表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/182

87話 とんぼ返り

突然、オゥンドさんが街に戻ると言い出したので釈然としないまま来た道を回れ右して戻っていた。

ちなみに後ろを着いて来ていた護衛の居ない行商はオゥンドさんの勧めでそのまま次の村へと向かった。


「だいぶ陽も傾いて来ましたね」

「着く頃には真っ暗になっているでしょうね」

「あー、まだ距離あるんですか」

「そうですね。後、2時間は掛かると思います」

「そうですか・・・」


野営地から中途半端に進んでいたので1日と少し掛けて進んだ道程を1日で戻らなければならない。


「休憩も減らしましたから・・・この子達には負担を強いて申し訳ないです」


うん。俺とエイミーにも申し訳ない気持ちは持って欲しい。


普段よりも休憩が少なく、時間も短い。そして、移動速度も普段より少し速い。

なので、街に到着した時には気が抜けたのもあって膝から崩れそうになった。


「ようやく着きましたね」

「はい・・・」

「私もこのまま宿を取って休みたい所ですが。打ち合わせ通りお願いしますね」

「は、はい」


一昨日と同じ宿を取り、エイミーだけ先に宿に入り、俺とオゥンドさんはその足で商業ギルドへと向かった。


「なるほど。その様な方法で襲撃していたのですか」

「はい。先行して前方を警戒していたユウさんの機転で命拾いしました」

「それと、寝坊して出発が遅れた事ですか?」

「そうですね。うっかりに助けられました」

「ユウさんが目撃された。襲撃された行商と面識は?」

「野営地で簡単な挨拶をした程度ですね」

「まぁ、そこは突っ込まない事にしましょう。明日の朝、現場を調べに行かせるので。情報料の支払いはそれ以降になりますが宜しいですか?」

「明日の昼までに出発出来れば問題ありません」

「なるべく急がせますが。遅れた場合の滞在費はこちらで持たせて頂きます」

「滞在費だけですか?」

「・・・売上の補償もしましょう」

「早いに越した事はありませんが。その時は宜しくお願い致します」

「他に何か情報があれば」

「いえ、全てお伝えしました。その為にかなり飛ばして戻って来たのでそろそろ宿に戻っても?」

「・・・はい。調べが済み次第、宿に人をやります」

「はい」

「有益な情報ありがとうございました」

「いえ、商業ギルドに登録している者として当然の努めです」

「・・・では、ゆっくり休んで疲れを癒やして下さい」

「はい。失礼します」


商業ギルドを後にして宿に戻ろうと思ったが・・・。


「ユウさんは先に宿にどうぞ」

「え?オゥンドさんは?」

「私はあの子達の様子を見てから向かいます」

「あ、はい」


相変わらずオゥンドさんはブレなかった。


「お、おかえりなさいっ」

「うん。ただいまー」

「お疲れさまですっ」

「いやぁ~、ホントに疲れたよ・・・いきなり商業ギルドのギルドマスターに会わされるし・・・めちゃくちゃ緊張した」

「そ、それは、お疲れ様ですっ」

「あれだったら、まだ歩き続けてる方が100倍楽だったなぁ」

「で、ですよね・・・」

「あー、でも、エイミーも疲れてるだろうし。先に寝てるかな?って思ってたんだけど」

「え?全然疲れてないですよ?」

「え?」

「え?」


うん。俺はクタクタ。もう1歩たりとも歩きたくない。


「よぉし・・・それじゃあ、寝よっかな」

「あ、お湯貰って来ますね」

「あー・・・流石に汗だくだから拭いた方が良いか・・・んじゃ、お願い」

「はいっ」


もう、それさえも面倒臭いからこのまま寝ちゃいたい・・・それくらいに疲れてる。

危うく寝落ちしそうになったが何とか堪え、エイミーからお湯の入った桶を受け取り身体を拭いた。


拭いてる間、何度も船を漕ぎ何時寝たのか記憶があやふやだったりするが、グッスリ寝たおかげで起きた時には疲れもしっかり取れていた。


「おはようございます」

「はいはい。おはようございます」

「どうなりました?」

「交渉しましたが、これが精一杯でした」


と、指を1本立てた。


「1?情報料ですか?」

「はい」

「銀貨1枚ですか?」

「いやいや、金貨ですよ」

「おぉー、そんな貰えるんですね」

「一応、言っておきますが。金貨10枚ですよ?1枚ではないです」

「え?そんなにっ?」

「1人当たりではないですよ?」

「そ、それは、もちろんっ」

「分配ですが」

「え?俺も貰えるんですかっ?」

「ユウさんだけでなく、エイミーさんにもお渡ししますよ」

「えっ!?」

「私が5枚。ユウさんが4枚。エイミーさんが1枚で宜しいですか?」

「わ、私・・・何もしてないですよ・・・?」

「オゥンドさんが半分。俺達のパーティーで半分って事ですか?」

「そういう分配もありますが。今回は、危険手当や発見者としてユウさんに4枚」

「はい」

「作戦を立てたり、交渉をしたのが私なので私が3枚。そして、滞在費や雑費、売上の補填分で2枚。合わせて5枚」

「はい」

「少なくて申し訳ありませんが。エイミーさんは残りの1枚。その様な感じの分配です。ザックリですが」

「す、少ないなんてっ」

「純粋な取り分としては俺が1番多いって事ですか?」

「そうなりますね」

「良いんですか?」

「要らなければ私が全部頂きますが?」

「要ります要りますっ」

「不満が無ければ、その様に分配しても宜しいですか?」

「はい。ありがとうございます」

「エイミーさんも宜しいですか?」

「は、はいっ」



詳しく聞いてみると。

金貨10枚も貰えたのは、ここ最近の被害が大きかった事と視界の良い開けた場所で穴を掘って奇襲を仕掛けるという手法が新しいものだったかららしい。


オゥンドさんの取り分が少なく感じたが、商業ギルドに対する貢献度が上がるので長い目で見ればオゥンドさん的に旨味が大きいとの事だ。

次の村への到着が遅れる事も実は全然問題無いらしく。

雨で足止めを食らったり、橋が崩れて迂回する事になったり、多少の遠回りは日常茶飯事との事だった。


それなのに、売上の補償させたのか・・・恐ろしい・・・。


いつもお読み頂きありがとうございます。


3日連続更新今日でラストになります。

また次回からは奇数日の更新となります┌○

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ