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38話 コバルト

1階は一本道でスライムもスルーしたので5分と掛からず2階へ降りる階段へと辿り着いた。


「あー・・・なんだ・・・」

「はいっ」

「気ぃ抜くな。とは言ったが・・・肩に力入り過ぎだ」

「そ、そうですか・・・?」

「ちょっと深呼吸しろ」

「はい・・・」


すぅ~~~、はぁ~~~。すぅ~~~、はぁ~~~。


「アレだ。期待させて悪いが・・・そんな大したモンじゃねーぞ?」

「え、でも、ゴブリンですよ?」

「んー、まぁ、そうなんだが・・・まぁ、行きゃ分かる」


階段を降りるとちょっとした部屋になっていた。6畳くらいあるだろうか。


「この階段のあるトコはモンスターも入って来ねぇから安全地帯になってる」

「へぇ、そうなんですね」

「ここだけじゃなく、他のダンジョンも大抵はそうだな」

「なるほど」

「んじゃま行くか」

「はいっ」

「はぁ~・・・だから、いや、まぁ、良い・・・」


1階は一本道だったが、2階は部屋を出た所から既に左右に道が別れていた。


「行くぞ?」

「あ、はいっ」


警戒する素振りも見せずにエトーさんはどんどん進んで行く。


すると、向こうの方に明かりが見えた。


「あ、エトーさん見回りっすか?」

「おう。どうだ?」

「順調っすね」

「そうか。無理すんなよ?」

「「はいっ」」


明かりの正体はこの階で狩りをしていた2人組みの冒険者が持っていた松明だった。

そして、その2人からはかなりキツい血の臭いが漂って来ていた。


ゴブリンの返り血を浴びているのだろうか?


「んじゃ、行くか」

「はい」

「頑張れよー」

「「はいっ」」


2人組みの冒険者と別れ、先に進んだが3階へ降りる階段に辿り着くまでに何組か冒険者と遭遇した。

と言うか、角を曲がるたびに別のパーティーに遭遇いした。

その所為でゴブリンの姿を確認する事は出来なかった。


「ゴブリン居なかったんですけど。これって狩られてるからですよね?」

「だな。だから期待すんなっつったろ?」

「はい・・・。でも、そんな人気なんですね。ゴブリン」

「あー、推奨してっからな」

「冒険者ギルドがですか?」

「ギルドっつーか、俺がだな」

「へぇ~。理由は何ですか?」

「初心者とか初級者には良い練習相手なんだよ。しかも、こんだけ人数が居りゃ安全だしな」

「なるほど」

「ちなみにゴブリンの討伐証明部位は左耳だ」

「はい。って、左耳を剥ぎ取るんですか?」

「ん?そうだが?」


そうだが?って・・・。


「皆、腰に下げた袋に入れてただろ?」

「えっ、アレってそうなんですか・・・」


血の臭いがしてたのはその所為か・・・。


「あ、でも、ゴブリンの死体すら見かけてないんですけど」

「ダンジョンのモンスターは死んだら直ぐにダンジョンに吸収されちまうからな」

「へぇ~。それだと、討伐証明部位だったり、必要な素材を剥ぎ取るの大変ですね」

「まーな。でも、強いヤツとかデカいヤツは吸収されんのにも時間掛かるからそこまでじゃねーな」

「へぇ~」

「ゴブリンで1分ぐらいは消えずに残ってるから余裕だろ」

「思ってたより短いですね」

「下に布なり敷けば吸収されるまでの時間も延びっから、モンスターごとに色々やり方も違うんだよな」

「なるほど」

「ただな」

「はい」

「素材やら討伐証明部位も大事だが。しっかりとトドメを刺すのが最優先だ」

「はい」

「まぁ、手順が色々あるんだが。それは追々な」

「はい」


それから、3階へと降りていった。


「やっぱ、ライト持ちが居ると手が空いて楽で良いな」

「普段は松明なんですか?」

「だな。普通は松明かランプだが。ランプだと気も使うんだよな」

「なるほど」

「ほら、松明だとモンスターが出たら投げ捨てれるだろ?」

「あぁ、はい」

「ランプだと投げたら壊れるしな」

「あー、そうですね」

「それに・・・来たぞ」

「え?」

「モンスターだよ」

「は、はいっ」


こちらに向かって走ってきたのは・・・。


「犬?」

「コボルトだ・・・なっ!」


と、エトーさんは喋りながら二足歩行の犬、コボルトを迎撃した。


「それにしても・・・」

「だろ?」

「はい。だから、3階は誰も居ないんですね」

「おう。コイツの相手は流石にな・・・」

「その割に、喉を一突きって容赦無いですね」

「一撃で仕留めねーと地獄だぞ?」

「そんなにですか?」

「そんな言うなら、次お前やってみっか?」

「いやいやいや、無理ですっ」


そう。

あまりにも可愛い過ぎるっ・・・。


つぶらな瞳。短い手足。コーギーみたいな見た目で二足歩行。

走る姿に効果音を付けるならトテトテトテ。


俺にコボルトは倒せないっ・・・。


「まぁ、これもあって2階が激戦区なんだよな」

「でしょうね・・・」

「俺もここは苦手だ・・・さっさと抜けるぞ」

「はい」


とは言え、2階の様に冒険者が(ひし)めき合ってる訳では無い・・・どころか、人っ子一人居ないので、その後も何度かコボルトに遭遇してエトーさんが泣く泣く倒していた。


「コボルトの討伐証明部位って回収しなくて良いんですか?」

「あー・・・コボルトは魔石なんだが」

「はい」

「胸にある」

「はい」

「アレの腹を掻っ捌いて、手ぇ突っ込んで取れるか?」

「む、無理です・・・」

「だろ?それに、その魔石も安いからな」

「キツいですね・・・」

「おう・・・復活しねーウチにさっさと行くぞ」

「はいっ」



慣れてるはずのエトーさんでも毎回苦悶の表情を浮かべながらコボルトを倒している。

見た目は怖そうなのに・・・さては、可愛い物好きだな?この人。


もしかしたら雨の日の捨て猫とか拾っちゃう系ヤンキーなのかもしれない。


いつもお読み頂きありがとうございます。


コバルト鉱石の名前の由来はコボルトからだそうです(`・ω・´)

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