83話 快く
オゥンドさんが連れて来てくれたレストランで使っていた醤油を快く譲って貰う事が出来たのでうどん作りに向けて1歩どころかかなり前進した様に思う。
「「ごちそうさまでした」」
「いえいえ、かなり渋ってましたが醤油を譲って貰えて良かったですね」
「はいっ。オゥンドさんのおかげですありがとうございました」
「いえいえ。それで、お二人はこれから西に向かわれるのですか?」
「はい!・・・って、俺は向かいたいんだけど、エイミーもそれで良い?」
「は、はいっ」
お店の人に聞いた所、この辺りでは醤油の生産はしておらず、かなり西の方で作っていると快く教えてくれた。
「それにしても・・・良く聞き出しましたね」
「え?何がですか?」
「醤油の生産地ですよ」
「え?普通に教えてくれましたよ?」
「ユウさんの普通がちょっと分からないです」
「あ、それでですね」
「はい」
「出来るなら、今回みたいに護衛をしながら移動したいんですけど」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ」
「え?」
「この後、冒険者ギルドに行って任務達成の報告をして」
「はい」
「あの姉妹のその後を聞いて」
「はい」
「西に向かう行商に話をつけます」
「おぉー。お願いします」
「契約の条件はお任せ頂いても?」
「はい。よろしくお願いします」
それから冒険者ギルドに向かい。依頼達成の報告をすると俺とエイミーのギルドランクがGからFに上がった。
「おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「ユウさんとエイミーさんはここでお待ち頂けますか?」
「え?はい」
「あの姉妹の事を聞いてきます」
「あ、お願いします」
冒険者ギルドと言えば荒くれ者が集まる場所で、酔っ払った冒険者がギルド職員や新人冒険者に絡んでいたりするイメージがあったが・・・。
ここだけかもしれないが、そんな事は一切無く。役所や銀行みたいな感じで自分の番号が呼ばれるまで皆黙って待っていた。
なのでオゥンドさんが戻って来るまでお上りさん丸出しの俺とエイミーも絡まれる事は無かった。
「お待たせしました」
「おかえりなさい」
「まずは宿に移動しましょうか」
「はい」
今夜の宿はこれまでに泊まった村の宿に比べれば豪華だが、さっきのレストランと比べるとグレードは落ちる感じだった。
「あれ?オゥンドさんも泊まるんですか?」
「はい。今日は商業ギルドに荷物を預けてるので久々に羽を伸ばせます」
という訳で、オゥンドさんが1部屋、俺とエイミーで1部屋の計2部屋の代金をオゥンドさんが支払ってくれた。
「あ、そう言えば・・・護衛終わってるのに宿代すいません」
「そのくらい構いませんよ。まずはあの姉妹の事から」
「はい」
「姉の方は冒険者資格を剥奪されました」
「はい」
「妹の方は厳重注意を受けた様ですね」
「えっと・・・逮捕されたりは・・・?」
「してませんね」
「え?だって・・・」
「ちょっとややこしい話なのですが」
「はい」
「どうも貴族だった様で。親が手を回した様ですね」
「えぇー・・・」
「なので、資格の剥奪と厳重注意は冒険者ギルドとしては頑張った方ではないかと」
「でも、それって・・・ほぼお咎めナシですよね?」
「そうなりますね」
「生きてるのがバレたらヤバくないですか?」
「冒険者ギルドはユウさん側についているので。そう簡単に漏洩しないと思いますよ」
「ほぼお咎めナシなのに俺側なんですか?」
「はい。冒険者ギルドとしてはそれが精一杯だと思います」
「そうなんですね・・・」
「恐らく、エトーさんも動いてくれたと思います」
「それでもその程度なんですね」
「まぁ、相手が貴族となると、そうなりますね」
「そうですか・・・」
結局、あのヤバい2人が野放しにされる事になったのか。
「お咎め無しとは言え、このまま冒険者を続ける訳では無く。親元に戻されて、しばらくは大人しくしているはずなので一応は安心かと」
「あ、そうなんですね。だったら、もう会う事は無さそうですね」
「はい。よっぽど運が悪くない限りは」
「フラグっぽいんで止めて下さいよ・・・」
「ははは。領地に戻ってこってり絞られてから嫁にでも行かされるんじゃないでしょうか」
「政略結婚ってヤツですか?」
「はい。それから逃れる為に冒険者をやってたのだと思いますし。大人しくなると思いますよ」
「切に、そう願います・・・」
「それから、護衛任務も話が決まりましたので」
「え?もうですか?」
「はい。条件は今回と同じですね」
「護衛中の食事と宿代を依頼主が持ってくれて。それで、依頼料と相殺ですか?」
「はい。ランクも上がったので多少ですが依頼料も出る様です」
「おぉー」
「その条件で宜しかったですか?」
「はい。ありがとうございます」
「ええと、そうですね。それから、道中の鹿肉等の代金をお支払いしないとですね」
現金収入っ!
これの額次第でアリシアさんからもらっ・・・借りてる金貨を両替しなくても済む。
「まずはエイミーさん」
「は、はいっ」
「私が武器屋と交渉して武器を買う。という話でしたが、ユウさんから武器を借りれたので現金で支払った方が良いと勝手に判断してしまいましたが宜しかったですか?」
「は、はいっ。大丈夫ですっ」
「はい。では、銀貨5枚お支払いさせて頂きます」
「あ、ありがとうございますっ」
「次に、ユウさんですが」
「はい」
「アイテムボックスを使わせて頂いたおかげで積荷も増やす事が出来ましたし。何よりあの子達の負担を減らす事が出来たので金貨1枚お支払いさせて頂きます」
「おぉー、ありがとうございますっ」
「お二人共、金額的に問題はありませんか?」
「はいっ」
「思ってたより全然多かったです」
「そうですか。それは良かったです」
「両替をお願いしてましたけど、しなくても済みそうです」
「あ、そうですね」
「もしかして忘れてました?」
「申し訳ありません・・・」
「いやいや、両替しなくて済むくらい貰えたんで全然問題無いです」
「そうですか。では、これで全て終了ですね」
「そうですね」
「明日の昼までに商業ギルドの前でお待ち下さい」
「え、はい」
「次の護衛の依頼主が来ますので」
「あぁ、はい」
「では、ここまでの護衛ありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました」
「あぁ、忘れる所でした」
「ん?はい」
「商人になりたくなったら何時でも連絡を下さい」
「は、はい・・・」
「では、お疲れ様でした」
「は、はい。お疲れ様でした」
イリアさんイーロさんといい・・・オゥンドさんも意外な程に別れがアッサリしている。
まぁ、あの2人程じゃないけど。あの2人は寝てる間に居なくなってたから別れの言葉も無かったからなぁ・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。




