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90話 座

「コボルトでしたら待ち時間も無く狩れるはずです」

「狩ってる人って居るんですか・・・?」

「稀に」

「稀に・・・」


うん。

やっぱあの可愛い生き物は狩れないよね・・・。


「冒険者は増えているのですが。まだまだ宿屋等も人手は足りていないので、仰って頂ければいくらでも仕事は斡旋出来ます」

「えっと、例えばどんな仕事ですか?」

「宿屋の調理場や鍛冶屋の手伝い等ですね」

「鍛冶屋か・・・」


男の子としてはちょっと憧れがあるし。

コボルトを狩るくらいなら鍛冶屋の方が全然良いかな。


「よーし。行くぞ」

「え?」


と、いきなりエトーさんに肩を組まれた。


「どちらに行かれるのですか?」

「ダンジョン」

「え?」

「百聞は一見に如かずって言うだろ?見た方が早ぇよ」

「いや、そりゃそうですけど・・・」

「暗くなるまでにはお戻り下さい」

「おうっ」

「え、え、え」


エトーさんに引き摺られる様に連行されてしまった。


「書類仕事ばっかで息が詰まんだよ・・・」

「いやいやいや、1人でダンジョン行けば良いじゃないですかっ」

「折角なんだ。着いて来い。っつーか・・・お前は口実だから必要なんだよ」

「いやもう口実とか言ってるしっ」

「じゃねーと出して貰えねーんだよ」


エトーさんなんて居なくても全然回りそうだし。

むしろ居ない方が・・・と出かかったが、ギリギリの所で耐えた。


「もしかしてエトーさんってギルドマスターになったんですか?」

「いや?ギルマスは姉貴だ」

「ですよね」

「俺はサブマスだな」

「じゃあ、前と変わらないんですね」

「前のが気楽で良かったんだがな・・・」


ダンジョンにだいぶ近付いて来たが・・・舗装されている。

アスファルトが敷いてある訳じゃないけど、しっかりと踏み固められてちゃんとした道になっていて。

ダンジョンのある辺り。ガレ場も道が作られ柵も設置されていた。


「サブマスターお疲れ様です」

「おう」

「どうしたんですか?」

「見回りとコイツ等にダンジョンの説明をしに来た」

「あぁ、書類仕事から逃げて来たんですね」

「ぐっ・・・」

「めちゃくちゃバレてますね」

「ギルドカードの提示をお願いします」

「おう」

「はい」「は、はいっ」


ダンジョンの入り口には冒険者ギルドの職員さんが居て。出入りの管理をしているらしい。


「あれが居るからダンジョンに来たらバレんだよな」

「まぁ、そうでしょうね」

「見回りも居るから俺の仕事が無くてよ・・・」

「書類仕事があるじゃないですか」

「うっせぇ。やりたくねーんだよっ」


久しぶりのエーリューズのダンジョン。

1階層のスライムは誰も狩っておらず無人。

2階層のゴブリンは人気で所狭しと順番待ちが出来ている。

問題の3階層。コボルトの居る階層は・・・無人・・・。


その後もコボルト以外の階層は誰かしら狩りをしていた。


「これは・・・狩りをするならコボルトになるんですかね・・・」

「おい、マジか・・・」

「何でコボルトって()いてるんですか?」

「「えっ?」」


エイミーとはゆっくりお話しないといけないかもしれない。

美的感覚が違うのか・・・倫理観が違うのか・・・。

行きも帰りもエイミーは躊躇無く短槍でコボルトの喉を一突きで仕留めていた。


折角だからコボルトをもっと狩りたいと言うエイミーを(たしな)め。

職員さんの言い付けを守り、まだ陽が高い内に冒険者ギルドに戻って来た。

そう。時間厳守だから。


まだ陽が高いとはいえ、とっくの昔にオゥンドさんは出発している。

俺とエイミーがエトーさんに無理矢理連れて行かれたと職員さんが伝えた所。

オゥンドさんからそこそこしっかりとクレームが出たらしく職員さんの前でエトーさんが正座させられている。

罰として3ヶ月の冒険者資格の停止措置を言い渡されていた。

(すなわ)ち・・・3ヶ月間ダンジョンへの出入りが禁止となった。


「そ、それだけはっ・・・」

「今後の業務態度次第で短縮も考えます」

「くっ・・・ア、アレだっ。コイツらに頼まれたから仕方なくっ・・・な、なぁ?」

「あー、オゥンドさんのお見送りしたかったなー。ね?エイミー?」

「お、お見送りはしたかったです・・・」

「お、お前等・・・ギルマスの俺を敵に回す気か・・・?」

「反省の色が見えないので半年に延長しますか?」

「すいませんでした」


エトーさんの正座は気付けば土下座に変わっていた。


リアル土下座って初めて見たけど。

反省の度合いとか、最上級の謝罪であるとか関係なくただただ引く。

同情とかも無く、そんな事をしている人の近くに居たくないという気持ちだけが湧いてきた。


「形だけで申し訳ありませんが。一応は反省している体ですのでお許し頂けないでしょうか?」

「あ、はい、大丈夫です」


それにしても、この職員さんってエトーさんの事嫌いなのかな?

一々、言葉に棘がある。



俺はこの村なのか、ここの冒険者ギルドなのか、エトーさん絡みなのかは分からないが・・・相性がどうにも悪い。

冒険者ギルドの職員も増え。ダンジョンの入り口で出入りの管理をして、ダンジョン内も元冒険者の職員さんが常に見回りをする様になり夜間のダンジョンも開放される様になった。

それでも、朝からダンジョンに潜り、陽が沈むまでに村に帰って来る冒険者が多い様で。

朝から潜っていて既に今日の狩りを終えた冒険者達。それからお昼休憩をしに戻って来ている冒険者達。

その他諸々・・・結構な人数が冒険者ギルド内に居て、この光景を思いっきり見られてしまった。


その所為で俺は冒険者ギルドのサブマスターに土下座をさせる冒険者として認知されてしまった。


目立ちたくないのにー。


いつもお読み頂きありがとうございます。


前話のあとがきで3日連続更新すると書きましたが。

今月中は毎日更新しようかと思います。

ブレブレで申し訳無いです┌○


11月からは2日に1回更新に戻すと思います。

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