95話 解体新書
ダンジョンの7階層。
他に冒険者は居ないので狩りたい放題。
そして、エイミーはノリノリだ・・・。
「どんどん行きましょー」
「う、うん・・・」
Gの攻撃パターンは近付いてから飛び掛かる。
そう聞くと単調に思えるが。実際は、とんでもないスピードで壁を走ったり天井も走ったりするので毎回事も無げに叩き落としてるエイミーはやっぱり凄いと思う。
「ちょっと思ったんだけどさ」
「はい」
「もしかして、狙ってひっくり返してる?」
「はいっ。お腹の方は買取対象外なんで」
「そ、そっか・・・」
受け止めるだけでも大変そうなのに、狙って裏返しにしてたのか・・・。
そんな感じでひっくり返って起き上がれないGにウィンドアローを撃ち込むだけの簡単なお仕事(メンタルはゴリゴリ削られる)を熟した。
結構、レベルも上がってるのでMPに余裕もあり、このハイペースで狩りをしてもMPが枯渇する事は無かった。残念ながら。
「そろそろ今日の狩りは終わりにしましょうか」
「うん。お疲れ様」
「お疲れ様d・・・それは戻ってからですよっ」
「あ、そっか。ごめんごめん」
これがフラグにならず。無事にダンジョンを後にした。
まぁ、帰りも冒険者がいっぱい居て他の階層のモンスターを確認する事は出来なかった。
「他の階層ってどんなモンスター出るの?」
「えっと、他の階も虫ばっかりです」
「そ、そっか・・・」
にしては・・・。
「でも、人気の階層とかもあったでしょ?そこは何で人気なの?」
「弱くて素材が高いからですっ」
「へぇ~。エイミーがひっくり返してくれたから楽だったけど。あれって強い部類に入るの?」
「はいっ。速くて固くて人気無いみたいですっ」
それだけじゃない気もするけど・・・。
「あ、黒いから見難いってのもありますっ」
「そ、そっか・・・」
やっぱりエイミーとは美的感覚にズレがある気がする。
「あ、空いてますねっ。買取りしてもらいましょっ」
「うん」
冒険者ギルドの買取りカウンターはいくつかあり、どこも1組か2組並んでいるだけで直ぐに順番が回って来た。
「買取りをお願いします」
「はい。ギルドカードの提出と解体済みでしたらこの籠に素材をお願いします」
「あー、えっと、籠には入り切らな・・・」
「すいませんっ。裏の方で受け渡しさせて下さいっ」
「はい。それでは、こちらへ」
職員さんに案内されギルド内の一室へと入った。
「ぶふっ」
その部屋の中は何とも言えない生臭さと青臭さと血の臭いで充満していた。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「う、うん・・・鼻で息しなければ・・・何とか・・・」
「クルムスさーん」
「おう、何だ?」
「お願いしても宜しいですか?」
「何をだ?」
「こちらのお二人を」
「何すんだ?」
「いえ、それはお二人から伺って下さい」
「はぁ~・・・良い加減、丸投げすんのやめろ・・・」
「それでは、お願いしますね」
終始ハンカチを口元に当てながら、職員さんはそそくさと部屋を後にした。
「で?何すんだ?」
「買取りをおねg・・・」
「冒険者ギルドの方は守秘義務がありますよね?」
「ん?あるな。何か厄介事か?」
「ユウさんお願いします」
「え?うん。出すの?」
「はい」
「アイテムボックス」
「ほぅ」
「どこに出せば良いですか?」
「いや、何が出てくんだ?」
「アマメです」
「ほぅ。数は?」
「いっぱいです」
「んじゃ、あの机の上に出せ」
「はい」
アイテムボックスの中に手を入れると中の様子が文字通り手に取る様に分かる。辛い。
1匹、また1匹と取り出していく。
手袋をしてても辛い。
何が辛いって、脚は棘があって手袋をしてても痛いので脚は持てない。
触覚は千切れるから持てない。
なので、胴体を両手でしっかり持たないといけないのが辛い。
しかも、腹にはどでかい穴が空いていて体液が垂れている・・・。
まぁ、俺が空けたんだけどさ・・・。
「ちょ、ちょ、ちょい待てっ」
「え?」
「何匹あんだよ・・・」
「まだまだあります」
「マジか・・・だったらもう床で良い。適当に積み上げろ」
「はーい」
机に小さな山。床には大きな黒い山が出来上がった。
「なるほどな」
「??」
「他言無用でお願いしますっ」
「難しい言葉知ってんな。嬢ちゃん」
「えへへ」
「まぁ、こんなバカでかいアイテムボックス持ってたら秘密にしねぇとな」
なるほどっ。
「殻も触覚も脚も無傷だな。しかも・・・どれも、土手っ腹に一撃か・・・」
「買い取って貰えますか・・・?」
「おう。羽はちょいちょい吹っ飛んでるが。これなら良い値段になるんじゃねぇか?」
「ホントですかっ?えへへ」
「解体の手数料は貰うぞ?」
「はいっ」
「それから・・・コイツは固いから手間でな。今日明日じゃ終わらん。量も量だしな」
「そ、そうですか・・・」
「ま、3-4日だな。そんぐらいありゃあ出来る」
「はいっ。よろしくお願いしますっ」
「あ、お願いします」
「おう。あ、そうだ。受付で手続きしてけよ?」
「はいっ」
先程の職員さんに手続きをして貰い。宿に戻った。
「はぁ~~~~。疲れたっ」
ベッドに大の字になるとそのまま眠ってしまいたいくらいに身体が重い。
その反面、神経が高ぶっているのか頭は冴えている。
「お腹空きましたねっ」
「えっ」
Gを大量虐殺して食欲なんて無い。
解体部屋の臭いがトドメだったりもする。
「え?もうお昼過ぎですよ?空いてません?」
「あー・・・それ以上に疲れて動きたくないかな・・・」
「じゃあ、私が買って来ますねっ」
「え、あー、悪いから良いよ。エイミーだけ食べて来て」
「で、でも・・・」
「このまま寝ちゃうかもだし」
「はい・・・。じゃあ、行って来ますね・・・」
「うん。いってらっしゃい」
高ぶって寝れなかったんだけど。
お腹はしっかり空いていて、エイミーが居なくなってからお腹が鳴ったりしていた。
Gの姿が目に焼き付いて離れなかったので夜ごはんも食べられないかと思ったが、空腹には勝てず。
普通に夕飯は宿の食事を取った。
俺も図太くなって来たな。
いつもお読み頂きありがとうございます。
ストックもあって書くペースも維持出来ているので。もしかしたら来月になってもしばらくは毎日更新する可能性があります。
まだ未定ですが(*´ェ`*)




