77話 ウィリーを探せ
翌朝、朝食や朝の身支度を済ませ次の村へ向けて出発したが、出発前にちょっとした一悶着があった。
「私を前に行かせて下さいっ」
そう。
エイミーが先行したいと言い出したのだ。
「でも、俺なら1発で仕留められるし」
「それだとお金が・・・」
「パーティーなんだから折半すれば良いんじゃない?」
「それはダメですっ」
「えっ」
「一緒に戦ってるなら半分こでも良いかもしれないですけど。何もしてないのに貰えませんっ」
「あー、だったら、解体はエイミーにお願いして。ついでに、解体のやり方を俺に教える。それの代金として折半にするってのは?」
「解体なんて、そんな手間じゃないですしっ。ユウさんだって解体は出来ますよね?」
「んー、まぁ、多少は?」
「だったらダメですっ」
「えぇ~・・・」
コボルトキラーのエイミーさんだから、鹿とかサイズの小さい相手なら問題無いんだろうけど。
オークは倒せない。
即ち、質量の大きな相手だと負けないにしても一撃で倒せなかったり長期戦になる恐れがある。
そうなると。当然、リスクが増す。
って事で、出来ればエイミーを1人で戦わせたくない。
「それに」
「うん」
「昨日、ユウさん倒れたじゃないですか・・・」
「あー、うん・・・」
そこを突かれると厳しい物がある。
「昨日のはたまたまだから。次は大丈夫だと思うんだけどね」
「でもっ・・・」
「でしたら、お二人共一緒に前に行かれては如何ですか?」
「え?良いんですか?」
「後ろから来る事は少ないですし。エイミーさんが1人でも安全に戦える事が証明されればユウさんも安心ですよね?」
「まぁ、はい」
「ユウさんがまた気分を悪くしたりしなければエイミーさんも安心ですよね?」
「は、はい」
「でしたら、一緒に戦ってお互いを安心させるのが良いかと」
と、オゥンドさんが何とか纏めてくれて、ようやく出発となった。
「私から先にやっても良いですか?」
歩き出し、馬車を少し先行した辺りでエイミーがそんな事を言い出した。
「え?一緒にやれば良くない?」
「それだと、ユウさんが全部倒しちゃうじゃないですか・・・」
「そ、そうかな?」
「そうですよっ。それだと、ずっと私の出番が来ないですっ」
「あー、でもさ?武器も変わって勝手も違うし・・・」
「貸して貰ってからずっと練習してるんで大丈夫ですっ」
「え、あ、うん・・・ヤバそうなら直ぐ言ってね?」
「はいっ」
気が逸るのかエイミーの歩くペースがジワジワと速くなっていく。
「エイミー」
「はいっ」
「ちょっと速い」
「あ、すいませんっ」
しばたくするとまたエイミーのペースが上がり、少しずつ離れていく。
「エイミー」
「あっ・・・すいません・・・」
そして、またしばらくすると。
「エイミー」
「す、すいません・・・」
「集中するのは悪い事じゃないけど、ずっと集中しっぱなしだと保たないよ?」
「そうですね・・・すいません・・・」
今度こそ普通のペースになり歩いていくと・・・。
「ユウさーん!」
と、後ろから声がした。
オゥンドさんなんだろうけど・・・かなり距離がある様に聞こえる・・・。
声の雰囲気からして盗賊だったり野生動物に襲われて逼迫した状況では無いとは思うけど・・・。
「ちょっと戻ろっか」
「はいっ」
待ってれば追いついてくるんだろうけど、呼ばれた以上は戻った方が良いだろう。
「どうしました?」
「離れ過ぎです・・・」
「で、ですよね・・・」
うん。
馬車もこっちに向かってるはずなのに戻るのに3分くらい掛かったから俺もビックリした。
「一応、お二人は護衛なのですから。一定以上は離れない様、心掛けて下さい」
「はい・・・すいません・・・」
エイミーのペースに引っ張られて俺のペースも気付かない内に上がっていた様だ。
「下りでペース配分が難しいので、馬車が見える範囲までにしておきましょうか」
「はい」
「常に馬車が見える範囲に居て下さい」
「はい」
オゥンドさんからかなり念入りに離れない様にとの忠告を受けてしまった。
その後も、エイミーはちょくちょく先走りそうになるが言われる前に自分で気付きペースを落としている。
「エイミー」
「はいっ」
「ペースの上げ下げが激しいと直ぐに疲れるから。なるべくは一定のペースでね」
「はい・・・すいません・・・」
「ユウさーん。エイミーさーん」
「はーい」「は、はーいっ」
「そろそろ野営地に着きます」
「え?早くないですか?」
「はい。かなりペースが早かったので予定よりもかなり早く到着してしまいました」
「す、すいません・・・」
「私の所為ですね・・・すいません・・・」
「以後、気を付けて下さい」
「はい」「は、はい・・・」
口調はいつも通りだけど、全く目が笑ってないからそこそこ本気で怒ってる気がする。
ちょっとペースが早くて馬車を置き去りにしてしまったけど・・・。
まぁ、それでも、呼べば聞こえる範囲だし。別に問題が起こった訳でも無いんだから、そこまで怒る必要なんて無いだろ。と、一緒思ったが・・・。
下り坂で加速しやすいからペースを落としていたのに俺達が離れ過ぎた所為でオゥンドさんもペースを上げないといけなくなって。
その所為で無駄に馬に負担を掛ける事になったから怒ってるんだ・・・。
きっとこの予想は外れてはいないはずだ。
オゥンドさんの馬に向けられる愛情はちょっと病的と言うか・・・もしかしたら、とんでもない性癖を持ってるじゃないだろうかと疑うくらいには飛び抜けている。
イリアさんもイーロさんも馬を大事にしていたし。
えっと・・・何だ・・・あの2人と別れて、エトーさん達の居る何とかって村まで送ってくれた人・・・。
うん、思い出せる気がしない。
まぁ、あの人も馬は大事にしていた。
でも、やっぱり、オゥンドさんは別格な気がする。
いつもお読み頂きありがとうございます。
馬車に乗せてくれたウィリーさん。
誰が覚えてんねん!ってくらい一瞬しか出てないです( ˙꒳˙ )




