94話 jojo
街に到着してから数日間はダンジョンに潜らず情報収集や準備期間に充てた。
言うまでも無く・・・情報収集したのも対策を練ったのもエイミーさんで。
俺はと言うと・・・。
「良かったらこれ皆さんで食べて下さい」
「良いんですか？すんません」
エイミーさんに持たされた差し入れを持って馬の様子を見に来た。
「おーい。皆、差し入れ下さったぞー」
「「「おおぉーーー」」」
「ちゃんと礼を言えっ」
「「「あざまっす」」」
「いえいえ。ウチの子の様子はどうですか？」
おっと・・・オゥンドさんのが感染ったかもしれない・・・。
「どっちも賢い子で世話するのも手が掛からずに助かってます」
「春まで長い期間お世話になりますけど、よろしくお願いします」
「任せて下さいっ」
エイミーさんから言われた仕事はこれだけなので宿屋に戻りゆっくりする事にした。
ガチャ───。
「あ、エイミー帰ってたんだ？」
「はい。厩務員の人はどうでした？」
「差し入れも喜んでくれてたし。ちゃんと面倒見てくれると思う」
ん？あれ？
「それどうしたの？」
「あ、買っちゃいましたっ」
「エイミーが使うんだよね？」
「はいっ」
「エイミーのスタイルに合わなくない・・・？」
軽く屈んだだけでエイミー自身がすっぽりと収まってしまう程大きな盾が壁に立掛けられてあった。
「ここのモンスターは強いみたいで。これがベストだと思ったんで・・・」
「エイミーがそう言うなら、そうなんだろうね。どんな戦法で行くの？」
「私がタンクをやってユウさんがアタッカーです」
「え？エイミーってタンクも出来るのっ？」
「やった事無いので分からないですけど・・・ユウさんの事は命に変えても守りますっ」
「いやっ、そこまでじゃなくて良いよっ。2人共安全に怪我しない様にやろう？」
「いざと言う時は命に変えてもっ」
「いや、その、いざと言う時が来ない様にね・・・」
「は、はい・・・」
いのちだいじに・・・エイミーは意外とガンガンいこうZE☆だからなぁ・・・。
「あっ、それから、防具も買っちゃいましたっ」
「おぉー。どんなの？」
「こっ、これですっ」
エイミーがベッドの脇に置いてあった布の袋を開けると革製の胸当てや籠手、脛当て等が出て来た。
「おぉー、装備してみてよっ」
「は、はいっ」
慣れてない様で手間取りながら必死に装備していく。
手伝った方が良いかとも思ったが・・・エイミー以上にやり方が分かって無いので逆に邪魔する事になるだろうと判断して、そろそろカンストするんじゃないだろうかとも思う見守りスキルを発動した。
しばらく待っていると装備が完了した。
慣れていけばもっと手早く装備出来る様になるんだろう。
「おぉー、強そうに見える」
「そ、そうですかっ？」
「うん。冒険者って感じ」
「えへへへへ」
脱ぐ時も装備する時と同様、手間取りながら必死になっているエイミーを見守った。
大体の雰囲気が見たかっただけだからキッチリと装備する必要は無かったんだけど、それを言うのは無粋だろう。
その事に気付いたのも今の今だから手遅れだったし・・・。
その翌日からダンジョンに潜る事になり。朝も早くから冒険者ギルドへ行き丁度良い依頼が無いか探す。
「何か良いのあった？」
「無いですね。良いのを受けようと思ったらもっと早くに来ないとですね」
「そっか。じゃあ行く？」
「はいっ」
良い依頼を受けようと思ったらもっと早く起きないとなのか・・・。
ダンジョン前でギルドカードを提示して職員さんの許可を得てからダンジョンへと入った。
「どこで狩るとかって決めてるの？」
「はいっ」
「えっと、結構深い階層？」
「ん～、そこまでじゃないですっ」
「そっか。まぁ、着いてくよ」
「はいっ。ユウさんは安心して私の後ろを着いて来て下さいっ」
「うん」
「あ、でも、私じゃ倒せないんで攻撃はお願いします」
「うん」
1階層。
そこそこ冒険者が居て新たにモンスターが湧くのを待っている。
湧き待ちってヤツか。
2階層。
1階層よりも冒険者の数が多い。
3階層。
2階層同様に人が多い。
4階層。
2・3階層よりは少ないけど、そこそこ多い。
5階層。
一気に人が減ったけど、それでもちらほらと居る。
6階層。
更に少なくなった。
因みに、ここまでまだモンスターとは遭遇していない。
他の冒険者との戦闘中にも遭遇していない。
なので、まだどんなモンスターが居るのか分かっていない。
「そろそろ出ると思うんで、気を付けて下さいね」
「うん」
7階層。
良い加減モンスターが出なさ過ぎて、本当にここがダンジョンなのか疑わしくなって来た。
「ここで狩ります」
「あ、うん」
「ここは人が居ないらしいんで」
「そうなんだ？」
「はい。なんでアイテムボックスとかも使い放題ですっ」
「あ、なるほど」
エーリューズのダンジョン同様に階段のある辺りは安全地帯になっている。
基本的にダンジョンはどこもそんな作りになっているらしい。便利過ぎる謎仕様だ。
安全地帯を出て通路に出ると。
早速、不穏な音が耳に飛び込んで来た。
カサカサカサ───。
「あ、言うの忘れてましたっ」
「えっ？」
「暗いと、黒くて見難いからライトを明るめにお願いしますっ」
「え、あ、うん・・・」
嫌な予感しかしない・・・。
カサカサカサ───。
「来ましたっ！」
ガンッ───。
「今ですっ！」
「ウ、ウィンドアロー」
バシュ───。
「おぉぉぉぉ、1発でしたっ。やっぱりユウさんは凄いですっ！」
「う、うん・・・」
地面を走って来たかと思ったら、そのままの勢いで壁を走り。
羽を広げてエイミーに飛び掛かったが。エイミーの大盾に阻まれてひっくり返った所をウィンドアローで倒した。
小型犬サイズだけど、どっからどう見てもGだ。
人型じゃないから「じょうじょう」言わないだろう・・・そのまま大きくなっただけ・・・。
「背中の殻も羽も触覚も脚も買取対象みたいなんですけど」
「う、うん・・・」
「解体するのに時間掛かるみたいなんで。アイテムボックスにそのまま入れて下さい」
「え？これを？俺の？アイテムボックスに？入れる？Gを？マジで？」
「え？マジですっ」
マジか・・・。
いや・・・解体しろって言われる方が辛いけどさ・・・アイテムボックスってどういう仕組みになってるか分からないけど、気分的にはGをポケットに入れる感覚に近い・・・辛い・・・。
「ア、アイテムボックス」
「入りましたねっ。どんどん行きましょー」
「お、おー・・・」
いつもお読み頂きありがとうございます。
