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66話 ディープインパクト

エイミーが仕留めた鹿を木に吊るし血抜きを行う。


イリアさん達との時も思ったが、思ってたよりは血が出ない。

漫画だったり、映画だったりの影響でもっと派手に血が噴き出すイメージだったが実際はそこまでじゃなかった。

それでも結構な量が出て、地面には大きな血溜まりが出来てはいるんだけど。


「そこまで時間に余裕がある訳では無いので、解体してしまいましょうか」

「はい」

「本来でしたら、もう少し血抜きをしてから解体して流水に晒すのが理想ですが」

「私もそう教わりました」

「頼んでおいて難ですが。そこまで時間に余裕がある訳では無いので味は二の次ですね」


へぇ~。と、感心しながらオゥンドさんとエイミーの会話を聞く。俺、行天優ことウォーターサーバーです。


「ユウさんの水量が多ければ臭みはほとんど取れるのですが」

「す、すいませんっ」

「あぁ、いえ、責めてる訳では無いですよ。ユウさんには感謝してます」

「は、はい・・・」

「という事ですので、味はそこまで期待しないで頂けると助かります」


血生臭い肉は勘弁だけど、無料(タダ)の食事だから文句は言えない。

あれ?でも、護衛の報酬に食事も含まれる訳だから無料ってのは違うか。

それに、エイミーが仕留めて捌いた獲物なんだから、それを勝手にオゥンドさんが使う権利は無い気がする。

その辺りはどうなってるんだろう・・・?


そんなオゥンドさんへの不信感を募らせながらも、荷台に設置され問い質す事も出来無いまま水を生み出し続ける。そんなウォーターサーバーが俺です。



「本日はここで野営します」

「はーい」


ふぅ・・・。

座ってるだけとはいえ、かなり疲れる。


「やっぱり身体が辛いですか?」

「あー、昨日ほどじゃないですよ」

(じき)に慣れますよ」

「そうですね。馬の水は足りそうですか?」

「私達の分と料理の分を出して頂いて。それで、まだ余裕があればお願いします」

「はーい」



味は二の次と言っていたが、変な臭み等はこれといって感じず。普通に美味しく頂きました。


「そうですね。少し、乳臭いと言いますか。特有の臭いがあるんですが」

「あー、はい。気の所為じゃなかったんですね」

「それが苦手という人も居ますし。クセになると言いますか。逆にハマる人も少なくないですね」

「美味しかったです」

「それは良かったです」

「そうだ。聞きたい事があったんですよ」

「はい。何でしょう?」

「うどんって知ってますか?」

「いえ、初耳ですね。それはどういった物なのでしょう?」

「食べ物ですね」

「ふむ」

「それじゃあ、醤油は」

「それも初耳ですね」

「味噌」

「カニミソですか?」

「いや、ただの味噌です」


というか、カニミソのミソって味噌みたいだからとかじゃないの?

あ、でも、脳みそって言うから・・・いや、どうなんだろう・・・?


「でしたら、それも初耳ですね」

「そうですか・・・」

「味噌も私の村で作ってましたよ」

「えっ!」

「あ、作り方は分からないですけど・・・」

「だよね・・・」

「そのミソとショーユというのはどういった物なんですか?」

「調味料なんですけど」

「はい」

「どっちも大豆から作られる調味料ですね」

「ふむ。大豆からですか・・・すみません。やっぱり聞いた事ありませんね」

「そうですか。俺の故郷の料理なんで久しぶりに食べれたらな。って思ったんですよ」

「うどんですね」

「はい」

「それに、ミソやショーユが必要なんですね」

「あー、まぁ、そうですね」


味噌煮込みうどんには味噌は欠かせない。

毎日食べたいうどんでは無いけど、それでもやっぱり不意に食べたくなる。


「立ち寄った村でも聞いておきますね」

「あ、はいっ!お願いしますっ!!」


自分で聞けって話だけど。オゥンドさんの方が顔も広いだろうし、任せておいた方が効率は良いはずだ。


「ユウさん」

「はい」

「今夜も火の番をお願い出来ますか?」

「え、はい。大丈夫ですよ」

「エイミーさんはやはり年齢的にも厳しいと思いますし」

「はい、そうですね」

「1日中歩き通しですので。睡眠をしっかり取って体力の回復をして貰おうかと」

「そうですね、分かりました。俺が先にやりますか?」

「いえ、私はこの後、馬の世話もしないとけないので、先にお休み下さい」

「はーい」



1日座ってただけとはいえ、それなりに疲労は蓄積している。

昨夜の夢見が悪くて熟睡出来ていなかったのも大きいかもしれない。

マントに包まった途端、速攻で眠りに落ちた。


虫除けの香は当然使っている。



まだ寝足りないがオゥンドさんに起こされ交代する事になった。

座ったまま何もせずジッとしていると寝落ちしそうなので馬用の桶に水を満たしていく。


が・・・既に目を覚ましている馬達に注いだ側から飲み干されていく・・・。


そして、桶の水が尽きると指から直接水を舐め取る様になり。

最初は可愛いと思えていたが、2頭で奪い合う様になると圧が凄くなり・・・押し倒された。


その後は、水の出なくなった指は無視して2頭に顔を舐め回され。

俺のファーストキスは異世界で散る事になった。それも、かなりディープに。



いつもお読み頂きありがとうございます。


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