85話 寄生
野営地に着いてまずした事は。
先客が2組程居たので、会釈をしながら前を通り過ぎ。
「お疲れ様です。あちらの方使わせて頂きますね」
「はい。どうぞ~」
と、オゥンドさんが簡単な挨拶をして通り過ぎていった。
「まずは、この子達の世話をするので、水をお願いします。エイミーさんは食事の準備をお願いします」
「はーい」「はいっ」
「ですが。こういう時に護衛が居るとやはり良いですね」
「え?」
「前を通る時にねちっこい値踏みをする様な目を向けられるのですが」
「え、あ、はい・・・」
「稼ぎの少ない行商は護衛なんて雇えませんから、下に見られますよね」
「あー・・・」
「向こうは護衛無しが1組と護衛1人が1組。ちょっとした優越感に浸っています」
これまでも野営地が被る事は何度かあったが、こんな事を言うのは初めてだったので聞いてみた所。
商業ギルドで年も商いの規模も近い行商にマウントを取られたのが原因らしい。
「こちらはもう大丈夫ですので。エイミーさんの方を手伝ってあげて下さい」
「はーい」
エイミーの元へ手伝いにやって来たは良いがエイミーがテキパキ動き過ぎてて、下手に手を出すと邪魔にしかならない。
「あー、何か手伝える事あったら言ってね」
「はいっ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
どうやら手伝える事は無いみたいだ。
ユニークスキル見守るを使う時が遂に来た様だ・・・。
「どうかされました?」
「えっ」
「エイミーさんしか働いてない様ですが・・・」
「あ、何か逆に邪魔しちゃいそうで・・・」
「あぁ、なるほど。エイミーさん」
「は、はいっ」
「後は私がやるので休憩して下さい」
「えっ」
「昨日の夕食程ではありませんが、腕に縒りを掛けて作りますので」
「は、はいっ」
「出来たらお呼びびしますね」
「はーい」「はいっ」
「って、なんでユウさんまで休憩する気満々なんですか・・・」
「あれ?」
「ユウさんは手伝って下さい」
「は、はーい」
一応、手伝いはしたが・・・助けになっているかは怪しい。
要所々々でユニークスキル見守るを発動しながらいつものメニューが完成した。
スープとパン。
街から近い事もあって野生動物と遭遇する事が出来なかったので今日は肉抜き。
あぁ・・・申し訳程度の干し肉は入っているが出汁を取るのがメインなので食いでは無い・・・。
昨夜の豪華な料理との落差にちょっとヘコんだが他には問題も起こらずフラグは回収されないまま眠りに着いた。
「ユウさん」
「んん・・・はい・・・」
「交代お願いします」
「あー・・・はい・・・起きます・・・」
野外で寝るのもいい加減慣れた。
地面が硬かろうが気にならなくなった。
多少なら虫が出てももう気にならない。
でも、中途半端なタイミングで起こされるのは未だに慣れない・・・。
アイテムボックスから取り出した桶の水で顔を洗い目を覚ます。
辺りを見回すと焚き火の明かりが1つ見える。
そう言えば他の行商と野営地が被ったんだったな。
と、思ったが2組居たはずなのに明かりは1つしか見えない。
「あぁ、それはですね」
「はい」
「護衛無しだと1人で寝ずの番は物理的に不可能なので寝てますね」
「まぁ、そうですよね」
「護衛無しの行商が下に見られる理由ですが」
「はい」
「口の悪い人からは寄生虫などと呼ばれていたりするのですが」
「は、はい」
「野営地では周囲の警戒は人任せにして寝て。移動中も護衛の居る馬車から付かず離れずの距離を維持したりするのですよ」
「あー、なるほど」
「そして、有事の際も戦力になりません」
「ですね」
「襲う側からしても、後方に寄生虫が居る方が狙いやすいので」
「そうなんですか?」
「Uターンして逃げれませんよね。後ろの馬車が邪魔で」
「あー・・・」
「そして、荷物は倍になりますから。襲う側からしたら良い事しかありません」
「厄介ですねぇ」
「護衛が雇えない行商にはそうする様に商業ギルドから指導もしてるので仕方のない事なのですけどね」
「あ、そうなんですね」
「そうしないと駆け出しの行商は全滅して育たないですからね」
「そんなにですかっ」
「商家の出でも無い限りは誰もが通ってきた道なので強くは言えませんね」
「なるほど」
朝食や準備を終え。いざ出発となった時に一悶着があった。
「こっちが先だろ?」
「こちらは護衛2人居るのですが?」
「はぁ?」
と、向こうの行商が俺とエイミーを睨め付ける。
「はんっ。見習いを護衛って言い張る気か?」
「お二人は歴とした冒険者ですよ」
「登録だけなら誰でも出来るからな」
「はぁ~・・・。別にそこまで拘る事でも無いのでお先にどうぞ」
「ふんっ。最初っからそうしてりゃ良いんだよ」
護衛の有無や人数だったりで序列みたいなものがあるんだろう。
それで、出発する順番も決まってるのかもしれない。
先に出発した行商に付いている護衛は部分的にだが革鎧を身に着け腰からは剣を下げていた。
うん。分かりやすく冒険者って感じ。
俺とエイミーを指して言った、見習いってのは行商見習いって事だろう。
正直、行商見習いどころか手ぶらの村人と槍を持った村娘にしか見えない。
そりゃ・・・向こうも怒るかもしれない・・・。
「では、行きましょうか」
「はーい」「は、はいっ」
出発し、後ろを振り返ると。
護衛の居ない馬車はしっかりと後ろを着いて来ていた。
隊列を組んでるとは言えず。でも、常に視界に入り続ける絶妙な距離で。
「先に出発した行商ですが」
「はい」
「あれが正に護衛無しの行商を寄生虫と呼ぶ典型的な商人でしょうね」
「へぇ~。あ、商家のボンクラ息子とかで下積みをしてないって感じですか?」
「はっはっは。そんな感じだと思いますよ」
「商人の皆が皆あんな感じって訳じゃないですよね?」
「当然です。甘やかされて育ったのでしょうね」
「あー、はい」
「あれでは家の評判を下げて自分の評価も下げるだけだと気付いていないのです」
「力を誇示したいんでしょうね。パパの力を」
「はっはっは。そうですね。私としては商売敵が減るだけなのでありがたいですが」
「黒いですねぇ」
「商人ですから」
そんな感じでオゥンドさんが立てた野営地で揉めるというフラグはオゥンドさん自身がしっかり回収していた。
いつもお読み頂きありがとうございます。
9月は月終わりが偶数日で月跨ぎの連続更新が無かったので、こんな月の真ん中で15・16・17と連続更新しようかと思います。
完全な思い付きですヾ(*´∀`*)ノキャッキャ




