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82話 拉麺

「あぁ、私達はかなり蛇行しながらここまで来てますし」

「最短距離で行けばそこまでの距離じゃないって事ですか」

「はい。それに荷馬車と早馬では速度も違うので」

「あー、それもそうですね」


なるほどね。

そこにファンタジーな力は無く、物理的にお馬さんが頑張ってた。


「ちなみに・・・あの姉妹が捕まって、完全に落ち着くまで待つって事は・・・」

「それだと間に合わないですね」

「間に合わないっていうのは?」

「先程も言いましたが。既に商人達が集まり始めています」

「はい」

「ゆくゆくは森も切り開かれ大きな街になると思いますが。今はまだ職人が足りなくて進みが遅いように見えますが、冒険者ギルドが完成すればあっと言う間に発展するはずです」

「ダンジョンがあるからですよね?」

「はい」

「でも、ダンジョンが発見されてから1年くらいって聞いたんですけど。動き出しが遅い気がするんですけど」

「そうですね。冒険者ギルドに比べて商業ギルドの方が保守的というのもありますが」

「はい」

「ダンジョンというのは謎が多いのですよ」

「はい」

「攻略すると消えるダンジョンもあれば、そのままのもあります」

「消えるんですか?」

「はい。ボスを倒すと崩れていくそうです」

「いやいや、それだと倒した人は生き埋めになるじゃないですか」

「あぁ、そこまで直ぐにでは無いですよ。しばらくすると崩れていくらしいです」

「なるほど」

「消えないにしても、モンスターが枯渇していくダンジョンもあるそうで」

「へぇ~」

「商業ギルドは完全に安定したのを見極めてから動くみたいですね」

「なるほど」

「ギルドはそれで良くても。流石に私達はそこまで待てないので皆動き始めてる訳です」

「直ぐに返事しないとですよね・・・」

「そうですね。明日の昼までにお願いします」

「あ、あの・・・良いですか?」

「うん」「はい」

「私は良いんですけど・・・」

「俺?」

「はい。ユウさんってうどんを・・・」

「あっ、オゥンドさんすいませんお断りさせて貰いますっ」

「えっ」

「あそこに居たら、何時まで経ってもうどんを食べられないんですっ」

「あ・・・はい・・・」

「エイミーはどうする?」

「え、私ですか?」

「やりたいだったらエイミーだけ戻っても良いし」

「え・・・」

「着いて来てくれるんだったら、その方が嬉しいけど」

「は、はいっ。ユウさんと一緒に行きますっ」

「私は、うどんに負けて振られてしまった訳ですね」

「す、すいません・・・」


まぁ、うどんに勝てるヤツなんてこの世に存在しないけどねっ。


日々の生活に追われて忘れがちになってしまってるけど。俺の目標は何としてでも朝昼晩と三度々々うどんを食べる生活を送れる様にする事だ。

その為にはあそこの村に留まっている事は出来無い。


コンコンコン───。


「はーい」

「料理をお持ちしました」

「はいはい。それと、お茶も貰えますか?」

「はい。人数分で宜しいですか?」

「2人分でお願いします」

「はい、少々お待ち下さい」


ガチャ───。


「それでは、仕事の話は終わりにして料理を楽しみましょうか」

「「はいっ」」


運ばれて来た料理はこれまでの村では見かけない豪華な物ばかりで。

サラダから始まりスープ、魚、肉。そして、なぜかデザートを挟んでから肉、サラダ、デザート。と、良く分からない順番で運ばれて来たがこれが異世界のフルコースなのかもしれない。


ただ、スープの時にはびっくりした。



「こ、こ、こ、これってうどんですよねっ?」

「ひ、ひいっ・・・」

「ちょ、ユウさん落ち着いて下さい」

「落ち着いてられる訳無いでしょ!これ、うどんですよねっ」

「こ、こ、これは・・・ラーメンです・・・」

「え・・・あ、はい・・・」


透き通った黄金色のスープに白いむっちりとした麺が揺らめいている。

これは、どこからどうみてもうどん!


と、思ったけどラーメンらしい。


「と、当店自慢の逸品です。どうぞ温かい内にご賞味下さい」

「はい」


ズルズルズル───。


「あれ?何かこれ麺が」

「はい。パスタ等の小麦の麺では無く。ユウガオ、瓜科の植物ですが。ユウガオを細長く切った物です」

「へぇ~」

「如何でしょうか?」

「これはこれで美味しいですね」

「そ、そうですか・・・」

「それよりも、このスープが美味しいです」

「はい。この辺りでは珍しい調味料を使用してまして。当店のシェフ、渾身のメニューです」

「その調味料って」

「それは企業秘密でございます」

「醤油じゃないんですか?」

「えっ・・・ご存知でしたか・・・」

「あ、やっぱり醤油なんですね」

「はい・・・」

「この辺りでは珍しいって、どこに行けば手に入ります?」

「そ、それも企業秘密で・・・」

「だったら売って貰う事って出来ますか?」

「いや、あの、私の一存では・・・」

「じゃあ、聞いて来て貰っても良いですか?」

「いや、あの・・・はい・・・」



店員さんにお願いした結果・・・行天優は醤油を手に入れた。テレレレッテレー。

いやぁ、それにしてもこんな所で醤油に出会えるとはびっくりだった。


それをオゥンドさんに言うと「びっくりしたのは店員さんの方だと思いますが・・・」と、ちょっと何を言ってるのか分からない。


まぁ、でも・・・。

譲って貰えたのはビール瓶サイズの醤油1本だけだったので大事に使っていかないといけない。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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