61話 個人差
「お疲れ様です」
「はい・・・」
荷台に押し込まれ約2時間。ようやく休憩時間となった。
「大丈夫ですか?」
「だ、だいじょばないです・・・」
身体中の筋肉が固まっていて身体を伸ばす事が出来ない。
「うぅっ・・・」
ボキボキボキボキ───。
「ははは。しばらく横になられた方が良いかもしれませんね」
「そうですね・・・」
「何か敷く物を」
「あ、俺の背嚢にマントが入ってるんで取って貰って良いですか?」
「はい」
腰が曲がったままで真っ直ぐに伸ばそうとすると激痛が走る。
お年寄りってこんな感じなんだろうか・・・これからはお年寄りに優しくしよう。席も譲るし荷物も持ってあげよう。
「こちらに広げますね」
「はい。ありがとうございます」
ゆっくりとマントの上に横になり無理の無い程度にストレッチしていく。
「ユウさんちょっと宜しいですか?」
「はい。どうしました?」
「背嚢の中を見させて頂いたんですが」
「あぁ、はい」
「エトーさんから譲り受けたマジックバッグが見当たらなかったんですが」
「え、あー、はい」
「もしかして、もう売ってしまっ・・・」
「いやいやいや、あります、ありますよっ」
「そうなのですね。安心しました」
「あの」
「はい」
「オゥンドさんってアイテムボックス持ちなんですね」
「出来れば、他言無用でお願いしますね」
「あ、はい。それでですね」
「はい」
「俺もアイテムボックス持ちなんですよ」
「ふむ」
「アイテムボックス」
「おぉ」
「マジックバッグはここに入れてます」
「なるほど。高価な物を入れておくのは正解だと思います」
「ですよね」
「ですが、アイテムボックス持ちなのはなるべく隠した方が良いですね」
「はい」
「理由としては。ガセなのですが、アイテムボックス持ちにとって都合の悪い噂が定期的に流れるんですよ」
「都合の悪い噂ですか・・・」
「はい。アイテムボックス持ちが死ぬとアイテムボックスの中身が飛び出す。と」
「もしかして、それで命を狙われたりするんですかっ?」
「もしかしなくてもですね」
うへぇ・・・。
「因みに、死んでも中身は出て来ません。死ねば、そのまま消滅します」
「悲惨じゃないですか・・・」
「はい。ですので極力アイテムボックス持ちという事は隠して下さい」
「はい・・・」
「まぁ、厄介な事に死ねば中身が消滅するという事を証明するのは難しいじゃないですか」
「死なないと証明出来ないですもんね」
「アイテムボックス持ち自体が希少な存在なので尚の事ですね」
「はい」
なるほど。
やっぱりアイテムボックスは隠した方が良いのか。
「あ、アイテムボックスのレベルの上げ方って・・・」
「そこはイマイチ分かっていませんね。個人差があると言いますか」
「へぇ~」
「何でも入れれば入れる程上がる人もいれば、特定の物を入れないと上がらないという人も居たり、人に依って条件が違うとの噂です」
「なるほど。オゥンドさんのアイテムボックスってレベルはいくつなんですか?」
「一応、言っておきますが」
「はい」
「他人の所持スキルやスキルレベルについて尋ねるのはマナー違反です」
「あ、すいませんっ」
「いえ、ここまで言ったので問題ありませんが。他の人に尋ねる時は注意して下さい」
「はい・・・」
「私のアイテムボックスのスキルレベルは10ですね」
「おぉー、凄いですね」
「私の場合は物を入れれば入れるだけでレベルが上がっていったので楽でしたね。ユウさんは?」
「俺は3ですね。特定の物を入れないと上がらないパターンっぽいです」
「なるほど。私の場合、レベルが上がる程に容量は増していったのですが。重量の制限は増えなかったんですよね」
「え?」
「容量自体は大きいんです。この荷台ごとでも入るくらいの大きさがあるはずなんですが」
「はい」
「重さでの制限が厳しくて。10kg程しか入りません」
「この大きさで10kgですか?」
「はい」
「そんな物無いですよね」
「レベルを上げる時は悩みましたね」
「あ、ですよね。どうやって上げたんですか?」
「冬場に山に行き。落ち葉を片っ端からアイテムボックスに入れました」
「な、なるほど・・・」
「まぁ、今となっては上げた意味はありませんでしたけどね」
「そうなんですか?」
「今はお金や貴重品。あと、高価な物しか入れてないので」
「あ、だから、俺の入るスペース作る時にアイテムボックスに空きがあったんですね」
「はい」
にしても、オゥンドさんのは重量制限があるのか。
俺のは重量制限が無い代わりに容量が小さい。
レベルが上がる程に容量は増えていくから俺のアイテムボックスの方が優秀かな。
「オゥンドさんはアイテムボックスがあったから行商になったんですか?」
「いえ?」
「あれ?」
「先程も言いましたが、重量制限が厳しいので商売には使いにくいですね」
「あ、そっか」
「便利なのは便利なのでありがたいですが。アイテムボックスがあったからという訳では無いですね」
「なるほど」
「自分のスキルについてここまで話したのは初めてです」
「あ、すいません」
「いえ、エトーさんからも頼まれていますから」
なるほど。
エトーさんありがとー。
「エトーさんの気持ちが良く分かりました」
「え?」
「ユウさんは見ていて心配になります」
「えっ」
「放っておいたら明日にでも死んでしまいそうなくらいに危ういですね」
「そこまでっ!?」
「ははは。まぁ、それは言い過ぎですが、目的地に到着するまで色々と常識を教えないといけない使命感は感じています」
俺ってそこまで危ういのか。
良くここまで生きて来れたな・・・。
良い人達との出会いに感謝しないとなぁ。
いつもお読み頂きありがとうございます。
ストックが貯まって来たので投下٩(๑´3`๑)۶




