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33話 オレTUEEEEE

ちょいグロです。


悔しさから異様にやる気が(みなぎ)っている。


とはいえ、MPには限りがある。

効率良く。MPが枯渇しない程度にウィンドアローの練習をし、回復待ちの間にライトの練習をして移動の時間を過ごした。



そう・・・。

毎日、毎日・・・馬車の荷台に揺られ。

夜は野宿だったり村の宿に泊まれたりとその都度違ったりはするがこれといって問題も起こらず、順調と言えば順調だが単調な日々を過ごしていた。


おかげで野宿にも慣れたし、自分自身のレベルもスキルのレベルも色々上がったりした。


単調とはいえ、道中に獣が出たり脱輪して皆で押したりってのはあった。

まぁ、そんなのは日常というか当たり前な事になっていた。



ガタンガタンガタン───。


「盗賊だっ!」

「えっ」


単調な日々に飽きてきたとか思ってた自分を殴ってやりたい。

娯楽は欲しいけど刺激は要らないっ・・・。


いや、そんな事考えてる場合じゃない・・・。


「ストーンランス」


「うがっ・・・」

「ヤベェ。スキル持ちが居るぞっ」


「ストーンランス」


「ごぶっ・・・」

「荷物だっ!荷物だけでも奪うぞっ!!」


イリアさんが大活躍している様だが、その所為で盗賊たちが荷台に群がって来た。


「ウィンドアロー」


「ふぼっ・・・」

「こっちにもスキル持ちが・・・逃げるぞっ!」

「引き上げろー!」


蜘蛛の子を散らす様に盗賊たちは逃げていった。


「無事ですか?」

「はい」

「大丈夫だとは思いますがしばらくは後方の警戒をお願いします」

「はい」

「それから、追ってくる可能性も無くは無いのでしばらく休憩は無しで進みます」

「はい」

「お前ホントにスキル使えたんだな」

「はい」

「つーか、あれホントにウィンドアローなのか?」

「はい」

「っつー事は、お前エルフなのか?」

「はい」

「イーロ。その辺で。行くわよ」

「うん」

「はい」


馬車が動き出し、俺が殺した盗賊の姿が遠ざかっていく。

続いて、イリアさんが殺した盗賊2人の姿も遠ざかっていく。


当たり前だけど初めて人を殺した。


スキルで殺したから手に感触が残っている訳でもなく。

相手が盗賊だからか罪悪感も湧いてこない。

取り乱すでもなく、意外な程に冷静な自分が居る。


というか、逆に普段よりも頭が回る気がする。



「もう少し行けば村があるのですが、そろそろ馬が限界なので一旦休憩にします」

「はい」

「大丈夫ですか?」

「え?はい」

「ちょっと様子がおかしかったので、初めて人を殺したのかと思いましたが」

「あぁ、初めてですね」

「その割には落ち着いてますし」

「そうですね。自分でもびっくりしてます」

「私の場合はしばらく身体の震えも止まりませんでしたし、しばらくは夢見が悪く夜中に飛び起きる事もままありましたね」

「そうなんですね」

「大丈夫そうですが一応」

「はい」

「あれは盗賊です」

「はい」

「殺さなければこちらが殺されていました」

「はい」

「捕まれば即座に極刑になる犯罪者です」

「はい」

「ですので、気にしない様にして下さい」

「はい」

「それから食事を作りますので、食べられそうなら少しでも食べておいて下さい」

「はい。あ、そうだ」

「はい」

「そろそろ路銀が怪しくて・・・」

「はい」

「古い銀貨があるんですけど、買い取ってくれそうな所があったら教えて下さい」

「あぁ、それでしたら買取ますよ?」

「あ、それもそうですね。えっと、これなんですけど」

「はい。見せて頂いても?」

「はい、どうぞ」

「そうですね・・・少なくとも金貨1枚以上の価値はあると思いますが・・・詳しくは分からないので、少し時間を頂けませんか?」

「あぁ、はい。お願いします」

「それでは、これはお預かりしても?」

「はい」


食事をご相伴に預かれるそうなので、せめて手伝いでもと申し出たが。ここ数日で俺が料理出来ない事は完全にバレていたので、見回りを頼まれた。

盗賊を追い払える様なスキル持ちならそっちの方が適任だと。


まぁ、それでもウィンドアローを使ったのは信じてくれなくて。今も別のスキルだと思われている。



「出来ましたのでこちらに」

「はい」

「イーロは代わりに見回りに行って来なさい」

「ういー」


「いただきます」

「はい」


野菜と干し肉の入ったスープ。それとパンが出された。

まずはスープを一口。宿に泊まった時は普通に温かい食事を取れるが、移動中は果物か干し肉や干し芋で済ませる事が多いから温かい食事はありがたい。


「美味しいです」

「そうですか」

「はい・・・ん・・・ちょっとすいませんっ・・・」


急激な吐き気に襲われ急いで立ち上がって走り出したが、直ぐに堪え切れずに吐き出した。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です・・・」

「全然、大丈夫そうには見えませんが・・・」

「あー、アレです・・・乗り物酔いです・・・たぶん・・・」

「違いますよ。今、頭に浮かんでいるのが原因です」

「・・・・・・」


そう。

イリアさんの言う通り・・・。

俺の頭に浮かんでいるのは荷台に手を掛けて乗り込もうとしてきた盗賊にウィンドアローを当てた時の映像。


その盗賊の左目に直撃して、脳みそをブチ撒けながら後ろに吹っ飛んでいった時の映像がエンドレスでリピートされている。


移動中は何とも無かったんだ。

さっき見回りをしてた時からこの映像が頭から離れなくなった。


胃の中の物を全部吐き出し。胃液しか吐く物が無くなっても吐き気は治まってくれなかった。


「弟と交代で食事を取るので、その間は横になって休んでいて下さい」

「はい・・・」



「おいおい、吐くならもっと向こうで吐けよ」


そんなイーロさんの憎まれ口が何故か心地良かった。


いつもお読み頂きありがとうございます。


自分的にはかなり冒険しました。


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