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48話 神は死んだ

ダンジョンも3階に到達し、コボルトの居る階層に来てしまった。

この階層にはコボルトによる癒やしと、そのコボルトを殺すという精神的苦痛が待ち構えている。


「あ、あのっ」

「うん?どうしたの?」

「ここは私にやらせて貰えませんかっ!?」

「えっ」

「あぁ・・・なるほどな・・・。1発で仕留めれんのか?」

「た、たぶん・・・」

「アピールしたいんだろ?」

「は、はい・・・」

「絶対に1発でコボルトを苦しませずにやれんなら任せてやる」

「が、頑張ります・・・」

「下手な事したらぶっ飛ばすからな?」

「は、はいっ」


アピール・・・。

俺に対してだろうけど・・・。


あの可愛いコボルトを・・・幼女が惨殺する画を見せられるのか・・・。

あぁ、幼女じゃなく少女って年齢か。



エトーさんとエイミーが場所を入れ替わり、3階を進む。

この階層で狩りをしている冒険者は居ないのでサクサク進む。

そして、アッサリとエンカウント。


ゲームでも、レベル上げをしてる時は中々敵が出なくて。

移動してる時に限って敵が出まくる。それも、出て欲しくない時に限って。


トテトテと身体を左右に揺らしながらこちらへ駆け寄って来る。

アテレコするならば「あしょんでよッ」とでも言ってそうな気がする。絶対に気の所為だけど、そう見えてしまう。


そんな可愛い二足歩行のコーギーに対して、エイミーはカウンター気味に短剣を喉元に突き刺した。


「ゴフッ・・・ゴポ・・・キューン・・・」

「ど、どうですかっ!?」


満面の笑みで振り返ってるけど・・・よくも俺の可愛いコボルトを・・・。


「バカヤロー」


パシーン───。


「痛い・・・」


エトーさんがエイミーに歩み寄り。何をするのかと思ったらいきなり頭を(はた)いた。


「気を抜くのが早い。残心って知ってっか?」

「し、知らないです・・・」

「斬った後。まぁ、刺突でも何でも良いんだが・・・敵が死んだのを確認するまで気を抜くなって話だ」

「は、はい」

「さっき、倒したと思って。確認もせずに振り返ったな?」

「はい・・・すいません・・・」

「実はまだ息があったら。背中から襲い掛かられてた訳だ」

「はい・・・」

「ま、そういうこった」

「はいっ。ありがとうございますっ」


なるほど。

残心ってそういう意味だったのか。

そして、俺にはそういうの全然教えてくれてないんだけど・・・。


「そ、それで・・・どうでしたか・・・?」

「まぁ、悪くねーんじゃねーか?」

「本当ですかっ?」

「おう。武器は何で短剣なんだ?」

「えっと・・・お金が無くて普通の剣とか槍は買えなかったので・・・」

「お、おう・・・そうか・・・まぁ、悪くないチョイスだ」

「本当ですか?」

「無理して重いモン振り回すよりは合ってるはずだ」

「はいっ」

「武器なんてのは使ってなんぼだからな。振り回されたり、武器に使われるなんてのは(もっ)ての外だ」

「はいっ」


だから・・・俺はそういう指導を受けてない・・・。

指導が報酬のはずなのに・・・。


「そろそろ行かないと、またコボルトが湧きますよ?」

「そうだな。とりあえずアピールは終了で良いか?」

「はい」

「んじゃ、行くぞ」

「「はい」」


立ち位置を入れ替え、再びエトーさんを先頭に進む。


エトーさんが相変わらず顔を(しか)めながらコボルトを倒していく。

手際自体はエトーさんの方が圧倒的に良いが、エイミーのさっきの動きは俺なんかよりも遥かに良かった。

そう考えるとエイミーとパーティーを組むのも悪くは無いのかもしれない。



そう思っていた時期が俺にもありました。


3階のコボルトゾーンを抜け、4階のオークを狩っている3人組のパーティー。

俺が依頼したパーティー募集に反応してくれた最後の3組目のパーティーと会って、さっきまでの考えを改めた。


長女エマさん。

スキルにファイヤーボールを持つ後衛の美人さん。20歳。


次女エラさん。

スキルにガードとシールドバッシュを持つ前衛タンクの美人さん。18歳。


スキルは無いがどこからどう見ても美少女のエリオット。13歳。

まぁ・・・どこからどう見ても美少女なのに男らしい・・・。


そして、Eランクと聞いていたけど。

Eなのはエリオットだけで、エマさんとエラさんは共にCランクで。

エリオットのレベルとランクを上げる為にここで狩りをしているそうだ。


これこそ、完全に俺が望んでいたシチュエーション。

美人さんが2人。しかも、Cランクのベテラン冒険者。

エリオットのパワーレベリングに俺も便乗させて貰える最高のシチュエーション。

神は居た。



なんて・・・そう思っていた時期が俺にもありました。


「しないわよ?」

「え?」

「私達が欲しいのはポーター」

「それも、可愛いエリオットに色目を使う女は除外だから。男のポーターね」

「ライトとウォーターのスキル持ってるのが本当ならポーターとして雇ってあげても良いわよ」

「それから、エリオットは私が絶対に守るけど。それでも、いざという時は肉の壁になってエリオットを守るって契約するならね」

「いや、それは流石にちょっと・・・」

「何が不満なの?」

「あー・・・、コイツは冒険者になりてーんだ。ポーターじゃなくな」

「だったら仕方ないわね。エリオット、狩りに戻るわよ」

「は、はい。おねぇちゃま」

「俺らも行くか」

「「は、はい・・・」」



中々に強烈だった。

極度のブラコン・・・あ、エリーさんもだな・・・。

もしかして、この村には姉をブラコンにさせる何かがあるんじゃ・・・。


「アレはナシとして。どーすんだ?」

「どうしましょう・・・」

「アレも条件だけは良かったんだがな」

「はい・・・」



やっぱり、ゴブリンを狩場にしてる2人組のパーティーに入れて貰って。

ゴブリンを少しやってからオークに移行するっていうのが理想かな。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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