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57話 やっぱり

明日の出発に向けて荷物の整理をする。

重い物をアイテムボックスへ、軽い物を背嚢へ。


と、振り分けていこうと思っていたが。

重い物から順番にアイテムボックスに入れていった結果。

全ての荷物をアイテムボックスが余裕で飲み込んでしまった。


とはいえ、アイテムボックス持ちはレアっぽいのでそれを隠す為にも偽装は続けないといけない。

なので、服等の軽くて嵩張る物だけ背嚢に入れる事にした。



「おい」

「え、あ、はいっ」

「何時まで寝てんだ」

「え、あれ?エトーさん?」

「分かってんのか?今日、出発なんだぞ?」

「え?あ、おはようございます・・・」

「はぁ~・・・鍋やら必要な物買って来たぞ」

「あ、はい、ありがとうございます」

「ここに置いてくからな?目が覚めたら、マジックバッグに突っ込んでさっさと準備しろ」

「は、はいっ」


昨夜、荷物整理に集中しすぎて寝るのが遅くなってしまい、その所為で起きれなかった・・・。

エトーさんが置いていってくれたのは鍋が1つにフライパンが1つ。それと木製の食器がいくつかあった。

そして、肉の塊がいくつかあったが、これが転売用なのか食材としてなのかは微妙なラインだ。


その全てをアイテムボックスに放り込み、急いで着替えて皆の元へと向かった。



「すいませんっ。遅くなりましたっ」

「おう。まずは座れ」

「え、はい」

「紹介しとく」

「行商のオゥンドです」

「あ、ユウです。よろしくお願いします」

「はい。こちらこそ」

「もう出発ですか?」

「そうですね。サブマスが食事をご馳走してくれるそうなので、食べてから出発にしましょうか」

「はい」


エイミーも呼び4人でテーブルを囲み、早い目の昼食となった。


「どっちも駆け出しだが、護衛としては十分なはずだ」

「え?護衛なんですか?」

「なんだ?タダ乗りするつもりだったのか?」

「あ、いや、そういう訳じゃないですけど・・・」

「道中の護衛をして頂けるなら、食事と宿代はこちらが持ちますので」

「え?良いんですかっ?」

「はい」

「これが依頼書だ」

「は、はい・・・えっと、これをどうすれば・・・?」

「達成したら依頼主にサインを貰って冒険者ギルドに提出すれば依頼達成だ」

「はい。・・・って、ここに戻って来ないとなんですかっ?」

「いや、どこの冒険者ギルドでも良い」

「なるほど」

「依頼料は宿代とメシ代で相殺だからな」

「なるほど・・・あ、だったら、わざわざギルドに持って行く意味無くないですか?」

「ランク上げたくねーのか?」

「あ、そっか。依頼達成していってランク上げてくんですね」

「すまんな・・・こんなんだが戦闘力はそれなりにある」

「はい。オークを一撃で倒せる程なんですよね?」

「おう。盗賊の1回撃退してるらしいしな」

「それなら安心ですね」

「まぁ、常識はまだまだ知らねーから。色々、教えてやってくれ」

「はい」

「あー、使いやすい様に仕込んで良いからな」

「宜しいのですか?」

「おう。思いっ切りやってくれ。護衛に向く冒険者が意外と少ねーからな。英才教育を施してやってくれ」

「意外にですか・・・?」

「あー、言い方は悪いが行商ならそれなりにいけるだろ。貴族相手とかなら壊滅的だが」

「まぁ、そうですね」

「これからは、そういう冒険者も育てていかねーとだからな」

「それはエトーさんが育てて下さいよ。私に丸投げせずに」

「良いのか?コイツはホントにオススメだぞ?」

「戦闘力が高くて安上がりですからね」

「そんだけじゃねーぞ?」

「そうなのですか?」

「ライトとウォーターが使える」

「本当ですかっ?」

「え?はい。使えますよ」

「なんでそんな大事な事を早く言ってくれなかったんですかっ」

「え?」

「皆さんはこのまま食事を続けて下さい。私は仕入れの追加をして来ますっ」


そう言うや否や、オゥンドさんは飛び出して行った。


「ライトとウォーターがあるのがそんなに大事なんですか?」

「んー、積んでる水捨てて、その分売り物を積むんじゃねーか?」

「あー、なるほど」

「良いのか?」

「何がですか?」

「皆の飲み水。馬の分もだな。お前が全部出すんだぞ?」

「あ・・・そんな大量に出ないですよ?」

「今更だな。もう行っちまったからなぁ」

「ちょ、ちょっと止めに行って来ますっ」

「待て。お前が行く気か?」

「え?はい、そうですけど?」

「1人で行って。あいつらと遭遇したらどーすんだ?」

「あ・・・だったら、エトーさんが止めて来て下さいっ」

「俺が居ない間に、ここにあいつらが来たらどーすんだ?」

「あ・・・だったら一緒に・・・」

「不意打ちされたらどーすんだ?守り切れる自信ねーな」

「だったら、どうすれば・・・」

「諦めて、ずっとウォーターしてれば良いんじゃねーか?」


それが嫌だから止めたいのに・・・。


「だったら、私がっ」

「お前も狙われる可能性あんだろーが。ジッとしとけ」

「は、はい・・・すいません・・・」


エイミーもダメ・・・と、なると。後はエリーさんしかっ。


「姉貴も無理だぞ」

「えっ」

「姉貴が居なかったら、ギルドの業務が滞る」

「いや、ちょっとの間じゃないですか。その間だけエトーさんが・・・」

「無理だ、無理。俺にゃとてもじゃねーが姉貴の代わりは務まらん」

「そ、そうですか・・・」

「まぁ、最初の1日2日の事だ。我慢しろ」

「え?」

「最初の水場に着くまでだろ。そっからは水も積ませりゃ良い」

「あ、そっか」

「そうだ。忘れるトコだった。ほれ」


と、手紙を渡された。


「何ですか?これ」

「どこでも良いんだが。冒険者ギルドに着いたらそれを見せろ」

「はい」

「あー、どこでも良いっつったが。ある程度、そこで腰を落ち着けるトコでだな」

「拠点にするって事ですか?」

「おう」

「何を書いてあるんですか・・・?」

「まぁ、今回のあらましだな。後、面倒見きれなかったからそっちで頼むって感じだな」

「なるほど」



この人は面倒臭がりだけど、やっぱり面倒見が良い。


いつもお読み頂きありがとうございます。


そのまんまの名前の新キャラです_(┐「ε:)_

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