51話 等分
一応、俺がなりたいのは冒険者であってポーターでは無い。
いや・・・ポーターでも問題は無いんだけど、あのパーティーは無い。
そして、俺の中で1番入りたいと思っていたパーティーは入りたいと伝えようと思っていた日に怪我をして1-2週間の休養を余儀なくされてしまった。
俺としてはそのくらい待っても良いと思うけど、向こうが申し訳無いという事で断られてしまった。
ので・・・消去法になってしまうが・・・。
「って事なんだけど、良かったら俺とパーティー組んで貰えないかな?」
「は、はいっ!よろこんでっ!!」
「でも、本当に俺で良いの?完全に初心者だよ?」
「はいっ」
「エイミーの方が先輩だし。俺よりも他のパーティーに入れそうじゃない?コボルトもソロで狩れるんだしさ」
「えっとですね・・・」
「うん」
「男の人よりも女の人の方がスキルを持って生まれてくる確率が高いんです」
「へぇ~」
「でも、私はスキルがありません・・・」
「うん」
「それで・・・冒険者になりたいっていう女の人はほとんどがスキル持ちなんです」
「うん」
「男の人はスキルが無くても身体が大きかったり力が強かったりするので、冒険者としてやっていく事が出来るんですけど」
「うん」
「私はスキルも無くて身体も小さいですし・・・ポーターとしても使って貰えないんです・・・」
「なるほど・・・。でも、エイミーは冒険者としてやっていきたいんだ?」
「は、はい・・・」
身体が小さくて力も弱くて女の子でも攻撃スキルがあれば後衛としてやっていけるんだろうけど。
俺のイメージする前衛は2種類。タンクかアタッカー。
タンクはやっぱり身体が大きくて力も強くて、敵の攻撃を止めれないとだしなぁ。
細分化するなら回避タンクとかもあるけど、あれはやっぱりゲーム的な感じがするし。
前衛のアタッカーも一撃必殺タイプと手数タイプがあると思うけど。
ゲームじゃなくリアルだから・・・1発で倒し切るのが1番安全だと思う。
スピード重視の手数タイプ。これは、タンクが居てこそだろうし。
そりゃ・・・音も無く近寄って相手に気付かれる前に1発で倒し切る。アサシンみたいな感じだと強いかもしれないけど・・・これもやっぱりゲーム的な感じかな。
ゲームだと極振りにして特化した方が強いけど。リアルだとそうはいかない・・・。
前衛だろうが後衛だろうが防御も攻撃も出来無いと、いざという時に詰む。
そういう意味でも、攻撃力もそこまで高くなく、防御力も低いエイミーは前衛を任せるには不安なんだろう。
あ、そうか・・・。
いざという時。怪我をした時にエマーソンさんがエルさんを背負ってダンジョンを抜けて冒険者ギルドまで来た様に、身体の小さいエイミーじゃ俺を背負ったまま冒険者ギルドまで来れないだろう・・・。
身長も見た所150も無いだろうし。
「あ、あの・・・」
「ん?あ、ごめん。考え事してた・・・」
「やっぱり私なんあと組むのは・・・」
「違う違うっ。これからどこを狩場にするべきかなー?って考えててっ」
「コボルトならっ!」
コボッ・・・コボルトを狩ってたら冒険者としての基礎が身につく前に心を病みそうだ・・・。
「え、えっと・・・コボルトはエイミーがソロで狩ってた訳じゃない?」
「はい。コボルトなら空いてますし、慣れてますから安全に狩れますよっ」
「う、うん・・・でも、それだと2人に増えてるのに収入は一緒なんだから。折半するとしたら、1人当たりの収入は半分になっちゃうんだよね」
「あ・・・で、でもっ・・・私じゃオークなんて狩れないですし・・・」
「いや、オークも人気だから。その下の何とかキャットとかどうかな?」
「アグリーキャットですか?」
「うん。それそれ」
「え、でも・・・4階のオークはどうやって通り抜けたら・・・」
「一応、俺がオークは倒せるし。スキルだからそんな乱発は出来ないんだけど。抜けるだけなら大丈夫だと思う」
「は、はい。それならっ」
「アグリーキャットは大丈夫?」
「はい。たぶん、大丈夫だと思います」
「それじゃあ、オーク以外はエイミーが前衛で大丈夫?」
「はいっ」
「素材の買取とか依頼の報酬とかは折半で良い?」
「え?」
どっちだっ・・・。
年下とはいえ、エイミーの経験豊富で先輩だし。前衛の方が危険だろうから、取り分としてはエイミーの方が多くなるべきなのか。
それとも、何かしらの理由で俺の方が多くなるべきなのか・・・。
「セッパンって何ですか?」
そっちかっ!
「あー、えっと、半分づつって意味だよ」
「あ、はい。セッパンでお願いします」
問題無かったみたいだ。
「あ、それから・・・ユウさんって、どこの宿屋に泊まってるんですか?」
「あー、何か空きが無いらしくて。建設中の冒険者ギルドに泊まらせて貰ってるんだ」
「そうなんですね」
「うん」
「そこだといくらなんですか?」
「宿代?」
「はい」
「無料だね」
「えっ、それって、私も泊まらせて貰う事って出来るんでしょうか?」
「あー、どうだろ?エトーさんに相談してみる?」
「はいっ」
パーティー組むまでって話だったけど、どうなんだろう。
もし出てけって言われたら。
逆に俺がエイミーの部屋に転がり込む形になるんだけど。
子供とはいえ女の子の部屋にってのは微妙なんだよなぁ・・・。
もしダメなら、そこもエトーさんに相談かな。
「パーティー登録もしないとなんで。これから冒険者ギルドに行っても良いですか?」
「うん」
パーティー登録なんて存在、エトーさんから聞いてなかったんだけどなぁ。
まぁ、他にも相談したい事はいくつかあるし。丁度いいか。
いつもお読み頂きありがとうございます。
基本的に2日に1回。奇数日の更新なんですがストックが貯まって来たのでイレギュラー更新します٩(๑´3`๑)۶




