十四話目:陽キャ美少女は、スキル[応援]を持っているらしい_01
あれから二週間ほど旧校舎を掃除した俺たちは、教師陣に丁重にお褒め頂いた。
俺なりに真面目に二宮さん考案の掃除兼体力強化メニューをこなしたが、いざ体力テスト当日となって体操服に着替え運動場に立った今、俺の表情筋は死んでしまった。
体操服姿でも見栄えの良いスタイルでクラスの男子たちの視線を集めている二宮さんが、俺と見事に正反対な輝かしい笑みで、顔を覗き込んでくる。
「ヨッシー既に気力が死んでるw 諦めたら試合終了だよ~」
「体力テストが憂鬱すぎて、試合終了で良いんじゃないかなと思えてきた」
「自信を持ってヨッシー! 修行シーンをこなした主人公は超絶的なパワーアップをするのが、定番中の定番ではないか~」
「それ漫画の話だよね? あと俺は主人公って柄じゃないし……」
体力テスト結果計測の為に駆り出された教師数人がやってきて、そろそろ体力テストが開始されそうになると、その場で二宮さんがぴょんぴょんと跳ね始めた。
「男女別で離れ離れになる前に……。フレー・フレー・ヨッシー♪」
「……あの、二宮さん。嬉しいんだけど、恥ずかしいんだが」
こういう時は自分から「ぽよぽよ」とは言わないんだと思いつつ俺は、他の男子たちが遠目で見ていそうな大きく揺れる両胸から目を逸らし、照れ隠しに頭を掻く。
「いま行ったのは私のチートスキル[応援]! この効果によってヨッシーの戦闘力は、なんと十倍もアップ!」
「現実もなろうだったらなあ……。でも二宮さんと朝練したし、頑張ってみるよ」
「体力テストで平均記録を超えたら、健闘を称えてハグしてあげよう~」
「平均記録……。インドア派の俺にはハードル高いなあ……」
二宮さんと雑談したことで、普段は憂鬱な体力テストも気が楽になった。
いざ体力テストが始まって男女別に分かれたことで合流してきた唯一の男友達・友木が目を細めながら、俺のことを凝視してくる。
「衛司、最近やけに二宮さんと仲良いな。学校中の男子が内心焦ってるかもな」
「俺がイケメンリア充だったら分かるけど俺だぞ? 焦る要素なくないか?」
「二宮さんがどれだけ人気あると思ってるんだ。ま、友人として応援はするぜ」
「おう、ありがとな。今からやるハンドボール投げは、特に苦手で緊張する」
「応援ってそっちじゃねえ!」
なぜかツッコミしてきた友木は、男子Aグループとして別の測定へ向かった。
出席番号順で男子Bグループに配属された俺は、ハンドボール投げ測定だ。
旧校舎を利用した朝練では二宮さん考案「水入り一リットルペットボトルを階段下から延々放り投げる」という脳筋極まりない特訓しかしていない。
しかし実際に測定を終えてみると二十メートル越えで、平均記録とはいかないまでも、ひとまず恥ずかしくない結果を出せた。
「運動神経は下の中レベルだった俺が……マジか……」
続く五十メートル走なども、何とか中の下ほどの結果を出し続ける。
そして最後の二十メートルシャトルラン測定の為に、男子Bグループ員として体育館に向かうと、反復横跳び測定を終えた女子たちが汗だくになっていた。
二宮さんは体育館へ来た俺に気が付くと、息も絶え絶えに駆け寄ってくる。
「朝練の成果はどうかなヨッシー?」
「今までの学生生活で一番好成績だけど、高一男子の平均より下回ってるかな」
「平均記録超えは出来ず、健闘ハグは出来ないって考えてるのかな?」
「いや、健闘ハグっていつもの冗談だよね? 二宮さんの[応援]を思い出してシャトルランも最後まで頑張ってみるよ」
「うん! ヨッシーたち男子の後に、女子もシャトルランだよ。お先に頑張れ~」
反復横跳び後の休憩で女子が観戦する中、男子シャトルランは開始された。
シャトルラン用の電子音放送を邪魔しないように、二宮さんが無言で大きく腕を振って応援してくれるのだが、他の男子たちが勘違いして「俺が俺が」と張り切り始める。
「ぜぇ、はぁ、朝の……モップがけ往復……」
俺は二宮さんと幾度となく行った朝練を思い出しながら、このシャトルランも奇跡的に中の下レベルの記録で終えることができた。
他の男子が集まって「二宮さんは俺を応援した!」「いいや俺だ!」と争い始めたので、巻き込まれないように体育館の隅で息を整えていると、二宮さんがやって来た。
いつも本作をお読み下さり、誠にありがとうございます!
続きは、本日の夕方か夜あたりに更新できればと。




