63話 もしかしたらSかもしれない。
「ごちそうさまでした」
「ご、ごちそうさまでした」
「あ、ちょいとお待ち」
「え、はい」
夕食を終え、部屋に戻ろうとしたところ。宿屋のおばさんに呼び止められた。
「これ持ってきな」
と、お湯の入った桶とタオルを渡された。
タオルと言っても、手ぬぐいというか・・・大きい雑巾って感じだけど。
「はい。ありがとうございます」
部屋に戻り、机の上に桶を置き。ベッドに横になる。
「ふぅ~~~~」
「お、美味しかったですねっ」
「うん」
「冷めちゃうんで、身体拭きますね」
「う、うん。こっち向いてるね」
「はい、お願いします」
寝返りを打ち、エイミーに背を向ける。
だが、衣擦れの音が妙に艶めかしい。
相手は子供。相手は子供。相手は子供。相手は子供。相手は子供。相手は子供。
軽くゲシュタルト崩壊を起こすくらいには煩悩を追いやれた。
「あ、でも、最近食べれてないから久しぶりにおうどん食べたいなぁ」
「ホントそれっ」
「「え??」」
「エイミーうどん知ってるのっ?」
「え、あのっ、ユ、ユウさんっ・・・」
うどんという神ワードに反応して、エイミーに詰め寄り両肩を鷲掴みにしてしまった。
「あ、ごめっ」
「い、いえ・・・」
急いでエイミーに背を向け。
今の事は無かった事として流す方が良いのか、しっかりと謝った方が良いのか悩むが、それ以上にうどんについて聞き出さなければならない。
パッと見でも分かるエイミーのFカップについては触れないでおこう。
「あ、あのさ。うどんって言ったよね?」
「え、はい。私の居た村では良く食べていました」
神は居た。
いや、まぁ、こっちの世界に来る時にも会ってるから居るには居るんだけど。
「うどんってアレだよね?白くて細長くてむっちりしてて、この世の物とは思えないくらい美味しいうどんだよね?」
「そ、そこまで美味しいかは分からないですけど・・・たぶん、合ってると思います」
はい、ktkr。
「エイミーって、うどん作れたりする?」
「はい。うどん自体は打てます」
「おおおおぉぉぉぉぉ。よし、じゃあ、今から打とうっ!」
テンションが上がり過ぎて、またエイミーに詰め寄ってしまった。
しかも、今度は肩では無く両手を掴んで。
今、エイミーは俺に両手を掴まれ。バンザイした状態で放心している。
当然、エイミーのFカップは惜しげもなく露わになっている。
あ、FカップはFカップでもFLATのFだったりする。
「き」
「き?」
「きゃああああああああああああああ」
俺の手を振り解き、エイミーは蹲ってしまった。
バーン───。
「何やってんだいっ!!」
「あ、いや、これは、違くて・・・」
「何が違うんだい?」
「いや、あの・・・」
「とりあえずこっち来なっ」
「は、はいっ」
首根っこを抑えられ、奥の部屋へと連行された・・・。
「申し開きがあるなら聞こうじゃないかい!」
「あのっ、だから違うんですっ」
「何も違わないよっ!あんな小さな子に襲いかかって・・・」
「いや、だから違いますって!」
ガチャ───。
「デカい声出して何やってんだ?」
「あんたっ」
「お、おう・・・」
「自警団呼んで来とくれ!」
「あ?何があったんだ?」
「ち、違うんですっ」
「お、おう・・・どっちも落ち着けっ」
「は、はい・・・」
「落ち着いてなんて居られる訳無いだろっ」
えぇ~・・・。
「この坊主は連れの女の子を襲ったんだよっ!?」
「お、おう・・・そうか・・・」
「何が、そうか・・・。だい!?」
「あー、だったら、俺はこの坊主から話を聞く。お前は、その女の子の話を聞いて来い」
「あっ、そうだねっ。怖い思いをしたのに1人になんてしてられないねっ」
そう言うと、宿屋のおばさんは部屋を飛び出して行った。
「まぁ、何だ・・・あいつの早とちりなんだろうが・・・一応、説明して貰えるか?」
「は、はい・・・」
簡単に説明した所。宿屋のおじさんは納得してくれた。
「で、その、うどんってのはどんな食い物なんだ?」
「小麦粉と塩と水を混ぜて捏ねるだけです」
「パン生地とは違うのか?」
「麺なんで違いますね」
「パスタとも違うのか?」
「違いますね」
「ふむ。ソースは?」
「ソースって言うか。スープに入れるんですよ」
「ほう」
「スープって言うか、昆布とか鰹節から取った出汁ですね」
「何だそれ?」
「昆布と鰹節ですか?」
「おう」
「昆布は海藻で、鰹節は・・・簡単に言うと、魚を乾燥させたヤツですね」
「ふむ」
「あの」
「ん?」
「良かったら作ってみて貰えませんか?」
「無理だな」
「え?」
「ここは内地だから。当然、海の物は高い。そんな高級品を見た事も無い様な物にチャレンジは出来無ぇな」
「そうですか・・・」
「そんな食いたいなら海を目指すしか無ぇな」
「あ、そうか。海が近ければ海産物は安くなりますよね」
「逆に山の物は高くなるけどな」
「ぐっ・・・」
「まぁ、小麦なんてどこでも作ってるし。コンブとカツオブシか?それは海の近くなら手に入るかもしれねぇし」
「はいっ」
「後は、塩と水か。それも、どこでも手に入るしな」
「という事は・・・海を目指しますっ!」
「お、おう・・・頑張れ・・・」
目標が定まった。
海を目指して、うどんを作る。
誤解が解けた様でおばさんから「紛らわしいんだよっ!」と、怒られたがどうでも良い。
何としてもうどんを作るっ。
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