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93話 赤ずきん

エーリューズを出発して数日が経ったが、旅は順調で今の所何の問題も無い。


これからまだまだ寒くなるのでマントだけでは心許ない。

と、言うか、確実に凍死してしまう。いや、低体温症か。


なので、テントや寝具も買い込み。服も厚手の物に一新した。

その所為で色々と出費があったが馬が思いの外安く買えたので、(ふところ)にはだいぶ余裕はある。


エーリューズを出る前。

冒険者達がエイミーの事を「最高赤ずきん」と呼んでいるのを何度か耳にした事があった。


童話の赤ずきんってこっちにもあるのかとビックリもしたけど。

それよりもエイミーは赤い頭巾なんて被ってないし、髪の色も赤くはない。

栗色とまでは言わないがちょっと明るい黒髪といった感じなので赤ずきんという呼び名には違和感があった。

そして、ロリ糞ペド野郎でも相手に迷惑を掛けなければ問題無いと思う。

そこは個人の趣味嗜好の範囲であって他人が口出しするべき領分では無い。


そんな風に思っていたが、完全に勘違いだった。


「最高赤ずきん」では無く「サイコ赤ずきん」の聞き間違いだった。

赤ずきんの由来はコボルトの返り血を頭から浴び。赤い頭巾でも被っている様に見える事から。

安全地帯でコボルトを嬉々として解体し続ける俺をサイコ。

2人合わせてサイコ赤ずきん。


そう。

これは俺達2人を指したあだ名だった・・・。


エーリューズを出る前にエトーさんに挨拶をしに行った時に教えて貰ったが。

爆笑しながら言われた・・・。


ロリ糞ペド野郎なんて言ってごめんなさい。

最低なあだ名を付けた糞野郎でしたね。絶対に許さない。エトー、お前もだっ。



そんな嫌な思い出は忘れて。今日も元気にパカラっている。


「順調ですねっ」

「なのかな?オゥンドさんの護衛してた時は基本歩きだったから、圧倒的に早いのは分かるけど。冬までにカンサスかキーシュまで着けるかな?」

「どうでしょう?いきなり目的地を目指すよりも大きな街を目指した方が良いと思いますっ」

「そうなの?」

「はい。と言うか、目指してます」

「あ、はい・・・」


ひたすらにコボルトを狩り続けていっぱいいっぱいになっていた俺を他所にエイミーはしっかり情報収集をしていて、目的地までのルートはほぼ構築されているそうだ。

そして、速いと言ってもサラブレッド程大きくなく。ポニーとサラブレッドの中間くらいでオゥンドさんの馬よりもだいぶ大きい。

まぁ、ポニーもサラブレッドも見た事は無いんだけど。


ちなみに、荷台を牽いてなくても休憩はそれなりに必要で今も休憩中だったりする。

騎乗中は喋ると舌を噛みそうなので基本的に無言だから、自ずと休憩中に情報交換をする。

あ、まぁ、交換じゃないな。俺が教えて貰うだけか・・・。


休憩のタイミングもエイミーが決めてるし。野営地もエイミーが・・・。

エイミーさん・・・出来無い事ってあるんですか・・・?


「そろそろ出発しましょう」

「うん」



寒くなり始め。

行商の人と野営地が被る事どころかすれ違う事もめっきり減った今日此頃。


「そろそろ大きな街に着きます」

「おぉー」

「そこで冬を越しましょう」

「で、春になったら出発?」

「はい」

「護衛はどうするの?」

「え?もう馬が居るんで、そのまま行った方が良いと思いますよ?」

「あ、そっか。でも、そろそろお金も厳しくなって来たし」

「そこにもダンジョンがあるみたいなんで」

「そうなんだ?」

「頑張って稼ぎましょ」

「うん」



そこは山間(やまあい)にある大きな街でエーリューズに続いて俺にとっては2つ目のダンジョンだ。

そして、ビックリしたのが街の中にダンジョンがあった。


「エーリューズもその内そうなるかもですよ?」

「え?どういう事?」

「エーリューズはたまたま村の近くにダンジョンが見つかったんですけど」

「うん」

「ここはたぶんダンジョンの周りに街が出来たんですよ」


ん・・・?

あぁ、ダンジョンが発見されて、そこに皆が移って来たのか。

エーリューズもって事は、村自体が拡張されていってか移動してダンジョンが村というか街の中にある状態に変化してくかもって事か。なるほどね。


長期滞在する宿を決め、冒険者ギルドでダンジョンの情報収集も済ませ。

ベッドに横になり一息付く。


ちなみに、良い宿を探したのも値引き交渉したのもダンジョンの情報収集したのもエイミーさんだ。

俺はそれを後ろから見守るという重要な仕事に徹した。


「馬なんですけど」

「うん」

「冒険者ギルドに預けっぱなしだと世話係の人が手を抜くみたいなんで」

「あー、うん」

「何日かに1回は顔を出した方が良いみたいです」

「ダンジョンに行った帰りに顔出しても良いかもね」

「それと、たまに差し入れもした方が良いみたいです」

「世話係の人に?」

「はい」


預けるのにお金払ってるのに、まだ掛かるのか・・・。


「そうした方がちゃんとやってくれるってエリーさんが言ってました」

「なるほどね。何を差し入れて良いか分からないから任せても良い?」

「はいっ」

「それにしても、エイミーってなんでも出来るよね」

「なんでもは出来無いです。出来ることだけです」



と、どこかで聞いた事がある様なセリフを返された。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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