98話 竹下通り
お昼からという話だったが、朝食を済ませてから直ぐに街に繰り出した。
「どこか観たい所とかある?」
「私は結構見て回ってるんで・・・」
そうか。
エイミーはあちこち動き回ってるから大抵の所は知ってるのか。
知らないのは宿に引き籠もってる俺だけ。
「じゃあ、面白かった所とかある?」
「う~ん・・・あっ、私が盾を買ったお店はいっぱい色んなのがあってユウさんも欲しくなるのがあると思いますっ」
おっと・・・服屋とかスイーツとか、もっと女の子らしいのを予想してたけど。
そうだった、エイミーはこういう子だった。
それに、こっちの世界でスイーツって言うか、甘味にはまだ出会ってない。
「じゃあ、その店に・・・ん?」
「どうしました?」
「あの屋台で売ってるのって」
「クレープですね。人気みたいですよ」
「クレープってあのクレープ?」
「知ってるんですか?」
「甘いヤツだよね?」
「あ、私は食べた事無いから分からないです・・・」
「じゃあ、食べてみよう」
「は、はいっ」
屋台に並んでから気付いたけど、並んでるのは全員女の子だ。
皆、キャッキャ言いながら何を頼むか話してたりする。
そして、良く見ると街を行く女の子達は高確率で手にクレープだったり飲み物だったりを持っていたりする。
うん。ここって原宿かな?行った事無いけど。
違うのはSNSに上げる用の写真を撮ってない事くらいかな。
女の子って生き物はどこの世界でもやっぱり女の子だった。
順番が回って来てたので、リンゴのクレープを注文する。
先に並んでいた娘達が高確率でそれを注文していたのでマネしてみた。
「おまちどーさん」
「はい」
作る工程も見ていたけど、渡されたクレープはどこからどう見てもクレープで。
薄いクレープ生地の中に生クリームと賽の目切りにされたリンゴ。そして、蜂蜜も掛かっている。
「んじゃ、食べよっか」
「はいっ」
行儀が悪いかもしれないが、周りも歩きながら食べているので。
周りの女の子達に倣って歩きながらクレープを食べる。
「ふわあぁぁぁぁ」
「!?」
「甘いですっ!」
「うん。美味しい?」
「はいっ!」
エイミーは中々に酒豪だから甘い物は苦手な可能性があったけど大丈夫だった様だ。
「あの、すいません」
「ん?何?」
「何?ナンパ?」
「あ、違います、違いますっ」
「そう?で、何?クスクス」
クレープを片手に歩いている2人組のお姉さんに話しかけたらナンパを疑われてしまった。
「えっと・・・クレープ以外に何かオススメの甘味ってありますか?」
「そうねぇ」
「ウオデスボじゃない?やっぱり」
「かな?」
ウオデスボ・・・魚デスボ・・・?
「ウオデスボが1番オススメかな」
「それって、どこにあるんですか?」
「えっとねぇ・・・」
お姉さん2人組に場所も教えて貰い、エイミーと2人で謎の店ウオデスボにやって来た。
「え?」
「ご予約頂ければ明日は空きがございます」
予約しないといけない程の人気らしい。
ウオデスボは名前からは意外な程にしっかりした造りの店で。屋台でもそれなりに並んだんだから、もしかしたら結構並ばないといけないかと覚悟していたのにすんなり店に入れたが・・・まさか予約が要る程だとは・・・そりゃ誰も並んでないよね。
「それじゃあ、予約をお願いします」
「承りました。2名様で宜しいですか?」
「はい。お願いします」
「お時間の方でご希望はございますか?」
「お昼くらいは」
「申し訳ございません。お昼は既に予約で埋まっておりまして・・・」
「午前中は」
「はい。午前中でしたら空きがございます」
「それじゃあ、午前中でお願いします」
「承りました」
翌日、同じくらいの時間にウオデスボを尋ねると個室に通され。
弥が上にも期待が高まる。
ただ・・・お値段が気になる・・・。
全く持って見当が付かない。
それだけに怖くはある・・・が、エイミーは鼻息を荒くして、これでもかと目を輝かせているので、そんな無粋な事は考えない様努めた。
少し待つと出て来たのはモンブラン。
それこそ某SNSでめちゃくちゃ映えそうなド派手なモンブラン。
一口食べると、モンブランと言うよりも栗を食べている様な感覚・・・。
美味しいという言葉さえ忘れてしまいそうになるくらいに美味しい。
そして、気付くと一瞬でモンブランは無くなっていた・・・。
「はぁ~・・・美味しk・・・あれ?エイミー食べないの?」
「え、でも、こんな綺麗なの食べられないです・・・」
「めちゃくちゃ美味しいよ?」
「くっ・・・い、いただきます・・・」
一口食べてエイミーはしばらくフリーズした。
そして、恍惚の表情を浮かべまた一口。そしてまた恍惚の表情に。
「え?あれ・・・?もう無い・・・」
今にも泣き出しそうな表情になっている。
居た堪れない・・・。
「あの、すいません」
「はい」
「おかわりって・・・」
「申し訳ございません。ご予約分しかございませんので」
「1個・・・も、無理ですか?」
「申し訳ございません。またご予約頂ければ」
「それじゃあ、明日に予約を」
「次のご予約は1週間先まで埋まっておりまして」
「え?昨日、来て。今日の予約取れたんですけど・・・」
「あぁ、昨日は珍しくキャンセルが出たので」
「マジですか・・・」
「はい。1週間先になりますがご予約されますか?」
「ちょっと考えます・・・」
「はい。では、ごゆっくりお楽しみ下さい」
うん。2人共楽しめる物がもう無いんだけどね・・・。
後は、お茶くらいしか無い。
ズズズッ───。
あ、お茶も美味しいや・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。
ついさっき107話書き終えました。
何故か、ものっそいペース上がってます。文字数は減り気味ですけど(*´ェ`*)




