44話 卒業
14階で折り返し、帰りがけの駄賃としてオークを狩った。
ラッシュブルもゴブリンも冒険者で溢れていたがオークは比較的不人気な様で空いていた為。オークを倒してから解体のやり方も教わった。
エトーさんの勧めで太ももの肉と背中の肉を持ち帰る事になり、その他の部位はその場に放置した。
「空いててラッキーでしたね」
「んー、まぁ、こんぐらいの時間ならどこもちらほら空き始めるな」
「時間帯に依って何かあるんですか?」
「あー、前にダンジョンに依ってルールが違うって言ったよな?」
「はい」
「これがそうなんだが」
「はい」
「ここのダンジョンは夜間の攻略は禁止だ」
「へぇ~」
「まぁ、俺が決めたんだが」
「何か理由あるんですか?」
「独占を禁止する為やら色々あるな」
「なるほど」
「今の所、俺と姉貴しか居ねーから。24時間対応出来ないってのもある」
「あー、それはそうですね」
「って事で、ここのダンジョンは朝一から狩場の取り合いだ」
「それはそれで揉めそうですよね」
「まーな。っても、こんなんで揉め事起こす様じゃ、他所でやっていけねーしな」
「はい」
「何回かは注意して、それでも問題起こす様なら剥奪だ」
「え?剥奪って何をですか?」
「ギルド員の資格」
「ギルドカードですか?」
「おう」
「厳しい・・・」
「そうか?ここは難易度低いからまだ良いが。高難度のダンジョンで問題起こしてみろ。そいつ本人が死ぬだけなら良いがパーティー全滅とかにでもなってみろ。悲惨じゃねーか」
「まぁ・・・確かに・・・」
「ギルド職員の仕事に含まれんだよ」
「何がですか?」
「冒険者の育成。それから不適合者の排除」
「なるほど・・・」
「ってもなー。それも、難しい問題なんだよ」
「はい」
「潰しが効くヤツは良いんだが。他に仕事を見つけられねーヤツは・・・」
「はい」
「大抵が盗賊とかに身を窶す」
「はい・・・」
「厄介な話。冒険者として腕を磨いてた訳だ」
「はい」
「身軽なヤツは泥棒に向いてるし、手先が器用ならスリとかもあるな」
「はい・・・」
「んで、戦闘経験が豊富なら盗賊とかになっちまう」
「はい・・・」
「だから、そう簡単に追放は出来ねーんだが・・・いずれ問題を起こすヤツを何時までも抱えては置けねー」
「難しい所ですねぇ」
「そーなんだよ・・・一冒険者だった時はそんな事気にした事すら無かったんだが・・・」
「人の上に立つのも大変ですね」
「簡単に言ってくれるが・・・マジにそうなんだよ・・・」
「ははは。頑張って下さい」
「お前は問題起こすなよ?」
「善処します」
「善処じゃねーよ・・・まぁ、アレだ・・・俺の仕事を増やすな」
「それが本音ですね」
「おうっ」
「良い返事っ」
「何かしでかしたら躊躇無く放り出すからな?」
「は、はい・・・」
思いっ切り釘を差されてしまった。
いや、まぁ・・・迷惑掛ける様な事をしたいとは思わないし。出来るなら問題を起こさずやっていきたいとは思ってる。
思っては居るけど、この世界の常識だったりルールを学んでいる途中だから、何かしでかしてしまう可能性は否めない。
今の所は大きな問題を起こしてないけど、たまたま起きてないだけとも言える。
何かあった時、ごめんで済まない可能性も高いし。
それこそ、死に直結する事もあるはずだから・・・。
「脅し過ぎたみたいだな」
「え」
「話の流れ的に、ここを追い出されたら盗賊になるしか無い。って思い詰めてそうでな」
「いや、そこまでは考えてないですけど・・・やっぱりそうなんですか?」
「はっはっは。そこまでじゃねーよ。他所のギルドで登録し直せばいくらでもやり直しは効く」
「そうなんですね・・・え、でも、じゃあ、何で盗賊になる人が居るんですか?」
「そりゃ、よっぽどの事をやらかしたら人相書も出回るからな」
人相書・・・指名手配的な?
「っても、それはよっぽどの事だ」
「はい」
「多少の事なら、ちょっと離れたトコで登録し直しゃ、名前すら変えなくてもバレねーしな」
「あー、そんな緩い感じなんですね」
「まぁ、高ランクになってたり、犯罪に手を染めてなきゃって感じだな」
「なるほど」
有名になってなければ・・・って感じかな?高ランクってのは。
「まぁ、皆やってんじゃねーか?」
「え?」
「1回や2回はやらかして、登録し直してたりってのはあるんじゃねーか?」
「エトーさんもですか?」
「俺はやってねーな。足をやった以外は順調な冒険者人生だった」
やってないんかーい。って突っ込みたい所だけど、その後の話が重くて突っ込める雰囲気じゃないっ。
「まっ、多少のやり直しならいくらでも出来るが。ガッツリやっちまうと、それで終わりって話だな」
「重いっ・・・」
「当たり前だろ?冒険者なんてのは命懸けでやるモンだろ?」
「そうですね・・・」
「街から出ない冒険者も居るけどな」
「え、あぁ・・・雑用ばっかりやる冒険者ですね」
「あれはあれで必要だとは思うが、あれで冒険者ってのは納得いってねーんだよな」
「やっぱり冒険してこその冒険者って事ですか?」
「んー、そうだなぁ。冒険っつーか向上心だな」
「向上心・・・」
「停滞を受け入れたヤツは冒険者じゃねーと思ってる」
「街で熟す雑用なんてランクを上げる為だけのモンだ」
「はい」
「まぁ、他にも色々あるが・・・日銭を稼ぐ為だけに雑用やってるヤツらは冒険者と呼びたくねぇなぁ」
「なるほど」
「っつー事で」
「はい」
「お前もさっさとここは卒業して、他所に行けよ?」
「え?」
「オークの分厚い脂肪を1発で抜けるんだから。火力だけで言やぁ既に卒業レベルだ」
「で、でも・・・」
「冒険者としての基礎は叩き込んでやるから心配すんな」
「は、はい」
卒業て・・・追い出されちゃうっ。
来たばっかだから愛着とか思い入れも大して無いし、ここに骨を埋めるつもりも無いけど。
何だろう・・・もうちょっと落ち着きたいっ・・・。
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