十四話目:陽キャ美少女は、スキル[応援]を持っているらしい_02
「体力テストを嫌がっていたヨッシーだけど、全力を出し切ってたね?」
「早朝から二宮さんが特訓してくれたし、それに今日応援してくれたから。こういう時に全力を出すのは嫌いじゃないよ」
とはいえ全力でも中の下な結果で情けないが、二宮さんは凄く嬉しそうだった。
「えへへ、今度は私がシャトルラン! そこまで運動得意じゃないし大変だ~」
「ははは。いつも元気一杯だから気付きにくいけど、運動については並なんだね」
「実は今のところ、どの種目も平均記録を超えてるので、ヨッシー応援して!」
「二宮さんみたいに目立つ応援はムリだけど、走っている姿はしっかり見守るよ」
こうして女子のシャトルランが始まり、今度は俺が観戦する番となった。
次々と脱落者が出始める中、二宮さんは何とか脱落せずに走り続ける。
「あと一往復で前年平均記録超えだよー。残っている子は頑張ってみてー」
女子担当教師の宣告で、二宮さんは全種目平均記録超え出来そうだなと一瞬思ったが、二宮さんに視線を戻すと、走るフォームも大きく崩れていて、既に限界そうだった。
ちょうど二宮さんも俺と目を合わせたので、シャトルランの電子音を遮らないように、俺は「あと少し」と大きく口パクしながらラインを指差した。
すると二宮さんは力を振り絞るように駆け出してラインに到着。
前年平均超えした瞬間、その場でへたり込んで脱落した。
余程無理したのか体力テスト終了後も、二宮さんの顔は紅く息も乱れている。
直後に体育の授業は終わったが、二宮さんに手を引かれ、体育館裏に誘われた。
「二宮さん。今回は朝練といい応援といい、何から何までありがとう」
「いやあ、ヨッシーこそありがとう! 熱烈な応援のお陰で頑張れたよ~」
「熱烈……? えっとアレかな。『あとすこし』って俺の口パクか」
「そうそう~。『あいしてる』っていう、あの口パクだね!」
「待って。似ているようで似てないよね? 口の動き的にも違わなくない?」
「と・に・か・く! ヨッシーが応援してくれたのが嬉しかった~♪」
そう言うと二宮さんは、誰も居ない体育館裏とはいえ俺に抱きついてきた。
健闘ハグという話は平均記録を超えたらのはずでは? と頭が混乱する。
「ふふふ、困惑してるねヨッシー? 体力テストで平均記録を超えたらハグと言ったが、別に私が超えてしまっても構わんのだろう?」
「有名キャラのセリフを流用して、凄く抜け穴的な解釈を主張し始めたぞ」
「てへ☆ 私が健闘したので、ハグさせてもらおう! ヨッシーは六回死ぬ!」
「意外と二宮さん、セリフの元ネタ詳しいね!」
ハグとは違う点で驚かされたが、もちろんハグ自体にもビックリしている。
俺に抱きつくのをやめた二宮さんは、全力シャトルランの余韻か、赤いままだ。
「たまには全力で運動するのも良いね~。気分も上がるし楽しかったよね!」
心の底から嬉しそうに微笑んだ二宮さんは教室へと戻っていき、期せずしてハグされた俺はしばらくの間、体育館裏で立ち尽くすのだった。
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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
友達ムーブでハグ決行!
ハグで六回死にそうになったのは、私の心臓だったけど!
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「いや、俺もドキッとしたが……。でも何故そこまでしてハグしたんだろう?」
先日の朝練で二宮さんが反復横跳びで『ポヨポヨ』を披露した際に、俺の反応が薄かったからだろうか?
「私のスタイルの良さを侮るなかれ!」といったノリのハグ?
さすがに友人の仲とはいえ、今日のハグは異性として意識しかけてしまった。
十四話目、終了です。
次の十五話目は、恋愛アドバイスを授けられたヒロインが
クラスの皆が居る教室の中で、委員長や彼女の友人が見ている前で、
いつも以上にスキンシップしてくる話です。甘えたがり系陽キャ女子です。
※総合評価10,000ptでした。ラブコメ作品の応援、誠にありがとうございます!




