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十話目:陽キャ美少女が陽キャすぎて風邪だと気付かれていないのだが_02

 保健室の前まで戻ってきて恐る恐る扉を開けてみると、予想したお見舞い客はおらず、ベッドの上で睡眠中の二宮さんと、保健室の先生しかいなかった。


 痣やら出血をしている俺の姿を見て、保健室の先生がさっそく手当てを始める。

 先生はケガの状態を診察しながら、手際よく消毒と止血をしてくれた。


「血が出ていた右腕は少し擦り剥いただけだが、左膝の内出血は少し様子見だ!」

「そうですか。幸い帰宅部なんで授業が終わり次第、寄り道せずに帰ります」


 手当てを受け終わった俺は、ビニール袋からタマゴまよパンと、校内の通り道から少し逸れた所にある自販機で買ってきた経口補水液を先生に預ける。


「二宮さんが起きたら、昼食として渡してあげて下さい。それじゃあ失礼します」

「おっと待つんだ少年! 昼休みの間はここで安静にしていなさい。左膝を冷やすのにはちょうど良い時間だからね」


 ハキハキと大きい声の先生に、ベッドで寝ていた二宮さんが身体を起こす。

 眠気と倦怠感で反応の鈍い二宮さんだったが、左膝を氷で冷やしている俺の姿を見て、パチリと目を見開いた。


「あれ、ヨッシーどうしたの? ケガしたの?」

「情けないことに盛大にコケてしまった。そこまで酷くないから大丈夫だ」


 頬が火照っている二宮さんはベッドから降りて、俺のところまで歩いてきた。


「君も安静にしていないとダメだ」

 二宮さんを制止させようとして先生が近寄ったが、二宮さんはするりと脇を通り抜けて机の上に置かれたタマゴまよパンを手に取った。


「おぉおぉ~! 今日はもう会えないかと思っていたタマゴまよパン~!」


 先生が付けたであろう冷却シートを額に貼ったまま、二宮さんは瞳を輝かせる。

 大好物のパンを手にしながら、二宮さんは俺の顔を真っ直ぐに見据えた。


「そしてタマゴまよパン同様、今日はもう会えないと思っていたヨッシー!」

「別に良いんだが、俺ってタマゴまよパンと同じ程度の価値なのか……」

「タマゴまよパンとは一生を添い遂げる価値があると思ってますけども?」

「おっと、話が変わってきた。じゃあ俺はタマゴまよパン以下の価値ってことで」


 数十分とはいえ仮眠したからか、多少なりとも二宮さんにいつものノリが戻ってきた。


「いやいやご謙遜を。経口補水液まで買ってきてくれてるじゃないですか~」

「校内の自販機で買ってきただけだから、手間じゃなかったが」

「異議あり! 保健室までの通り道に自販機は無いので、ヨッシーは遠回りしています! 負傷して痛い膝で、少し遠回りしてまで買ってきてくれたのです! はい論破♪」

「……頼む二宮さん。今すぐ食べて安静にして寝るんだ」


 保健室の先生が何やら黙り込んで俺たちのことを見ているので、このやり取りを冷やかされるのではと思い二宮さんを牽制したが、先生の反応は意外なものだった。


「あぁあっ! 私は呑気に保健室に留まっている場合じゃなかったのか! 少年のように昼食の確保に走るべきだった! 養護教諭、失格ではないか……!」


 慌てた様子で身支度を済ませた先生が、二宮さんに尋ねる。


「今からでも買える物があったら私が買ってこよう! 何かリクエストは?」

「ヨッシーが自分の飲み物を忘れているので、飲み物が良いかと~」


 高熱で顔が赤い二宮さんは満面の笑みで親指を立てる。

 俺は俺で膝を痛めているので、先生の厚意に甘えることにした。


「特大あんパンに合いそうな『濃ゆいお茶』というのを購買でお願いします」

「分かった、それでは行ってくる! 二人とも安静にしているんだぞ!」


 先生は職員室から保健室に向かう時のように、大急ぎで保健室を飛び出した。


 もう昼休みの時間も残り僅かだが、俺は氷を膝に当てて冷やしながら、特大あんパンの封を開いて齧りつく。


 二宮さんも「ベッドに食べかすを落とす訳にはいかないし」と言い張り、先生の椅子を俺の隣へと寄せて、タマゴまよパンを食べ始めた。


「俺の特大あんパン、値段の割に量も多いしそこそこ美味しいんだけど、飲み物がないと、のどに詰まりそうになる……うぐっ」

「先生、戻って来ないね。あ、食べきれないならあんパンお譲り下さい~」


 四分の一ほど残ったパンを受け取った二宮さんは、パクパク幸せそうに頬張る。

 食欲はそこまで減退していないようなので、その点は一安心だ。


 経口補水液とあんパンもお腹に入れた二宮さんが、俺を見てにへらと笑った。


「いやあ~。いざ体調が悪いって分かると、人恋しくなるんですね~。誰かと話したくて仕方なかったから、ヨッシーが来てくれて良かった良かった」

「食事も終わったんだし、ベッドで横になってないとダメだって」

「はいはいは~い♪ 寝てた時、暑かったから、靴下も脱いじゃいましょう~」


 二宮さんはベッドに腰を下ろしてシューズと靴下を脱いでいく。

 そして胸元のリボンも外して枕元に置き、制服のYシャツも第三ボタンまで外してからベッドに身体を預けた。


 若干目の毒だが、二宮さんは病人なので何も言えない。

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