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58話 交渉

飛び出してから30分程してオゥンドさんが戻って来た。


「お待たせして申し訳ありません」

「大丈夫ですよ。気にしないで下さい」

「準備の方は?」

「はい。もう済んでます」

「そうですか。でしたら、荷物を積み込んで出発。という事で宜しいでしょうか?」

「はい」


オゥンドさんの馬車に向かうと、まだ積み込み作業をしている所だった。


「こんな積み込んで大丈夫なのか?」

「馬には負担が掛かりますが、次の村に着くまでですので」

「あの・・・」

「はい」

「俺らの乗るスペースってあります?」

「あー・・・次の村からならっ」

「無いんですね・・・」

「すみません・・・それまでは歩きでお願いします・・・」

「えぇ~・・・マジですか・・・」

「まぁ、どのみち護衛だからな。馬車の前後に分かれて歩いた方が良いな」

「え・・・ずっとですかっ?」

「疲れたら交代で乗るのもアリだとは思うが」

「ですよね。それだと流石に同行する意味無いですもんね」

「荷台に空きがあるならな」

「いや、次の村からは空きも出来ますし」

「空きが出来れば。な」

「え?」


どういう意味?と思ってオゥンドさんの方を見ると。あからさまに目を逸らされた。


「空ける気無いみたいだがどうする?」

「どうするって・・・」

「今ならまだ依頼の受注取り消せるぞ」

「ちょ、待って下さいっ。もう水も捨てて仕入れもしたんですよっ?」

「あー、丸損だな」

「そ、そ、そんな事言わないで下さいよっ」

「じゃー、どうする?」

「次の村に着いたら仕入れはせずに、荷台に1人分の空きを作ります・・・」

「1人分?」

「ふっ・・・2人分作ります・・・」

「だけか?」

「それ以外に何を・・・」

「コイツが水出すのに対しても報酬要るんじゃねーのか?」

「ぐっ・・・」

「その分、多く仕入れも出来んだろ?」

「はい・・・」

「3人が飲む分と料理に使う分。それと、馬の飲み水で1日いくらだ?」

「銅貨3枚で・・・」

「安すぎんだろ」

「5枚で・・・」

「銀貨1枚分は利益出んだろ」

「そんなには出ないですよっ」

「だったら銅貨8枚ってトコか」

「そんなには出せないですよっ」

「だったら仕入れたのを捨てて水積んでくしかねーな」

「6枚出しますよっ」

「7枚だ」

「6枚がギリです」

「7枚だ」

「・・・・・・分かりました・・・7枚で・・・」

「交渉成立だな」

「はい・・・」

「道中の食事も真っ当な物で。村での滞在時、宿屋も真っ当な部屋。間違い無ぇな?」

「はい・・・」

「約束を違える様な事があれば冒険者ギルドに報告しろ」

「は、はいっ」

「積み込みが済んだ様なので行って来ますね・・・」

「おう」


オゥンドさんは積荷のチェックをしに荷台へと向かった。

これ以上無いってくらいに肩を落としながら。


「冒険者と商人が相容れない理由が分かったか?」

「え?今のやり取りでですか?」

「おう」

「えっと・・・分からないです・・・」

「それはな?」

「あ、交渉が下手。とかですか?」

「違ぇーよ。冒険者ってのはな?」

「はい」

「バカだ」

「ぶっ・・・めちゃくちゃストレートですね」

「新人のウチは特にな」

「は、はい」

「んで、冒険者ってのを商人はバカだと見下してる訳だ」

「はい・・・」

「で、カモる」

「あー、はい。それで、険悪になっていくんですね」

「まぁ、そうだな。ガキの頃に商人に騙されてイメージが悪くなる。そんで、そのイメージは大人になってもそう簡単には変わらない」


三つ子の魂百まで。ってやつか。


「騙した方はそんな事忘れてるから。冒険者からの対応が悪い。冒険者が商人の事を敵視して来る。バカのクセに。って感じになる訳だ」

「はい・・・」

「そこまでは思ってませんし、自覚はありますよ」

「聞こえてたか」

「しっかりと」

「まっ、そーやって成長してくってのもあるんだが。今、コイツらがカモられたら野垂れ死にそうなんでな」

「はいはい。エトーさんがこのお二人に期待しているのは十二分に理解しましたよ」

「期待してる訳じゃねーんだが。途中で放っぽり出しちまうから最後ぐらいはな」

「そうなのですか?世話焼きのエトーさんにしては珍しいですね」

「うっせぇ」

「名残惜しいですが、準備も整いましたので宜しいですか?」

「さっさと行っちまえ」

「エトーさんお世話になりましたっ」

「何もしてねーよ」

「あ、エリーさんにも」

「あぁ、良い。姉貴には俺から適当に言っといてやる」

「は、はい」

「わ、私もエトーさんのおかげでパーティーを組む事が出来ましたっ」

「まぁ、まだ何も活動してねーけどな」

「そ、それでもっ」

「あー、良い良い。ギルド職員としての仕事をしただけだ」

「それでも、ありがとうございましたっ」

「俺も、ありがとうございました」

「あー、もー、そーゆーのは良いから。死なねー程度に頑張って来い」

「「はいっ」」

「そんじゃーな」

「「はいっ」」

「そろそろ宜しいですか?」

「「はい」」



御者台にオゥンドさんが座り、馬車が進み出す。

その後ろを俺とエイミーで歩いて着いて行く。


ふと気になり、後ろを振り返るとエトーさんは既にこちらに背を向けて歩き出していた。

そして、良く見るとその肩が震え、手で涙を拭っている様に見える。

別れを惜しんでくれてるのかとこちらの涙腺も刺激されそうになったが・・・その直後に盛大な欠伸をぶちかましていた・・・。


くそう・・・一緒だけど感動したのにっ・・・。


いつもお読み頂きありがとうございます。


最近、1話当たりの文字数が気持ち減ってる_(┐「ε:)_

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