華は側室の子供。
この時代に、ありえない一夫多妻制を敷く父上。
それを息子である俺にも勧めてくる。
「…変わりなく」
「何だと?将星よ、お前若くして枯れておるのか?ワシが若い頃はずっこんばっこ―――「父上!」」
このクソ親父!
息子の前で何を言い始める気だ!!?
26にもなって父親の夜の情報など知りたくないわ!
「ふぅ…。お前には覚悟が足りん」
「覚悟ですか…?」
「そうだ、財前家の当主たる者の覚悟だ」
「…父上が不在の間に財前家を纏め上げております」
「そうではない!あのようなことなど、お前に取っては簡単なことよ。ワシの次はお前が当主だ。当主の覚悟ができておらんようだな」
「お言葉ですが父上。私は―――「くどい!」」
なんなんだこのクソ親父は…っ!
覚悟だと?
何を言っているんだ。
覚悟など父上に事業を放り出されてからしておるわ!
「…明日の夜だ」
「は…?」
「明日の22時にお前の覚悟を問うとしよう」
「は、はぁ…」
「覚悟が見えぬようなら…お前の全てを奪って、他の兄妹にでも跡目を譲るとしよう」
「なっ!!?」
俺から全てを奪うだと…。
言ってれるなクソ親父…!
俺の全てだと…!
絵瑠に絵瑠に絵瑠に絵瑠…!
俺の絵瑠を奪わせやしない!!!
父上!俺の覚悟を見せてやろう!!!




