53話 冒険者ギルドでのテンプレイベント
マントは寒さを凌ぐだけでなく、防御という観点から見てもかなり優秀らしい。
ただの布っきれのマントではなく、鞣して柔らかくなってはいるが分厚い革のマントなので剣で斬り付けられてもそう簡単には刃を通さないらしい。
そんなマントを装備して、一端の冒険者になったつもりのエイミー・・・いや、それは俺もか。
むしろ、俺の方がその嫌いがある。
そんな浮かれた2人で現冒険者ギルドへ行き。今晩も夕食を強請ろうと思っていたが・・・。
冒険者ギルドに近づくにつれて喧嘩でもしているのか怒鳴り声が聞こえてきた。
「喧嘩かな?」
「かもしれませんね」
「んー、とばっちりを食っても嫌だし。今日はやめとこっか」
「はい」
寝床にしている建設中の冒険者ギルドへと入り、今後の予定やアグリーキャットの攻略について話し合いをしながら夕食を取る事にした。
「あの」
「ん?」
「どこかに食べに行かないんですか?」
「ちゃんとした料理じゃないから申し訳無いけど。夕飯の代わりに果物ってどうかな?」
「あ、私、果物大好きですっ」
「そう?あー、それと・・・」
「はいっ」
「内緒にしてくれる?」
「何をですか?」
「これ」
そう言ってアイテムボックスから林檎を取り出した。
「えっ?今、どこからっ?」
「アイテムボックスから」
「ええっ」
背嚢があれば背嚢から出したフリをしてアイテムボックスから出したんだけど。
向こうに預けたままなので、もういっその事アイテムボックスも言った方が良いと判断した。
訳ではなく。
一々、隠すのが面倒臭いと思ってしまっただけだ。
これからパーティーを組んでいくなら尚の事。
余談だが。
わざわざ「アイテムボックス」と唱えなくてもスキルを発動出来る事が分かった。
俗に言う無詠唱ってヤツかもしれない。
でも、めちゃくちゃ集中して、心の中で「アイテムボォォォォックスウウウウウウウ」くらいに叫ばないといけない。
なので、スキル名を唱えた方が100倍楽だったりする。
そして、ウィンドアローやウィンドカッターはどれだけ集中しようと、どれだけ心の中で叫ぼうと無詠唱では発動させる事が出来きなかった。
「本当にアイテムボックスなんですか?」
「うん、容量は小さいんだけどね。ほら」
そう言って、もう1つ林檎を取り出した。
容量無制限でアイテムボックス内の時間停止機能があったり。そんなガチチートな事を隠す為に物語の主人公達はそんな言い訳をしたりしてたりするが、俺のはガチで容量が小さい。
そして、特殊機能も付いていない・・・。
「す、凄いですっ!」
「そ、そうかな」
「はいっ!ライトにウォーターにアイテムボックスまであるなんて・・・」
「うん。どれも、便利は便利なんだよね」
「はいっ!私でもそれだけあれば一流のポーターになれそうですっ」
そう。
攻撃スキルもあるけど。
構成としてはどう考えてもポーターなスキル構成なんだよなぁ。
名前は忘れたけど、宿屋のおじさん。
ウォーターが使えて料理も出来たからポーターとして雇って貰えたって言ってたから。
そこに、ライトとアイテムボックスも加わればポーターとしては余裕で雇って貰えそうだ。
料理は出来ないけど。
「だ、だねぇ・・・。まぁ、それよりも食べよっか」
「はいっ。いただきますっ」
「他にも色々あるからね」
「はい。ありがとうございますっ」
まだ日持ちはするだろうけど、アイテムボックスで腐らせるのもアホらしいし、機会を作ってでも食べていかないとだ。
その日は部屋の端と端で離れてマントに包まり眠った。
そして、翌朝・・・。
パーティー登録の確認と俺らでも熟せそうな依頼の有無。
それと、アグリーキャットを狩場にしても問題無いかの相談に冒険者ギルドへとやって来た。
「おはようございまーす」
「あ・・・チッ・・・」
えぇ~・・・冒険者ギルドに入って顔を合わせるなり、エトーさんに舌打ちされた・・・。
「お前の所為でええええええええええ」
「えっ?」
「おい。落ち着けっ」
「離せええええええ。アイツの所為でえええええええ」
えぇ~・・・暴れてエトーさんに羽交い締めにされているのは。俺をポーター兼肉壁として雇いたいと言ったエマさんだ。
俺の所為とか喚き散らしているけど思い当たる節が一切無い・・・。
「くっ・・・暴れんなっ。後で説明すっから、お前らは一旦帰れっ」
「は、はいっ」
改めて思う。
俺はやっぱり間が悪い。
ドアを開けたら丁度向こうもドアを開けようとしていて固まってる人が居たが。
間の悪い俺クオリティを発揮して、その固まっている人はエラさんだった。
そして、一瞬の間の後で思い切り殴り飛ばされた。
そこまでが俺の記憶だ。
「いやー、すまんすまん」
「何が何だか全く分からないんですけど・・・」
「あそこのパーティーの末っ子居たろ?」
「あー、エリオット君でしたっけ?」
「まぁ、そいつが昨日の夕方にギルドに運び込まれて来たんだが」
「え?」
「オークにやられたらしくてな」
「え?大丈夫なんですか?」
「命に別状は無い」
「ふぅ。それなら良かったです」
「まぁ、冒険者としてやってくのは無理だがな」
「えっ」
「片足だが、膝から下がグズグズで切るしか無い状態でな」
「それは・・・」
「それでな?」
「はい」
「その前にもあっただろ?」
「エルさんですか?」
「そん時にポーションも使い切っててな・・・これは、ギルド側の不備としか言い様が無い」
「は、はい・・・」
「ただ、立て続けにけが人が出て。それが、どっちもお前にちょっと関わったヤツだ」
「そうですね・・・」
「で、あいつらはお前の所為だって騒いでんだよ・・・」
「え?俺は別に何もっ」
「あー、それは分かってる。分かってはいるんだが。あいつらは納得しねーんだよ・・・」
「はい・・・」
ぶっちゃけ・・・パワーレベリングをしてて弟が怪我をした。
責任は100%あの2人にあると思うけど、溺愛してるだけに人の所為にでもしないと耐えられないんだろう。
でも、そのとばっちりで殴られたのは正直納得いかない・・・。
いつもお読み頂きありがとうございます。




