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92話 agoge

まず朝に冒険者ギルドへ行き、西に向かう行商の護衛依頼が無いか聞く。

それからダンジョンに向かいコボルトを狩る。

そんな生活を1ヶ月は続けている。


そして、エトーさんの土下座事件。

あれの所為で将軍殺しなんてあだ名を付けられてしまったが、カールさんが良い感じに訂正した噂を流してくれたので、1週間もした頃には将軍殺しと呼ばれる事は無くなっていた。


本当にカールさんには頭が上がらない。



こっちの世界に来て、もう半年近く経っているかもしれない。

来た頃は初夏だったが気付けばもう秋で日中は暖かい日もあるが朝晩はめっきり寒くなった。


まぁ・・・季節の話はどうでも良くて・・・。

俺は今・・・壮絶に悩んでいる。


オゥンドさんの長期護衛で冒険者ランクはEに上がり。

この1ヶ月、コボルトを狩りに狩りまくったおかげで更に上がってDになった。


問題はそこでは無く。

もう(じき)、冬が来る。

冬になると行商の数が圧倒的に減るらしく・・・後、一月もすれば依頼は絶望的と言われてしまったのだ。


冬場の移動は危険も多く、野営も大変。何よりも農村に済む人達は冬場の収入が激減するので財布の紐が果てしなく固くなるらしい。


まぁ、そんな行商の事情は俺には関係無くて・・・。

早く西に向かいたい。


そこで最有力なのが馬を買ってエイミーと2人で西に向かうという案。

行商をする訳ではないので、荷台は牽かずに馬に直接跨る。なので移動するペースはかなり高い。


次いで、冬場は大人しくエーリューズに留まり、春以降一気に行商が増えるのでそのタイミングを待つ。

出来ればこれは避けたい。


「悩むくらいなら動いた方がユウさんらしいですよ?」

「いや、まぁ、そうなんだけど・・・」


そう。

お馬さんって思ってた以上に高くて・・・。

ここ1ヶ月、コボルトを狩りに狩りまくって貯めたお金が一気に吹っ飛ぶ。


あぁ、それだと語弊があるので訂正しておく。

狩ったのはエイミーで俺はひたすら解体していただけだ。

しかも、モンスターの入って来ない安全地帯で。


エイミーが狩って、それを安全地帯まで引き摺って来てくれる。

俺はそれを解体していくが解体よりもエイミーの狩るペースの方が早いのである程度溜まるとエイミーも一緒に解体をする。

解体が済み、買取りに出せる状態にした物をアイテムボックスに収納するが。1日中狩りをしても満タンになる気配は無いのでダンジョンと冒険者ギルドを往復する手間も省けて、かなりのペースで稼げた。


その稼ぎが一瞬で吹っ飛ぶ・・・。


「何でそんなに悩んでるんですか?」

「いやぁ、まずお金かな」

「馬の代金ですか?」

「うん。あんなに高いと思わなかったんだよね。そりゃ、オゥンドさんもあれだけ大事にするよなー。って感じ」

「向こうに着いたら売れば良いんですよ」

「え?」

「馬の価値はどの地域でもそこまで差は無いと思いますよ?」


そうか。

移動が済んでから売ってしまえば全額は無理だろうけど、半額くらいは返ってきてもおかしくないのか。


「でもさ?馬の世話とか・・・」

「私が出来ます」

「あ、うん・・・」


1番の問題は俺が馬に乗れないって事なんだけど。

まぁ、エイミーは乗れるんだろうな・・・。


「あんまり時間も無いから早く買って早く練習しましょう」

「え?」

「馬に乗る練習を」

「あ、エイミーも乗れないの?」

「乗れますよ?」

「あ・・・俺の練習ね・・・」

「はい」


全部、お見通しか・・・。


「乗れないですよね?」

「うん」


当然、乗れません。


「あ、でも、馬なんてそう簡単に売ってないってエトーさんも言ってたし」

「エリーさんに頼んであるんで大丈夫です」

「あ、うん・・・」


エリーさんか・・・ギルマスだからどうとでもなるんだろうなぁ・・・。


「これからしばらくはお昼くらいには村に戻って乗馬の練習ですね」

「もしかしてさ」

「はい」

「もう馬の準備出来てるとか?」

「明日届くそうです」


めちゃくちゃ勝手に話進めてんじゃん・・・。


「コボルトの素材って全然入って来ないらしくて。そのお礼でだいぶ安くして貰えましたっ」

「そ、そうなんだ・・・」


誰もコボルトは狩りたがらないだろうし。強くないけど流通はあんまり無いのかもね。


「3日もあれば乗れる様になりますから。旅の準備もしないとですねっ」

「早くない?そんな早く乗れる様になる気しないんだけど・・・」

「大丈夫ですっ」


根拠は・・・?


と、思っていたが・・・3日後には乗れる様になっていた。


理由は簡単。

才能があったとかでは無く。ひたすらに(しご)かれた。


冒険者ギルドには厩舎もあり。

馬を放牧する用の柵で囲われた牧草地も村の外れに所有していた。

そこを借りて乗馬の練習する事になったがエイミーがポーションを大量に抱えてやって来た時は「なんで?」と思ったが・・・怪我をした時の為という事もあるだろうが、馬から振り落とされる度にポーションを飲み。休み無くスパルタンに練習させる為だった・・・。


結果として3日でそれなりに乗れる様になった。



馬の購入金額はエトーさんから聞いていた金額の半分以下だった。

ごくごく稀に持ち込まれる事もあるが少なすぎてどうにもならなかったが。

コバルト鉱石も量さえ確保出来れば使い道は色々あるそうで。俺達が毎日大量に持ち込んだ事で結構な利益が出たそうだ。


出来ればエーリューズに残ってコボルトを狩り続けて欲しい。と、引き止められたりもしたが。

出た利益の還元として馬の割引を頑張ってくれたらしい。


そんなこんなで意外と滞在期間が長くなってしまったエーリューズと別れを告げ。

エイミーと2人、西に向かう旅へと出た。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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