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60話 襲撃

盗賊やモンスターの話をしていたから、それがフラグになって襲われたりしないか心配だったが。

意外とそんな事も無く。普通にイノシシ等の野生動物が出るだけで比較的安全な道程だった。


いや、まだ初日の野営中でこの先どうなるか分からないんだけどね。


ちなみに今は俺が火の番をしていて、オゥンドさんとエイミーは寝ている。

もう少ししたらオゥンドさんを起こして交代するが、火の番をしているのかウォーターサーバーになっているのか分からないくらいにずっと水を出し続けている。


レベルが上がればもっと量も増えるんだろうけど、3からは中々上がらない。



オゥンドさんと交代して日の出まで仮眠を取ったが、睡眠時間が足りなかったのか起こされたタイミングが悪かったのか出発してからも船を漕いでいた。


「溢れてます、溢れてますっ」

「へぁ?・・・あっ・・・」

「大丈夫ですか?」

「すいません・・・」


今日も俺だけ御者台に座らせて貰い、桶に水を入れるマシーンになっていたが、寝ながらもずっとウォーターを発動し続け足元がビショビショになっていた。


「一旦、歩きますか?身体を動かせば目も覚めると思いますし」

「そうですね。それじゃあ・・・ぐべっ・・・」

「だ、大丈夫ですか?」


颯爽と飛び降りたつもりだったが、身体がまだ寝てた様で着地に失敗して盛大に顔から突っ込んでしまった。


「目は覚めました・・・」

「怪我の功名ってヤツですね」


誰が上手い事言えと・・・。


「でも、身体はまだ起きてないんで。もうしばらく歩いても良いですか?」

「はい」


痛みで目は冴えている。でも、やっぱり身体は鈍い。

だが、歩いている内に身体は起きてきて鈍さは取れて来た。


それに反比例して、眠気は増して来たけど・・・。



今なら、歩きながら寝れるかもしれない。

必死に堪え、何時の間にか御者台に座っているオゥンドさんの方を見ると完全に呆れ切った顔をしていた。


そんな微睡みの中、雲の上でも歩いている様なフワフワとした足取りで。

体感的には5分くらいの様な気もするし30分以上にも感じられるが実際にはどのくらいかは分からない、そんな半覚醒の状態で歩いていたが。


「ユウさん!」

「へ?」


「ファイヤーボール」


「ぐあっ」

「はっはっは。エリオットの仇よっ。ざまーみろっ」


馬で追い掛けて来て、猛スピードで追い抜き。振り返り様にファイヤーボールを顔目掛けて放ち。

そして、捨て台詞を残しそのまま回れ右して去って行った。


「ユ、ユウさん・・・」

「あ、大丈夫です」

「へ?今、直撃してましたよね・・・?」

「直撃した様に見せて。ギリギリの所で避けました」

「おぉー・・・」


嘘です。

モロに喰らいました。違う意味で。


またしても無意識に暴食スキルが発動してくれたみたいで。たぶん、食べた。


「無事でしたら良かったです。では、出発しましょうか」

「え?」

「なにか?」

「戻ってエトーさんに報告した方が良いんじゃないですか?」

「先程の襲撃犯も同じ方向に向かいましたが?」

「あ・・・」

「逆恨みしている姉妹のどちからですよね?」

「だと思います」

「でしたら。まだエーリューズに滞在しているでしょうから。また鉢合わせますよ?」

「エーリューズ?」

「ん?」

「エーリューズって?」

「村の名前です」

「あ、あぁ、なるほど」

「足を切断しないといけない程の怪我をしたのですから。しばらくは移動出来ないはずですし」

「そうですね」

「間近で見ていた私ですら直撃した様に見えましたから」

「はい」

「向こうも直撃したと思っているはずです。最低でも大怪我してると思っているはずなんで」

「はい」

「このまま進んで冒険者ギルドで報告して。エトーさんには手紙を出せば良いと思います」

「そうですね」

「ユ、ユウさんごめんなさい・・・」

「え?何が?」

「そうですね。今のはエイミーさんのミスですね」

「え?だから何がですか?」

「エイミーさんが後方の警戒を担当していましたよね?」

「はい。でも、だからってあれは止めれないですよね?」

「止められないにしても声を出して警戒を促す事は出来ます」

「あぁ・・・」

「どっちか悩んでしまって・・・」

「どっちって?」

「普通に移動してるだけなのか。それとも、賊か。ですね」

「はい・・・」

「あの場合は確実に賊です。移動中であろうと、馬車や人を見かけたらスピードを落とすのがルールなんです」

「はい・・・」

「逆に、あの様に一切スピードを落とさず接近した場合は攻撃されても文句は言えません」

「えっ」

「ダンジョンでもそうだと聞きますが。極力、他人とは接近しない。せざるを得ない場合は敵対する意思が無い事を示しながらでないといけません」

「はい」

「それはダンジョンでも街道でもです」

「はい」

「納得頂けましたか?」

「はい」

「それでは、出発・・・の前に」

「はい」

「ユウさんは荷台に乗って頂きます」

「空きあるんですか?」

「作ります」


「アイテムボックス」


うおっ。

オゥンドさんアイテムボックス持ちだったのか。


「狭いですが我慢して下さい。姿を隠す意味もあるので」

「はい」


荷台の真ん中辺りに無理矢理スペースを作り。そこに収まった。

狭いなんてもんじゃなく。

三角座りをしているが、膝と顎がくっつき、極端な猫背になり肩もかなり前に張り出している。


この状態のまま1時間も居たら、エコノミー症候群になる自信がある。


「ユウさんこれを」

「え?はい」


渡されたのは水袋。

動物の内臓を加工した水筒だ・・・。


「それにお願いします」

「はい・・・」



急な事でマントをクッションにする事も出来ず。

最初の休憩を取るまでの約2時間。窮屈な姿勢のまま振動に耐えつつウォーターサーバーと化した。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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