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67話 独占

「随分とウチの子達に気に入られてるみたいですね」

「あっ、助けてくづぶあっ」

「はいはい。ユウさんが困ってますからねー」


まだ寝入ってなかったであろうオゥンドさんが異変に気付いて助けてくれた。


「何をされてたんですか?」

「いや・・・桶に水を入れてたらそのまま押し倒されて・・・」

「あぁ、なるほど。繋いでおきましたので、離れた所でお願いします」

「あ、はい。貯まってからあげた方が良いんですね・・・」

「その方が良いかと」

「はい・・・次からは気を付けます・・・」

「はい。では、休ませて頂きますね」

「はい・・・すいませんでした」

「いえいえ~」


もう下手な事はせずに大人しくしていよう。


それにしても、特にここ数日はウォーターを使い続けているにも関わらずスキルレベルが上がらない。

レベル3まではアッサリ上がったのに3からは完全に止まっている。

というか、ウォーターに限らずライトもアイテムボックスもウィンドアローも暴食も3で止まっている。


3までのレベルアップの必要経験値が少なくて、3からは必要経験値が一気に上がるとかそういう感じなんだろうか?

だとしたら、ウィンドカッターのレベルが2だから3に上げても良いかもしれない。


体感としてレベル1は使い物にならない。

レベル2は使えなくはない。が、モノに依る。

レベル3から一気に実用レベルになるイメージだ。


あれもこれもと手を出して、どれもそれなり。って、なるよりは、一点特化で極める方が性に合っているが・・・これだけやって上がらないんだから、2→3にするくらいは良いだろう。


まぁ・・・スキル上げをやる暇があれば・・・だけど・・・。



定期的に薪を入れながらゆらゆらと揺れる火を眺めていると意外な程に時間が経つのが早い。

火を眺めていると、イケナイ事をしている気分になってドキドキする一方で何故かホッとする。


自己矛盾。二律背反。アンチノミー。

そんな感じだ。


東の空・・・かどうかは分からないが空が白み始めたのでオゥンドさんを起こす。


「う・・・ううん・・・・おはようござい・・・ます」

「良く寝れました?」

「うぅん、それなりですね。顔を洗えば目も覚めると思います」

「用意してありますよ」

「ありがとうございます。エイミーさんは?」

「これから起こします」

「では、顔を洗ってから朝食の準備をしますね」

「はい」


エイミーを起こし、全員朝の身支度を済ませてから朝食の席に着いた。


「距離自体は短いのですが、山間部に入りますので揺れも増すかと思います」

「あー・・・はい・・・」

「それから、ウチの子の体力も心配ですので。ユウさんにはもう少しウォーターを頑張って頂ければ。と」

「はい・・・。あ、えっと、酔ったら降りて歩いても良いですか?」

「はい。それは構いません。と、言いますか・・・」

「はい」

「少しでも重量を減らしたいので、なるべく降りて貰えれば。と」

「でも、歩きながらだとウォーターは厳しいです」

「そうですね・・・では、山に入る前に沢で水を汲んで行きますか」

「水場あるんですね」

「はい。ですが、荷台の空きもそこまで無いのでユウさんには何とか水を出して頂きたいのですが・・・」

「あー、だったら、俺のアイテムボックスに水入れます?」

「え?」

「俺のは容量は小さいんですけど。重量はそこそこいけるんで」

「おぉ、それを早く言って下さいよっ」

「す、すいません・・・。でも、なるべくスキルの事は言わない方が良いのかと」

「水臭い事言わないで下さいよっ。私とユウさんの仲じゃないですかっ」


う、うん・・・知り合ったばっかだけど・・・。


干し肉から出汁を取って、昨日の鹿肉を入れたスープにちょっと固い目のパン。

それが朝食だったが、かなり塩っぱかった。


理由は直ぐに分かった。


「オゥンドさん」

「はい。何でしょう?」

「もしかして、あの山ですか?」

「はい」

「あれ越えるんですか?」

「はい」

「マジですか・・・」


富士山!とまでは言わないが、かなりの標高だと思う。

2000メートルくらいあるんじゃないだろうか・・・。知らんけど。

そして、見るからに険しい・・・。


「恨むなら私では無く、私の師匠を恨んで下さい」

「え?」

「この販路は師匠から譲り受けたモノなのですよ」

「あー、なるほど?」

「暗黙の了解として。行商は他と被らない様に販路を設けるので」

「はい」

「師匠から弟子に受け継がれる場合が多いです」

「へぇ~」

「盗賊に襲われて亡くなった場合等は奪い合いですね。早い者勝ちです」

「は、はい・・・」


商人は情報に敏くないとやっていけないって言うけど、そんな所でもなのか・・・いや、そんな所だからこそ?


「あ、でも、後から来て、その販路を奪われたりしたらどうするんですか?」

「まずは、本人に警告ですね」

「従わない場合は?」

「商業ギルドに通報します」

「なるほど」


冒険者ギルドがあるんだから商業ギルドもあるか。

何かそっちは考えてなかったな。


「ただ、暗黙の了解ですので」

「はい」

「罰則等がある訳では無いんですよ」

「だったら、やったモン勝ち・・・って訳では無いですよね?」

「そうですね。普段は、ライバルなのですが。そういった時の結束は固いので」

「はい」

「そのエリア全域で活動する行商全員で潰しに掛かります」

「おぉ・・・聞くだけで恐ろしいですね・・・」

「そうですね。まず、商業ギルドを介しての仕入れ・販売は出来なくなりますし」

「はい・・・」

「その奪われた販路にそのエリアの行商全員がやって来ます」

「おぉ・・・」

「そして、全員が相場無視の買取価格に販売価格で荒らす訳です」

「商売にならないですね」

「はい。完全に潰します」

「怖っ・・・」

「そして、名前も顔も出回るので商業ギルドでの再登録も出来ないです」

「詰みですね」

「その後はどなろうと知ったこっちゃ無いです」

「怖っ!」



でも、行商にとっての販路はそれ程大事な物なんだろう。

だったらいっその事、販路に対して資格とか発行すれば良いのに・・・。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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